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第20話 完成とほころび
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「完成した――!」
ラストシーンとなる2人が微笑み合いながら手を握り合う場面を書きあがった瞬間、爽やかな達成感が咲良の身体を吹き抜けていった。
「よし。お腹空いたしまずはお昼食べて、それから改稿と校正しよう。先輩が帰ったら真っ先に見せよ」
はたして彼は一体どのような反応をしてくれるのだろうかと想像するだけで、胸の中の鼓動が早くなる。
同人誌完成のお祝いに、今日はいつもよりちょっと豪華な食べ物にしようと意気込む咲良は近くのコンビニに赴いた。コンビニではスーツ姿や作業服姿の男性達がレジに列を作っている。
「あった。でかでかデミグラスハンバーグ。あとかぼちゃのサラダと……あっ、カスタードのシュークリーム50パーセント増量かぁ。これ食べちゃお」
普段、買い物は全て宅配サービスで済ませているが、OL時代はコンビニのチルド食品が咲良にとっての贅沢だった。その習慣は今でも変わらない。
それに一からハンバーグを作るのは面倒だと怠惰な気持ちもある。
コンビニ商品の一部は増量キャンペーンを行っているのでいつもよりもお得なのも、咲良のテンションを上げさせてくれる。
「ハンバーグ、先輩用に買っておこうかな。でもこういうハンバーグ食べるかなあ……冷食はちょいちょい食べてるし、大丈夫だよね」
買い物かごにどさどさと食材を詰め込み、レジ精算機で会計を済ませる。帰宅後ハンバーグを湯煎している最中、スマホが鳴る。
「先輩かな?」
しかし、画面に表示されていたのは「母親」の文字だった。それを目にした瞬間、同人誌が完成した達成感と空腹が全て吹き飛び、代わりに胸のざわめきが去来する。
(やめよう。出てもどうせロクな事はない)
着信音が消えるまで、じっと耐え続ける。だが彼女の考えを見透かしているかの如く着信音は鳴り続けるばかりだ。
(やっぱり、出ないといけないの……?)
意を決して通話ボタンを押す。すると開口一番、咲良! と母親の大きな声が部屋中に響き渡った。
「これまで何をしてたの! 心配したんだから!」
「おっお母さん……」
心配なんてしてない癖に。そう言おうとしたが彼女の圧力に負けてしまい、言葉は喉奥に引っ込んでしまう。
「咲良、楓華さんから聞いたわよ。大学病院のお医者さんと結婚したんですって?!」
「え」
「私に許可なく勝手に何をしているのよ! なんで私に何にも言わずにそんな人と結婚してしまったのよ……! お相手のご家族さんにはもう挨拶にいったの?!」
「いや、それは、まだだけど……」
完全に母親の作るペースに吞まれている咲良は、乱れる呼吸を整えようと大きく息を吸い込んだ。それでも乱れた呼吸と胸の痛みは治まらない。
「よかった。まだご挨拶には行ってないのね……安心したわ……」
「よ、よかったって何……?! ねえ、何なの?!」
「咲良、悪い事は言わないわ。離婚してこっちに戻っていらっしゃい。あなたではお医者さんの妻だなんて務まらないわ」
「は……?」
突如としてもたらされた言葉に、絶句するより他なかった。
ラストシーンとなる2人が微笑み合いながら手を握り合う場面を書きあがった瞬間、爽やかな達成感が咲良の身体を吹き抜けていった。
「よし。お腹空いたしまずはお昼食べて、それから改稿と校正しよう。先輩が帰ったら真っ先に見せよ」
はたして彼は一体どのような反応をしてくれるのだろうかと想像するだけで、胸の中の鼓動が早くなる。
同人誌完成のお祝いに、今日はいつもよりちょっと豪華な食べ物にしようと意気込む咲良は近くのコンビニに赴いた。コンビニではスーツ姿や作業服姿の男性達がレジに列を作っている。
「あった。でかでかデミグラスハンバーグ。あとかぼちゃのサラダと……あっ、カスタードのシュークリーム50パーセント増量かぁ。これ食べちゃお」
普段、買い物は全て宅配サービスで済ませているが、OL時代はコンビニのチルド食品が咲良にとっての贅沢だった。その習慣は今でも変わらない。
それに一からハンバーグを作るのは面倒だと怠惰な気持ちもある。
コンビニ商品の一部は増量キャンペーンを行っているのでいつもよりもお得なのも、咲良のテンションを上げさせてくれる。
「ハンバーグ、先輩用に買っておこうかな。でもこういうハンバーグ食べるかなあ……冷食はちょいちょい食べてるし、大丈夫だよね」
買い物かごにどさどさと食材を詰め込み、レジ精算機で会計を済ませる。帰宅後ハンバーグを湯煎している最中、スマホが鳴る。
「先輩かな?」
しかし、画面に表示されていたのは「母親」の文字だった。それを目にした瞬間、同人誌が完成した達成感と空腹が全て吹き飛び、代わりに胸のざわめきが去来する。
(やめよう。出てもどうせロクな事はない)
着信音が消えるまで、じっと耐え続ける。だが彼女の考えを見透かしているかの如く着信音は鳴り続けるばかりだ。
(やっぱり、出ないといけないの……?)
意を決して通話ボタンを押す。すると開口一番、咲良! と母親の大きな声が部屋中に響き渡った。
「これまで何をしてたの! 心配したんだから!」
「おっお母さん……」
心配なんてしてない癖に。そう言おうとしたが彼女の圧力に負けてしまい、言葉は喉奥に引っ込んでしまう。
「咲良、楓華さんから聞いたわよ。大学病院のお医者さんと結婚したんですって?!」
「え」
「私に許可なく勝手に何をしているのよ! なんで私に何にも言わずにそんな人と結婚してしまったのよ……! お相手のご家族さんにはもう挨拶にいったの?!」
「いや、それは、まだだけど……」
完全に母親の作るペースに吞まれている咲良は、乱れる呼吸を整えようと大きく息を吸い込んだ。それでも乱れた呼吸と胸の痛みは治まらない。
「よかった。まだご挨拶には行ってないのね……安心したわ……」
「よ、よかったって何……?! ねえ、何なの?!」
「咲良、悪い事は言わないわ。離婚してこっちに戻っていらっしゃい。あなたではお医者さんの妻だなんて務まらないわ」
「は……?」
突如としてもたらされた言葉に、絶句するより他なかった。
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