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第52話
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「ちょっと考えてみたんだけど」
「クララ様?」
「聖女の神話、振り替えってみて?」
ザパルディ国には1000年に一度、聖女と呼ばれる莫大な魔力を持つ娘が誕生する。
その聖女と結ばれた王子には、莫大な加護がつき、国が豊かになるというものだ。
聖女の特徴は3つ。まずは美しい金髪、次に美しい容姿、そして血のような真っ赤な瞳。その特徴を備えた少女が成人した時に神託を受けると、聖女として目覚め、証が浮かび上がる。
それらを全て兼ね備え、莫大な魔力を有する娘こそが、聖女である。そんな聖女の再来を民はずっと待ちわびている。
だったか。
「その聖女と結ばれた王子には、莫大な加護がつき、国が豊かになるというものだ。の部分よ。私もだけど、ザパルディ国が今よりも豊かになる事に越した事は無い。農業も畜産も産業経済も……皆あなたの加護で豊かになれば幸いだわ」
「成る程……」
「あなたが聖女に目覚めて国が豊かになるなら悪魔の獣も減るかもしれない。それにロイナ国の宣戦布告。これから戦争が控えているなら国は豊かでないと戦争にもたず荒廃してしまう」
クララ様の言う事は最もだった。彼女の言葉がすーーっと私の胸の中に染み込んでくる。
「だから、具体的に言うと領地や国を周りその力で豊穣をもたらして、国を豊かにする。それがあなたの聖女として成すべきものだと私は考えるわ」
「クララ様……ありがとうございます」
「あと細かい部分は自分で考えなさい。ジュリーはどう思ってる?」
「私もお師匠様と同じ考えです」
馬車が止まった。私達はゆっくりと馬車から降りて屋敷に入る。
「皆、今日はゆっくり休んで疲れを取りましょう。交流の場はあさってまで続きますからね」
「はいっ」
「はい、お師匠様!」
私は早速服を脱いでシャワーを浴びて身体中の汗やお化粧を落とし、寝間着に着替えてベッドの上に座る。
「ふうっ」
私は改めて、クララ様から教えられた言葉を頭の中で繰り返す。
「領地や国を周りその力で豊穣をもたらして、国を豊かにする。それがあなたの聖女として成すべきものだと私は考えるわ」
国を豊かに。それが私のゴールで成すべき事。私は目を閉じてもう一度クララ様から教えられたこの言葉を唱えた。その時、頭の中にジェリコ公爵領地を見て回った時のやり取りがよぎる。
「この地域周辺の畑は最近あまり収穫量が上がらず……」
「土に問題があるんじゃないか?」
「栄養剤を土に入れてみるとか」
(そうだ。これこそ……)
私はベッドから起き上がり、部屋にある本棚から領地経営の本と農業にまつわる本を取り出した。聖女の力だけでなく技術も必要だ。
(聖女の力だけでなくて、魔法薬とかの技術向上もはからないと)
その後、私はジュリーのいる部屋に向かう。彼女は薬に詳しい。その辺技術について一言貰いたい。
「ジュリーさん、いいですか?」
「はい、どうぞ」
「失礼します。ジュリーさん」
「マリーナ様、どうなさいました?」
ジュリーも寝間着に着替えて髪を降ろし、ベッドの上で足を伸ばしたまま魔術書に目を通していた。
「あの、薬について教えて頂きたいんです」
「薬ですか?」
「はい、畑の栄養剤と治癒魔法についてです。聖女の力には頼りすぎず、技術も出来るだけ使って国を豊かにしたいと思ったんです。それで、ジェリコ公爵領を見て回った時の事も思い出しまして」
「ほうほう、成る程。大学院ではその辺講義で習ってましたっけ?」
「まだです」
「では、予習ついでにちょっとだけ教えましょう。ただ明日も早起きしなければなので、畑の栄養剤だけになりますが構いませんか?」
勿論構わない。私は首を縦にふった。
「ではでは。薬というのは今や調合がメイン。ようは魔法薬を組み合わせて魔法薬を作るのが主流です」
「はいはい」
私はジュリーの話を聞きながら、紙にペンでメモを取る。
「畑の栄養剤なら例えば腐葉土を使うんですが、今手元に無いので召喚しますね」
「はい」
ジュリーは窓を開いて中庭に出て、落ち葉をいくつか拾うと部屋の床に水で洗い流せるタイプのチョークで魔法陣を書き、その上に置くと落ち葉が腐り腐葉土になった。
「これに更にこの魔法薬を組み合わせて……」
「色が緑色になりました」
「これがよく使われるスタンダードな栄養剤です」
「ありがとうございます。これを沢山用意できれば……」
「ただ、土地によって相性の良い組み合わせは異なりますからね」
「ですよね……」
「ですが、この栄養剤を大量生産出来れば農業は格段に飛躍する可能性はあります。田舎はまだまだ魔法が浸透していなかったりしますし」
そうだ。クリス様と脱走した時に泊まった宿の主は私の治癒魔法を見て驚いていたのを思い出す。
「治癒魔法が使えるのね、あなた……」
魔法の技術をもっとザパルディ国の民に教えて、広める必要もある。そうすれば国も豊かになる。勿論悪用の可能性もあるのでそこはまた法整備も必要か。
