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第71話 これが私の答え
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私はさっきマリアに言い放ってしまったセリフを思い出した。
――ああ、もう! マリアがアルグレートと結婚すれば良かったのに! 私はアルグレートの事好きだけど離れたくない!
「君はさっき、俺の事を好きだと言ったな?」
「い、言った……はい、言いました……」
「すごく嬉しかったよ。はっきり言ってくれて本当に嬉しかったんだ」
アルグレートの碧眼の瞳は真っ直ぐに私を捉えて離さない。私はその瞳に完全に射抜かれていた。
「アルグレート様はここまであなたを愛しているのですわよ? 眩しいですわ」
「マリア……」
「今、話し合ったらいかが? お膳立てはとうに済んでいてよ」
私は無言でアルグレートを見つめる。彼の目からはどのような選択になっても受け入れたいという気持ちと、私と離れ離れになりたくないという気持ちの2つが読み取れる。
「私……アルグレートの事が好き」
「ああ。俺も君の事を愛している」
愛しているという彼の言葉はこの期に及んで破壊力がえげつなかった。
「ありがとう……」
「それで……オトネ、君はどうしたい? 俺としては君がどんな選択を取っても……」
「私がいなくなったら、悲しむくせに」
マリアが口元を扇子で煽っているのが視界に映る。まるで私から吐き出される言葉を待っているようだ。
「……私は……」
もちろん家族や先輩後輩が気にならない事は全くない。だけど私の事をここまで愛してくれるのは後にも先にもアルグレートだけだろう。
皆優しいし、マリアはまだ苦手だけど自分の気持ちを吐き出してくれた。ここは……皆の気持ちに応えたい。
「元の世界には戻らない。私はアルグレートとずっと一緒にいる」
見つけた答えをアルグレート達に伝える。アルグレートは目をまん丸に見開いて、私をじっと見つめるだけだ。
「私、決めたよ。この世界で生きていく。これから大変な事もたくさんあるかもしれないけど、アルグレートが一緒なら大丈夫って思えたから」
あれだけ迷っていたのがバカバカしくなるくらい、今の胸の中は爽やかな空気に満ち溢れている。
「オトネ……!」
アルグレートが私を優しく抱き締めた。彼の薔薇のような香りが鼻腔の奥まで届いてくる。ああ、今更だけど好きな人に抱きしめられるのはこんなに落ちつく事なんだな。
「本当にいいのか? それで……」
「うん、もう決めたよ。だから安心してほしい」
「あら、言い切りましたわね? あなたの顔今すごく美しく見えますわよ?」
「そうかな、でもマリアが言うならそうなんだろうね」
アルグレートの胸に顔を埋める。彼は私の背中をガラス細工を扱うかのように撫でてくれた。私も彼の大きくてごつごつとした背中に腕を回す。
「おふたりとも、抱擁し合っている中申し訳ありませんが、私はこれで退出いたしますわ。ああ、抱擁は続けたままで結構ですわよ」
「マリア……もう帰るんだ? あれ、もうそんな時間?」
「あなたはお察しが悪いわね……あなた達の時間を邪魔する訳にはいかないでしょうに」
ちょっとマリアの口調に怒りが伴っていた。いやいや察しが悪くてすみませんよ~だ。と悪態をついてみると、アルグレートがくすっと笑う。
「君、そんな態度もマリアに取れるんだな」
「あ、いやその……う、ごめんなさい」
「悪態をつくなら謝らない方がよろしゅうございますわよ? まあでもあなたの優しさは十分伝わってまいりましたから今回は見逃して差し上げますわ」
マリアが扇子をぱたぱた仰がせながら、部屋の扉へと歩いていく。
「オトネ様。まずはご無事にご出産を終えますように祈っておりますわ」
「ありがとう、マリア」
「あなたって面白い方ね。アルグレート様があなたに惚れた理由がなんとなく分かりましたわ。これからはちゃんと対話を大事にしなさいね? 私が言うのもなんだけど」
「もちろんだよ。目が覚めたしね」
ふふっとにこやかな笑みを残しながら彼女は屋敷を後にした。玄関ホールまで見送ろうかと思ったけど彼女が私とアルグレートの邪魔をする形になるのは望んでいないだろうし、このままアルグレートの胸の中に顔を埋めておく。
「そこ、そんなに気に入ったのか?」
「うん、だってこうしていると落ち着くんだよね」
「そうか……なんだかよくわからないが、オトネがそう言うなら嬉しいものだ。むしろもっと甘えてくれないか?」
「へ?」
とはいえ、心地よいのには変わらないので、このままむぎゅっと彼の胸に顔を埋め続けたのだった。
◇ ◇ ◇
ディナーは久しぶりに食堂でアルグレートと食べる事になった。私がこの世界に留まる事を選択したおかげか、アルグレートはこれまで見た事が無いくらいルンルンと明るい雰囲気を醸し出しているように見える。
アルグレートは冷たくて氷のような空気こそ彼らしいと思っていたので、この子供のような感じはちょっと見慣れないけど……でも嬉しさを分かりやすく出しているのは見ていて良い気分ではあるので、このままずっと見ていたくもなる。
「アルグレート様、オトネ様、お食事をご用意いたしました」
――ああ、もう! マリアがアルグレートと結婚すれば良かったのに! 私はアルグレートの事好きだけど離れたくない!
