世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん

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第2話 倒れているのは騎士団長様?!

 私は平民だから魔力はない。エリおばあちゃんが持っていた童話のように、指先ひとつで箒を動かして掃除させたり、炎を出して魔獣を倒したり、妖精を召喚するなんてのは魔力量が豊富な上級貴族や王族のみの話。
 しかし山々に根を張る草木や花々にキノコを乾燥させたり、煮詰めたものを何種類か混ぜ合わせるだけで、高熱が瞬時に引いたり、苦しい咳が止まったり、髪の色が思いのままに変えられたりする。この魅力に取りつかれた私は、エリおばあちゃんから薬について教わり、薬師の免許も取った。

 正式に薬師となった後は、エリおばあちゃんと一緒に魔法薬を作っては、クワイおじいちゃんに売ってもらったり、新しい配合を見つけてはどんな効能を示すかの研究に勤しむようになった。
 調合はとっても楽しい! 種類だけじゃなく、量によってもどんな薬となるのかが変わるのだ。失敗したのは数えきれないが、思い通りのものが誕生した瞬間に生じる嬉しさはものすごく大好きで一種の中毒のようなものと化している。

 その祖父母も10年前、私が15歳の頃立て続けに亡くなった。25歳になった私はここんでずっとひとりで暮らし続けている。
 辺り一帯には危険な魔獣も潜んでいるけど、怖くはない。なぜなら彼らが苦手なにおいを発する魔法薬を開発して散布しているから。最初は寂しかったけど、慣れは本当にはやいものだ。
 
 ちなみに最後に召集が下ったのは去年の春で大体1年か2年おきのペースだっけ。それ以外は町の方にはいかない。
 タタおばあさんはじめ、私の事はよく山ごもり薬師なんて呼ぶけど、澄み切った空気に満ち溢れていて日々驚きを与えてくれる山々で暮らすのは、うきうきが止まらない。死ぬまでここで暮らしていたいと願っている。

◇ ◇ ◇

 朝食を食べ終えた後は、早速魔法薬の研究に取り掛かる。今日はクマ型の魔獣の肉を柔らかくさせる薬を途中から考えなければならない。
 私は時折論文を書いては、伝書鳩の足に括り付けて王宮内にある研究所まで送っている。事の成り行きとしてはエリおばあちゃんは結構優秀な薬学者だったそうで、孫である私が薬師の免許を取った後、研究所から研究開発に協力してほしいと依頼が来たからだ。
 それに論文が認められれば沢山お金が手に入るし、研究に協力しただけでもお駄賃は入る。自分の得意分野でお金を稼げるのはメリットしかない。

「ん?」

 工房に入る手前で大きな音が聞こえてきた。がさがさと木々が踏みつけられるような音だ。
 大型の魔獣かと思ったが、音はすぐに止まり静けさが再び舞い戻る。

「……何だろう」

 魔獣が陣取ったとなれば面倒だ。外を確認すべく、急いで工房内にある換気用の窓へ向かうと前方には驚きの光景が見える。

「誰か倒れている?!」

 なんと成人男性があおむけになって寝っ転がっていた。
 黒一色の制服に、外側は黒内側は赤のマント。そして左胸には大きな金色の勲章がでかでかと輝いている。
  白い肌はきめ細やかで、鼻が高いハンサムな顔立ちをしている。ぱっと見だが流血はしていない。髪の毛は制服と同じ色合いで、黒髪の人はあんまり見た記憶がないから新鮮ではある。ひょっとしてエルドランド王国ではない方だろうか?
 
「騎士?」

 そうだ。タタおばあさんがちょくちょく言う騎士とよく似た姿のような……。
 意を決して家の外へ飛び出す。近づいて確認してみるが、クワイおじいちゃんよりも背が高いであろう彼の瞼は硬く閉ざされたままだ。更に唇の色は血色が悪そうな紫色に変化している。
 しかしそっと首元に手を当てると脈はあり、乱れもない。
 彼は何かがあって意識を失っているか眠っている。早く手当てをしなければ。その時、金色の勲章に視線が移った。

「ん、これ……金獅子勲章! 刻印されている文字は……ああ、き、騎士団長様?!」
 

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