やる事が、私が成すべき事が一気に増えた気がした。
「クララ様?」
「聖女の神話、振り替えってみて?」
ザパルディ国には1000年に一度、聖女と呼ばれる莫大な魔力を持つ娘が誕生する。
その聖女と結ばれた王子には、莫大な加護がつき、国が豊かになるというものだ。
聖女の特徴は3つ。まずは美しい金髪、次に美しい容姿、そして血のような真っ赤な瞳。その特徴を備えた少女が成人した時に神託を受けると、聖女として目覚め、証が浮かび上がる。
それらを全て兼ね備え、莫大な魔力を有する娘こそが、聖女である。そんな聖女の再来を民はずっと待ちわびている。
だったか。
「その聖女と結ばれた王子には、莫大な加護がつき、国が豊かになるというものだ。の部分よ。私もだけど、ザパルディ国が今よりも豊かになる事に越した事は無い。農業も畜産も産業経済も……皆あなたの加護で豊かになれば幸いだわ」
「成る程……」
「あなたが聖女に目覚めて国が豊かになるなら悪魔の獣も減るかもしれない。それにロイナ国の宣戦布告。これから戦争が控えているなら国は豊かでないと戦争にもたず荒廃してしまう」
クララ様の言う事は最もだった。彼女の言葉がすーーっと私の胸の中に染み込んでくる。
「だから、具体的に言うと領地や国を周りその力で豊穣をもたらして、国を豊かにする。それがあなたの聖女として成すべきものだと私は考えるわ」
「クララ様……ありがとうございます」
「あと細かい部分は自分で考えなさい。ジュリーはどう思ってる?」
「私もお師匠様と同じ考えです」
馬車が止まった。私達はゆっくりと馬車から降りて屋敷に入る。
「皆、今日はゆっくり休んで疲れを取りましょう。交流の場はあさってまで続きますからね」
「はいっ」
「はい、お師匠様!」
私は早速服を脱いでシャワーを浴びて身体中の汗やお化粧を落とし、寝間着に着替えてベッドの上に座る。
「ふうっ」
私は改めて、クララ様から教えられた言葉を頭の中で繰り返す。
「領地や国を周りその力で豊穣をもたらして、国を豊かにする。それがあなたの聖女として成すべきものだと私は考えるわ」
国を豊かに。それが私のゴールで成すべき事。私は目を閉じてもう一度クララ様から教えられたこの言葉を唱えた。その時、頭の中にジェリコ公爵領地を見て回った時のやり取りがよぎる。
「この地域周辺の畑は最近あまり収穫量が上がらず……」
「土に問題があるんじゃないか?」
「栄養剤を土に入れてみるとか」
(そうだ。これこそ……)
私はベッドから起き上がり、部屋にある本棚から領地経営の本と農業にまつわる本を取り出した。聖女の力だけでなく技術も必要だ。
(聖女の力だけでなくて、魔法薬とかの技術向上もはからないと)
その後、私はジュリーのいる部屋に向かう。彼女は薬に詳しい。その辺技術について一言貰いたい。
「ジュリーさん、いいですか?」
「はい、どうぞ」
「失礼します。ジュリーさん」
「マリーナ様、どうなさいました?」
ジュリーも寝間着に着替えて髪を降ろし、ベッドの上で足を伸ばしたまま魔術書に目を通していた。
「あの、薬について教えて頂きたいんです」
「薬ですか?」
「はい、畑の栄養剤と治癒魔法についてです。聖女の力には頼りすぎず、技術も出来るだけ使って国を豊かにしたいと思ったんです。それで、ジェリコ公爵領を見て回った時の事も思い出しまして」
「ほうほう、成る程。大学院ではその辺講義で習ってましたっけ?」
「まだです」
「では、予習ついでにちょっとだけ教えましょう。ただ明日も早起きしなければなので、畑の栄養剤だけになりますが構いませんか?」
勿論構わない。私は首を縦にふった。
「ではでは。薬というのは今や調合がメイン。ようは魔法薬を組み合わせて魔法薬を作るのが主流です」
「はいはい」
私はジュリーの話を聞きながら、紙にペンでメモを取る。
「畑の栄養剤なら例えば腐葉土を使うんですが、今手元に無いので召喚しますね」
「はい」
ジュリーは窓を開いて中庭に出て、落ち葉をいくつか拾うと部屋の床に水で洗い流せるタイプのチョークで魔法陣を書き、その上に置くと落ち葉が腐り腐葉土になった。
「これに更にこの魔法薬を組み合わせて……」
「色が緑色になりました」
「これがよく使われるスタンダードな栄養剤です」
「ありがとうございます。これを沢山用意できれば……」
「ただ、土地によって相性の良い組み合わせは異なりますからね」
「ですよね……」
「ですが、この栄養剤を大量生産出来れば農業は格段に飛躍する可能性はあります。田舎はまだまだ魔法が浸透していなかったりしますし」
そうだ。クリス様と脱走した時に泊まった宿の主は私の治癒魔法を見て驚いていたのを思い出す。
「治癒魔法が使えるのね、あなた……」
魔法の技術をもっとザパルディ国の民に教えて、広める必要もある。そうすれば国も豊かになる。勿論悪用の可能性もあるのでそこはまた法整備も必要か。
やる事が、私が成すべき事が一気に増えた気がした。
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