後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん

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第30話 こんな時、どのようにしたらいいんですか

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 ひとりぽつんと取り残された格好になった美華に、そばにいた宦官があの……と声をかける。

「お、お食事は……どうなさいますか?」
「あ、えっと……食べなきゃもったいないですよね。私の分は食べます……」

 もそもそと箸や匙を動かす手は重い。浩明の言葉がまだ剣となって美華の胸元に刺さったままだ。
 
(なんでこんなに……胸が苦しくて切ないのだろう)

 その感覚が何なのかが全く分からないのに、浩明が出ていったばかりなのに、今は浩明の事ばかり考えてしまう自分がよくわからない。
 その疑問を払うように食事を進めても、疑問は消えてなくならないのだ。

(何なんだろう、傷ついた事なんか多すぎてへっちゃらになったはずなのに。それに放っておけない感じがして……)
「あの、少々よろしいですか?」

 ずっとそばに控えていた宦官が何でございましょうか? と聞く。

「あの……こう言う時って、どのようにしたらいいんですか?」
「ああ……え~とそうですね……」

 宦官も言葉が出てこないようで沈黙が続く。

「私は、陛下のお言葉も皇后様のお言葉もどちらも間違っていないと思うのですよ」
「間違っていないとは?」
「その……陛下からすればあなたに愛されたいのではないですか?」
「愛されたい?」

 陛下だけでなく、陛下も含めて龍の国の民を愛する。国の外の民……この世界の民すべてを愛するのではだめなのか? でもあの方は愛せないけどね。などと考える美華へ宦官は続ける。

「その他大勢とご一緒にされるのが嫌なのだと、私は思います」
「えっ、その他大勢と一緒は嫌なのですか?」
「はい、あくまで私個人の考えでございますが」
「平等だと思ったのですが……それではだめなのですか? 陛下は……」

 宦官が頭を右にひねりながらおそらく……。と答える。

(なんで陛下は平等なのは嫌なのかしら? 陛下にお聞きしたいけど、あれは……これ以上話したくないって雰囲気だった……)

 食事を終えて鶴龍殿へと帰還した美華。浩明の考えを頭の中で考察しようにも答えが出ないまま時間だけが過ぎていく。
 就寝の時刻が来ても、眠れない。何度目をつむっても意識は遠ざかっていかない。

「……眠れないっ!」
 
 ついに架子床から飛び起きてしまった美華に、側で侍っていた女官がいかがなさいましたか?! と驚きながら美華の元へと駆け寄って来た。

「すみません……眠れないんです……」

 
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