【改稿版】僕は最強者である事に無自覚のまま、異世界をうろうろする

風の吹くまま気の向くまま

文字の大きさ
42 / 239
第三章 ついに巡り合う二人

42.即死

しおりを挟む
第016日―4


『昨日、太陽が中天にある時、ダイスの紋章が審判の警告を発した。我の見るところ、猶予は約1日のはず。今日、太陽が中天に上る時、審判が開始されるであろう』

銀色のドラゴンの言葉を聞いたナイアが、アレルに自嘲気味の笑みを向けた。

「あたしらの知る物語じゃあ、勇者ダイスが魔王を討伐する。つまり存在を消去されるのは、あたしとあんたアレルって事か」

ダイスが弱気な発言をするナイアを睨みつけた。

「おい、何しけたつらしてやがんだ。守護者だかなんだか知らねぇけど、そんなやつ、俺達三人で叩き返してやれば良いだろ?」

アレルが銀色のドラゴンに問い掛けた。

「ところで古きドラゴンよ、守護者はどのような姿を?」
『人間の女の姿をしておる』
「では、その者はどうやって我々に審判を下すのですか?」
『守護者は有無を言わさず、お前達を攻撃してくるはずじゃ。最後の一人が残るまで、その攻撃は止まぬ』
「我々が一所ひとところにいなければ?」
『対象となる存在が世界中に散らばっていようが、一所ひとところに集まっていようが、守護者の審判から逃れる事は不可能じゃ』
「かつて複数の勇者が、共同で守護者を撃退した事例は?」
『人間の勇者よ、かつての者共は皆共同で守護者に立ち向かった。しかし結局、審判を逃れる事は出来なかった。残念ながら、お前達の攻撃では守護者の衣一つ焦がす事は不可能じゃ』

銀色のドラゴンの言葉に、皆重苦しく押し黙った。

アレルが、再び銀色のドラゴンに問い掛けた。

「守護者の攻撃対象は、勇者だけ、ですよね?」
『守護者は我の知る限り、無意味な殺戮は行わぬ。手出しせねば、勇者以外を攻撃対象とはせぬであろう』

アレルは仲間達に視線を向けた。

「イリア、ウムサ、エリス、少しこの地を離れていて貰えないだろうか? 勇者の審判に大事な君達を巻き込みたくない」

イリアが憮然とした表情になった。

「ちょっと! 聞き捨てならないわね。魔王を倒そうと誓ったあの日から、心はあなたと共にあるつもりよ? 今更逃げ出してどうしろと?」
「でもイリア、相手は魔王じゃないよ」
「勇者に襲い掛かってくる時点で、魔王の味方みたいなものでしょ?」

ウムサが大きくうなずいた。

「イリアの申す通りじゃ。私も最後まで勇者と共にありますぞ」

イリスもまた、淡々と告げてきた。

「アマゾネスの誇りに掛けて、敵に背を向ける選択肢はない」

アレルは仲間達の言葉に少し瞳をうるませた。

と、銀色のドラゴンが鎌首をもたげた。

『おかしい……まだ時間的猶予があったはずじゃが、守護者の気配を感じる』

皆の間に、一斉に緊張が走った。

「あれはっ!?」

ナイアが鋭い叫びを上げた。
見ると、彼等のすぐ傍らで、空間が僅かに歪み始めていた。
ナイアが直ちに使い魔達を呼び出し、アレルは聖剣の力を開放していく。
銀色のドラゴンが、翼を広げてふわりと舞い上がった。

『ダイスよ、すまぬ。我は守護者とは戦えぬ事になっておる』
「いいさ。ドラゴンのじいさんは、向こうでちょっと待っていてくれ。ちゃっちゃと叩き返して、とっとと魔王退治に向かおうぜ」

ダイスは軽口を叩きながらも、彼の聖具である聖弓を構え、その力を開放していく。
その間も空間の歪みは次第に大きくなり、そこに突如として、不思議な揺らめきに縁取られた、黒い穴が出現した。
と、何者かがそこから出てきた!
その刹那、その場の全員による一斉攻撃が行われた。
ナイアの魔力の暴風が吹き荒れ、ダイスの濃密な光の矢が爆発し、アレルの剣がその何者かを粉々に打ち砕いた。
凄まじい攻撃により、その守護者(?)は塵も残さず消滅し、同時に黒い穴も消え去った。


「やったのか??」

誰かの叫び声に、ナイアの鋭い叱咤が重なった。

「まだだよ、そこ!」

ナイアが剣で指し示す先で、異様な現象が発生していた。
何の変哲も無いはずの空間に、黒い何かが凝集し始めていた。
それはしゅうしゅうと湯気を立てながら、次第に人型へと形作られていく。

