【改稿版】僕は最強者である事に無自覚のまま、異世界をうろうろする

風の吹くまま気の向くまま

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第三章 ついに巡り合う二人

43.審判

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第016日―5


誤解?が解けた所で、僕達は近くの草地に腰を下ろした。
僕はナイアさんが帝城に送った使い魔が符丁に従って発光した事、北の塔の状況を直接確かめるため、ノルン様やハーミル、そしてイクタスさん達と共に、北の塔まで転移してきた事、そこでメイを救出した事、そしてノルン様とイクタスさんの協力で、時間を遡行して来た事等を順々に説明した。
そして、アレル達からは、この世界に飛ばされて以来の出来事と、間も無く守護者による審判が始まる事等を教えてもらった。

赤毛の青年――勇者ダイス――が聖弓の手入れをしながら、ナイアさんに声を掛けた。

「なんか妙な事になってんだな、ナイア達のいた世界は。アレルにナイアって揃っているのに、あっちでは女守護者は襲ってこなかったのか?」

ナイアさんが肩をすくめた。

「理由は分からないけど、勇者の紋章が赤く光り出したのって、こっちに来てからだね。より正確に言えば、選定の神殿奥の、強力な結界で外界から隔絶されていた祭壇のある大広間。あそこから脱出するために、アレルが聖剣を振るった瞬間って事になるのかな。まあ、あちらではいくら祭壇の結界を破壊しても、聖具の力を解放しても、紋章が赤く光ることは無かったよ。もしかするとその女守護者、あたしらの世界では死んでいるとか?」

銀色のドラゴンが、念話を送ってきた。

『守護者に死は存在しない。実際、おぬしらも総力を挙げて、守護者の力を持つそこのカケルを攻撃したが、果たせなかったであろう?』

ナイアさんが、僕に向き直った。

「カケル、あんた何か苦手なものとかないの?」
「苦手なもの? まあ、大体はおいしく頂ける……ってナイアさん!?」

ナイアさんが再び腰の剣を引き抜き、僕の首筋にぴたりと刃を当ててきた。
心なしか、こめかみがピクついている。

「なかなか愉快な性格しているねぇ。あたしは守護者の弱点、聞いているんだよっ!」

いや、そうならそう言ってくれないと……
今の聞き方なら、食事とかそういうの普通思い浮かべるはず。

再び銀色のドラゴンの念話が届けられた。

『守護者に弱点は存在しない。そこのカケルは違うようじゃが、いかなる攻撃も、本来ならば守護者にかすり傷一つつけられぬ』
「つまり、弱点無しの不死身っていう事かい? こりゃ参ったね……」

ナイアさんは剣を腰の鞘に戻した。
そしてしばらく何かを考える素振りを見せた後、僕に声を掛けてきた。

「そういやあんた、あたしらを助けに来たって言っていたよね? もしかして、あんたに元の世界へ連れて帰って貰えれば、全て丸く収まるんじゃないの?」
「そうですね。じゃあ、その守護者が審判しに来る前に急いで戻りましょう」

僕は立ち上がり、先程光球を呼び出した時の事を想い出しながら、目を瞑って意識を集中させた。
しかし……

「あれ? 光球出てこない」
『ええっ!?』
「光球?」

僕の心の中でハーミルが驚き、ナイアさん達が怪訝そうな表情を向けて来た。
僕はナイアさん達に説明を試みた。

「光球って、守護者の力を使うための核になるものなんですけど……おかしいな?」

銀色のドラゴンが念話を送ってきた。

『霊力が足りぬのでは無いか? 守護者は『彼方かなたの地』より霊力の供給を受けて、力を振るうはず。汝も、『彼方かなたの地』への扉を開くか、一度戻るかして、霊力を補充してくれば良かろう』
「あの……『彼方かなたの地』ってどうすれば行けるんですか?」

