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第20話 李賢妃の過去
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李賢妃は劉貴妃や玉成淑妃、周徳妃の実家程ではないがそれなりに裕福な家に生まれ、数年は普通に両親の愛を受けて育った。
しかし転機が訪れたのは彼女が7歳になった時の事。彼女の父が病により亡くなったのである。
残された李賢妃と母親は、一度実家に帰る。母親は程なくして母親の親族から紹介された人物と再婚して李賢妃もそこについて行った。
だが、再婚相手と母親との間に息子や娘らが生まれてからは、李賢妃は再婚相手から邪魔な存在だと見られるようになる。
(こんな家にいても意味が無い)
李賢妃の母親も再婚相手程ではないが、徐々に李賢妃を雑に扱うようになっていく。この家から出たいと考えた李賢妃は、ある時、ある物語に行き着いた。
物語は貧乏な娘が後宮入りし、出世の階段を駆け上がり皇后になるという内容である。
(私も、後宮入りしてこの本の主人公のように努力すれば……!)
後宮入りを切望した李賢妃は何度か母親と再婚相手に後宮入りを志願した。
「お前如きに妃は無理だ」
「あなたは後宮とは違う場所に嫁いだら良いのよ。取り柄だなんてないのだから」
(再婚相手は自分とお母様の娘を後宮入りさせたいのね)
そんな中、浩明の妃探しの機会が訪れた事と自己研鑚に励む李賢妃の評判を聞いた家臣からの推薦を受けた結果、見事賢妃として後宮入りする事になったのだった。
後宮入りしてからは、賢妃という高い位になる事は想定していなかったのか、再婚相手と母親からは手のひらを返したかの如く何度も手紙が来たり、宝石や衣服が届けられたりしている。
(今振り返ればばかな人達だけど、成功体験でもある……)
李賢妃はどこで道を間違えたのか。と己に自問自答する。
(……いや、足りなかったの? わからない……。でも皇后様にはあるものを私には無い……)
どうすれば良いのか。ずっと頭を巡らせていた李賢妃はある答えにたどり着いたのだった。
(自分で何がいけないのかを探り出す必要と、そして皇后様というお方をもっと間近で見て理解する必要があるわ……)
そんな中お茶会の時が来た。美華は女官の支えを受けて席に座る。
「李賢妃様どうもお待たせしてしまいすみません。ああ、これがお茶で……こっちがお皿ですね」
「皇后様。何をしているのでございますか?」
「波動の力を使って、お皿などの位置を確認している所です。ちゃんと把握しないとこぼしちゃうので」
(ああ、最初はよくこぼしてたって聞いたわね)
李賢妃が茉莉花茶を飲んでいると、美華もゆっくりとした手つきで茉莉花茶の入った茶器を手にして、口へと運ぶ。
「あっこれ茉莉花茶ですね! 美味しいです……!」
「あら、喜んでもらえて何よりでございます」
その時、美華付きの女官が彼女の右耳のそばで何やら話をし始める。
「……わかりました。すぐに伺います」
何か尋常ならざる事態を感じ取った李賢妃は、美華に何かあったのでございますか? と尋ねると美華は劉貴妃に呼ばれたと答える。
「どうやら頭が痛いようです。すみませんがすぐに……」
(やはり、病人の方が優先。という事ね)
「いえ、お気遣いなく。またお茶会しましょう。今日はこれでお開きにします」
「す、すみません……」
美華は李賢妃に向けて頭を下げると、劉貴妃のいる建物へと早歩きで向かって行った。
「……なるほどね」
◇ ◇ ◇
「おはようございます。皇后様」
「その声は……李賢妃様でございますね。おはようございます」
夜明け前。いつものように治療院を開こうとしていた美華達の元に、李賢妃が女官達を引き連れて現れていた。
李賢妃は美華の目隠しされた顔を見ると、緊張と罪悪感と美華への感情を鎮める為に、一度息を大きく吸って吐いた。
「皇后様。このような私が言うのもなんですが……私をここで働かせてもらえないでしょうか?」
「李賢妃様がここで働く、ですか?」
「はい。皇后様。お願いします……!」
朝のひんやりした石畳の地面の上で座礼する李賢妃とその女官達を、美華付きの女官は眉をひそめながら見つめといた。
しかし転機が訪れたのは彼女が7歳になった時の事。彼女の父が病により亡くなったのである。
残された李賢妃と母親は、一度実家に帰る。母親は程なくして母親の親族から紹介された人物と再婚して李賢妃もそこについて行った。
だが、再婚相手と母親との間に息子や娘らが生まれてからは、李賢妃は再婚相手から邪魔な存在だと見られるようになる。
(こんな家にいても意味が無い)
李賢妃の母親も再婚相手程ではないが、徐々に李賢妃を雑に扱うようになっていく。この家から出たいと考えた李賢妃は、ある時、ある物語に行き着いた。
物語は貧乏な娘が後宮入りし、出世の階段を駆け上がり皇后になるという内容である。
(私も、後宮入りしてこの本の主人公のように努力すれば……!)