「まさか……復活しようとしている!?」
「もう一回、攻撃するよ!」

彼等が再び攻撃態勢に入り……

「待った! ちょっと何かがおかしい」

アレルが皆を制止した。
次第に輪郭がはっきりしてきたその人型は、アレルが良く知る人物へと……

「カケル!?」

そこには両手を地面につき、苦しそうに咳き込むカケルの姿があった。



「い、いきなり何が!?」

僕はふらつきながら立ち上がった。
今一瞬、いきなり死んでしまった自信があった。

『ハーミル、大丈夫?』

自分の中に彼女の存在は認識できるものの、意識を失っているのか、応答がない。
改めて周囲を見回してみると、アレル達が呆然とこちらに視線を向けているのに気が付いた。
どうやら、過去への遡行には成功したようだ。

「アレルさん!」

僕は思わずアレルに駆け寄ろうとして……同年代と思われる、しかし見覚えの無い少女に剣を突き付けられた。
その少女は、猜疑心剥き出しで問い掛けてきた。

「あんた、何者だい? 守護者じゃないのかい?」

アレルがその少女に声を掛けた。

「ナイアさん、彼はカケルと言って、僕達の元の世界での知り合いの一人ですよ」

しかし、その少女――どうやらナイアって名前らしいけれど――は、突き付けてきた剣を下ろさず、僕に探るような視線を向けるばかり。
アレルが再び口を開いた。

「古きドラゴンは、守護者は女性だと言っていましたよ。彼は守護者じゃない」
「どっちにしても、こいつはおかしい。あんな黒い穴から唐突に出現して、しかも殺したはずなのに、塵から復活した」

塵から復活?
やはり先程、いきなり“殺された”のは確かなようだ。

「それはちょっと説明しますので、まずは剣を下ろしてもらえませんか?」

僕は背中に脂汗をかきながら後退あとずさった。
いくら復活できると言っても、死の瞬間の苦しみや恐怖は筆舌に尽くしがたい。
何度も体験したいものではない。
すると突然、頭の中に声が響いた。

『汝は何者じゃ? 汝の帯びるその力は間違いなく守護者のもの。何故守護者の力を振るえる?』

僕は慌てて周りを見回した。

『我は汝の右斜め前方で蹲る銀色のドラゴンじゃ。念話を使って汝に問い掛けておる』

その言葉通り、僕から十m程離れた場所に、巨大な銀色のドラゴンがうずくまり、じっとこちらに鋭い視線を向けてきているのが見えた。

「僕はそこのアレルさん達と同じ時代から来た、カケルという者です。ちょっと色々僕自身もよく分からない事情で、その守護者の力が使えてしまうみたいです」

アレルやナイアさん達と一緒にいた、見知らぬ赤毛の青年が、手の中の弓に矢をつがえ、僕目掛けて引き絞って来た。

「やっぱりてめえ守護者か? オレらを審判しにきやがったんだろ?」
「審判? 何の話ですか? 僕はただ、アレルさん達を助けに来ただけですよ」

その時、ようやく僕はハーミルが意識を取り戻すのを感じた。
彼女が心の中で話しかけてきた。

『今、死んでいたよね?』
『死んでいたね』
『何がどうなっているの?』
『僕もよく分からないんだけど、勘違いでこの世界に現れた瞬間、殺されちゃっていたらしい』

なぜか僕とハーミルとの心の中での会話に気付いたらしいナイアさんが、僕に剣を突き付けたまま、鋭く問い掛けてきた。

「今、誰と話してんだい? あたしの話が済んでないのに、良い度胸だね」

ハーミルが再び心の中で話しかけてきた。。

『大体分かった。ナイアがいきなり総力上げて攻撃してきたんだ』
『多分、ナイアさん以外も総攻撃参加していたと思うけど』
『カケル、ナイアにこう言って。剣を下ろさなかったら、10歳の時のあの話、ばらすよって』
『?』
『いいからいいから。私の意識もここ来ているって伝えてみて。あの子、ホント、昔っから基本的に人を信用しないからね』

僕はナイアさんに声を掛けた。

「ナイアさん」
「あんたに気安く話しかけられたくはないねぇ」
「実は、ハーミルの意識も一緒に連れてきていまして……彼女が、“話を聞いてくれないなら、ナイアさん10歳の時のあの話、ばらすぞ”と」

すると、目に見えてナイアさんが狼狽した。

「っ! な、何言ってんだい? まさか本当にハーミル来てんの?」
「あの……具体的にどんな話か、ハーミルに確認取りましょうか?」
「あんた、聞いたら絶対殺すからな!」

ナイアさんはようやく剣を下ろしてくれた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

処理中です...