「君はさっき、俺の事を好きだと言ったな?」
「い、言った……はい、言いました……」
「すごく嬉しかったよ。はっきり言ってくれて本当に嬉しかったんだ」
アルグレートの碧眼の瞳は真っ直ぐに私を捉えて離さない。私はその瞳に完全に射抜かれていた。
「アルグレート様はここまであなたを愛しているのですわよ? 眩しいですわ」
「マリア……」
「今、話し合ったらいかが? お膳立てはとうに済んでいてよ」
私は無言でアルグレートを見つめる。彼の目からはどのような選択になっても受け入れたいという気持ちと、私と離れ離れになりたくないという気持ちの2つが読み取れる。
「私……アルグレートの事が好き」
「ああ。俺も君の事を愛している」
愛しているという彼の言葉はこの期に及んで破壊力がえげつなかった。
「ありがとう……」
「それで……オトネ、君はどうしたい? 俺としては君がどんな選択を取っても……」
「私がいなくなったら、悲しむくせに」
マリアが口元を扇子で煽っているのが視界に映る。まるで私から吐き出される言葉を待っているようだ。
「……私は……」
もちろん家族や先輩後輩が気にならない事は全くない。だけど私の事をここまで愛してくれるのは後にも先にもアルグレートだけだろう。
皆優しいし、マリアはまだ苦手だけど自分の気持ちを吐き出してくれた。ここは……皆の気持ちに応えたい。
「元の世界には戻らない。私はアルグレートとずっと一緒にいる」
見つけた答えをアルグレート達に伝える。アルグレートは目をまん丸に見開いて、私をじっと見つめるだけだ。
「私、決めたよ。この世界で生きていく。これから大変な事もたくさんあるかもしれないけど、アルグレートが一緒なら大丈夫って思えたから」
あれだけ迷っていたのがバカバカしくなるくらい、今の胸の中は爽やかな空気に満ち溢れている。
「オトネ……!」
アルグレートが私を優しく抱き締めた。彼の薔薇のような香りが鼻腔の奥まで届いてくる。ああ、今更だけど好きな人に抱きしめられるのはこんなに落ちつく事なんだな。
「本当にいいのか? それで……」
「うん、もう決めたよ。だから安心してほしい」
「あら、言い切りましたわね? あなたの顔今すごく美しく見えますわよ?」
「そうかな、でもマリアが言うならそうなんだろうね」
アルグレートの胸に顔を埋める。彼は私の背中をガラス細工を扱うかのように撫でてくれた。私も彼の大きくてごつごつとした背中に腕を回す。
「おふたりとも、抱擁し合っている中申し訳ありませんが、私はこれで退出いたしますわ。ああ、抱擁は続けたままで結構ですわよ」
「マリア……もう帰るんだ? あれ、もうそんな時間?」
「あなたはお察しが悪いわね……あなた達の時間を邪魔する訳にはいかないでしょうに」
ちょっとマリアの口調に怒りが伴っていた。いやいや察しが悪くてすみませんよ~だ。と悪態をついてみると、アルグレートがくすっと笑う。
「君、そんな態度もマリアに取れるんだな」
「あ、いやその……う、ごめんなさい」
「悪態をつくなら謝らない方がよろしゅうございますわよ? まあでもあなたの優しさは十分伝わってまいりましたから今回は見逃して差し上げますわ」
マリアが扇子をぱたぱた仰がせながら、部屋の扉へと歩いていく。
「オトネ様。まずはご無事にご出産を終えますように祈っておりますわ」
「ありがとう、マリア」
「あなたって面白い方ね。アルグレート様があなたに惚れた理由がなんとなく分かりましたわ。これからはちゃんと対話を大事にしなさいね? 私が言うのもなんだけど」
「もちろんだよ。目が覚めたしね」
ふふっとにこやかな笑みを残しながら彼女は屋敷を後にした。玄関ホールまで見送ろうかと思ったけど彼女が私とアルグレートの邪魔をする形になるのは望んでいないだろうし、このままアルグレートの胸の中に顔を埋めておく。
「そこ、そんなに気に入ったのか?」
「うん、だってこうしていると落ち着くんだよね」
「そうか……なんだかよくわからないが、オトネがそう言うなら嬉しいものだ。むしろもっと甘えてくれないか?」
「へ?」
とはいえ、心地よいのには変わらないので、このままむぎゅっと彼の胸に顔を埋め続けたのだった。
◇ ◇ ◇
ディナーは久しぶりに食堂でアルグレートと食べる事になった。私がこの世界に留まる事を選択したおかげか、アルグレートはこれまで見た事が無いくらいルンルンと明るい雰囲気を醸し出しているように見える。
アルグレートは冷たくて氷のような空気こそ彼らしいと思っていたので、この子供のような感じはちょっと見慣れないけど……でも嬉しさを分かりやすく出しているのは見ていて良い気分ではあるので、このままずっと見ていたくもなる。
「アルグレート様、オトネ様、お食事をご用意いたしました」
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