後宮入りを切望した李賢妃は何度か母親と再婚相手に後宮入りを志願した。
「お前如きに妃は無理だ」
「あなたは後宮とは違う場所に嫁いだら良いのよ。取り柄だなんてないのだから」
(再婚相手は自分とお母様の娘を後宮入りさせたいのね)
そんな中、浩明の妃探しの機会が訪れた事と自己研鑚に励む李賢妃の評判を聞いた家臣からの推薦を受けた結果、見事賢妃として後宮入りする事になったのだった。
後宮入りしてからは、賢妃という高い位になる事は想定していなかったのか、再婚相手と母親からは手のひらを返したかの如く何度も手紙が来たり、宝石や衣服が届けられたりしている。
(今振り返ればばかな人達だけど、成功体験でもある……)
李賢妃はどこで道を間違えたのか。と己に自問自答する。
(……いや、足りなかったの? わからない……。でも皇后様にはあるものを私には無い……)
どうすれば良いのか。ずっと頭を巡らせていた李賢妃はある答えにたどり着いたのだった。
(自分で何がいけないのかを探り出す必要と、そして皇后様というお方をもっと間近で見て理解する必要があるわ……)
そんな中お茶会の時が来た。美華は女官の支えを受けて席に座る。
「李賢妃様どうもお待たせしてしまいすみません。ああ、これがお茶で……こっちがお皿ですね」
「皇后様。何をしているのでございますか?」
「波動の力を使って、お皿などの位置を確認している所です。ちゃんと把握しないとこぼしちゃうので」
(ああ、最初はよくこぼしてたって聞いたわね)
李賢妃が茉莉花茶を飲んでいると、美華もゆっくりとした手つきで茉莉花茶の入った茶器を手にして、口へと運ぶ。
「あっこれ茉莉花茶ですね! 美味しいです……!」
「あら、喜んでもらえて何よりでございます」
その時、美華付きの女官が彼女の右耳のそばで何やら話をし始める。
「……わかりました。すぐに伺います」
何か尋常ならざる事態を感じ取った李賢妃は、美華に何かあったのでございますか? と尋ねると美華は劉貴妃に呼ばれたと答える。
「どうやら頭が痛いようです。すみませんがすぐに……」
(やはり、病人の方が優先。という事ね)
「いえ、お気遣いなく。またお茶会しましょう。今日はこれでお開きにします」
「す、すみません……」
美華は李賢妃に向けて頭を下げると、劉貴妃のいる建物へと早歩きで向かって行った。
「……なるほどね」
◇ ◇ ◇
「おはようございます。皇后様」
「その声は……李賢妃様でございますね。おはようございます」
夜明け前。いつものように治療院を開こうとしていた美華達の元に、李賢妃が女官達を引き連れて現れていた。
李賢妃は美華の目隠しされた顔を見ると、緊張と罪悪感と美華への感情を鎮める為に、一度息を大きく吸って吐いた。
「皇后様。このような私が言うのもなんですが……私をここで働かせてもらえないでしょうか?」
「李賢妃様がここで働く、ですか?」
「はい。皇后様。お願いします……!」
朝のひんやりした石畳の地面の上で座礼する李賢妃とその女官達を、美華付きの女官は眉をひそめながら見つめといた。
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