ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違って淫らな模様です

二位関りをん

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第11話 医局にて

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 医局は大学病院内の関係者以外立ち入り禁止エリアの中にある場所だ。そんな所に自分が立ち入ってもいいのかと咲良は躊躇するが、秀介は肩を抱き寄せたまま歩き出す。

「本当にいいんですか?! そんな……」
「俺の家族なんだ。言いに決まってる。教授の事だからケーキを出してお茶でもしようかって誘ってくるかもしれないな」

 爽やかに笑う秀介の顔は、咲良からはまぶしく映る。結局彼に負けた形で医局へと足を運んだのだった。
 医局があるフロアに繋がる扉はオートロックで施錠されており、右側のパネルへ秀介がカードキーを当てると電子音と共にゆっくりと開かれていく。
 
「わあ……」

 診療科ごとにガラス張りの壁で区切られた空間が目に飛び込んできた。どこか近未来を思わせる景色に咲良の胸は高鳴っていく。

「消化器外科の医局はこっち」

 正面通路の右真ん中付近にある空間へ案内される。秀介がドアを開くと、3名ほどの白衣姿の医者達が秀介らを出迎えた。

「春日くん達おかえりなさい」

 茶髪ボブヘアで咲良よりも背が低い可愛らしい中年女性が歩み寄って来た。

「教授、ただいまもどりました」
(えっこの人が?!)
「いえいえ。お隣にいらっしゃるのが奥様の咲良さんね? 初めまして。教授の佐川佳苗と申します。あなたの事は春日くんから存じております」

 おっとりとした高い声は、よくアニメで聞くような声だ。緊張を隠し切れないまま挨拶を返すと品のある笑みが返って来る。

「聞いていた通りの恥ずかしがり屋さんね……本当に可愛らしいですね」
「ひゃっ?!」
「咲良、教授はこんな感じの方だ。普通にありがとうございますって言っていいぞ」
「あ、ありがとう、ございます……?」

 くすくすと笑う佳苗は、白衣のポケットに手を突っ込むと、何やら咲良に手渡してきた。

「これは……?」

 紫色の包み紙は丸い形状で、ふんわりと華やかでフローラルな香りが鼻腔の奥深くまで浸透してきた。

「それ、夫が手作りした石鹸なの。よかったら使ってみてください」

 聞けば佳苗の夫は石鹸づくりが趣味らしい。彼は妻と同じく外科医で、今はアメリカの大学に所属しているのだとか。

「へえ……ありがとうございます。良い匂いがします」
「そうでしょう。石鹸を作る時、いつも匂いにこだわっているから……あ、春日くんもいる?」
「いいんすか? 昨日貰ったばっかですけど」
「いいのいいの。まだ家にたくさんあるから」

 秀介も佳苗から石鹸を貰う。興味深そうに匂いをしきりに嗅いでいる彼の姿を目に焼き付けていると、スーツ姿に黒縁の眼鏡をかけた30代くらいの男性が颯爽と入室してきた。
 彼もまた整った顔立ちをしており、華奢な体型は秀介とよく似ている。

「春日先生! お疲れ様です!」
「矢木さん! お疲れ様です! あ、うちの嫁です」

 再び肩を抱き寄せられた咲良は、わっと小さな驚きの声を上げる。

「あっえっと、咲良といいます。はじめまして」
「こちらこそ初めまして! 春日先生の担当を勤めさせていただいております、矢木博則と申します。どうぞよろしくお願いいたします!」

 はきはきとしゃべる姿は秀介とはまた違った雰囲気を醸し出している。例えるなら明るくて元気いっぱいの子犬と言うべきか。

「咲良、矢木さんは医療秘書で俺の担当なんだ。俺より5つ年上なんだけど、すっごく明るくて頼りがいがある。だから怖がらなくていいよ」
「そうなんですね……あのっ矢木さん。よろしくお願いいたしますっ……!」
「いえいえ! 春日先生、いつも空いている時間に咲良さんの事楽しそうにお話していらっしゃったので、どのようなお方なのか気になっていました。お会いできてよかったです!」

 博則の言葉を受け、咲良はちらりと秀介を見上げた。

「結構私の事、紹介してたんですね……」
「だって俺の妻なんだから当たり前だろ。おかげで色目使って来る看護師や事務は減ってくれたし儲けもんだ」
「あれですね、虫よけになってるって事ですね……」
「俺は咲良しか興味ないからな」

 ふふんと鼻を鳴らす秀介がどこか自慢している子供のように咲良からは見えてしまう。そんな彼と出会い恋に落ちて良かったと感慨に浸るのだった。
 その後、咲良は佳苗の誘いもあり医局内の応接間で秀介、博則、佳苗らと共にちょっと早い昼食を楽しむ。昼食はコンビニで購入した弁当だったが、彼らの話を聞いているといつも以上に美味しさが満ちているような気がした。
 荷物を持って秀介の家へ帰ろうとした時、秀介が咲良へちょっといいか? と声を掛けた。

「先輩?」
「午後から俺手術なんだ。よかったら見ていかねえか?」
「え? そんなの出来るんですか?!」
「VIP用の特別席がある。矢木さん使っていいっすよね?!」

 VIP専用と言う言葉の響きに咲良はうろたえるばかり。だが博則はすんなりと了承を出した。

「私からも大丈夫だと言っておきます」
「えっ、教授……!」
「旦那さんの仕事の様子、中々見れるものではないと思いますから」

 佳苗の言葉は的を得ている。それだけでなく、咲良の創作意欲もとい妄想をはかどらせるには十分なものだった。

「あっぜひ! 手術の様子見てみたいです……!」
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