僕の素朴な疑問の言葉に、その場の皆が絶句した。
ナイアさんが、僕にあきれ顔を向けてきた。

「あんた、本当に守護者の力、身につけているのかい?」
「そう言われても……」

僕が守護者とやらの力を継承していると聞かされた事自体、つい1時間程前の話だ。
と、僕は北の塔での出来事を思い出した。

「そうだ! 確か祭壇に宝珠を捧げれば……って、どなたか宝珠持っている人、知りませんか?」

しかしこの場で唯一、この世界の元々の住人であるダイスさんが怪訝そうな表情になった。

「“ほうじゅ”って何だ?」

どうやらこの世界にはナレタニア帝国どころか、宝珠そのものが存在しないらしい。
折角、意気揚々とアレルやナイアさん達を助けに来たのに、これではまさかの二次遭難だ。
僕は心の中でハーミルに相談した。

『ハーミル、何か良い方法が無いか、そっちでノルン様やイクタスさんと相談できる?』
『分かった。ちょっと待って……』

ややあって、ハーミルから返事があった。

『う~ん、ノルンやイクタスさん達にとっても、想定外だったみたい。本当は最初の黒い穴使って、全員でさっさと帰って来るかと思っていたみたい』

でも最初の黒い穴って、いつの間にか消滅していたんだよな。
もしかすると一旦殺された事で、霊力の供給とやらが絶たれて、維持出来なくなったのかも、だけど。

『良い方法思いついたらすぐ知らせるから、少し待ってって』

仕方ない。
僕はハーミルを介しての相談内容を、皆に説明した。

「仕方ない。カケルの霊力の算段つく前に守護者が現れたら、全力で戦うしかないね」

アレルやナイアさん達、その場の全員がそう声を掛け合った。


やがて太陽が中天に差し掛かった。
銀色のドラゴンは、再び翼を広げて飛び立ち、僕達から距離を取った。
そして僕の視界の中、アレルやナイアさん達は、黙々と戦闘の準備を開始した。

そして、その時は突然訪れた。


―――ドゴオオォォン!


前触れも無く、僕達の座る草原の一角、数十m程離れた場所で、轟音と共に大爆発が発生した。
一瞬周囲が闇に包まれ、瓦礫が雨の如く降り注いだ。
やがて土砂の霧が晴れたそこには、まるで何かにえぐり取られたかのような、巨大なすり鉢状の地形が出現していた。

「一体何が?」

僕が頭の土埃つちぼこりを払いながら、すり鉢状の地形の丁度その中心部に目を向けると……


そこに『彼女』がいた。


腰まで届くきらめくような黒髪。
その瞳は星を映し出すかの如く輝き、その肌は透き通るかの如く白い。
そして不可思議なきらめきに包まれた、薄紫色の軽装鎧を身に纏っていた。
僕はその美しさに息を呑んだ。

しかし、次の瞬間!

凄まじい数の光の矢と魔力の暴風が、『彼女』に向けて放たれた。
同時に、僕のすぐ傍を、アレル、エリス、それにナイアさんがそれぞれの武器を手に、疾風の如く駆け抜け、『彼女』に迫った。
『彼女』はそれらを気にするでもなく、ただ物憂げに右腕を動かし、手の平を上に向けた
そこに見覚えのある光球が出現した。

そして不可解な現象が発生した。

先に放たれた光の矢と魔力の暴風は、なぜか『彼女』に届く寸前に霧散した。
少し遅れて、まさに『彼女』に飛び掛かろうとしていたアレル、エリス、それにナイアさんもまた、まるで見えない何かにはじかれたかのように、僕の遥か後方まで吹き飛ばされた。

「っつ! なんだい、あの力は?」

ナイアさん達がうめきながら立ち上がり、再び武器を構え直した。
『彼女』はその様子を一瞥いちべつした後、目の前に浮遊している光球に手を伸ばした。
それはたちまち、一振りの剣へと姿を変えた。

『彼女』がその剣を無造作に振り上げた。
その剣身を揺らめく不可思議なオーラが包み込んで行く。
そして彼女は振り上げた時と同じく、無造作にその剣を振り抜いた。
その刹那、斬撃と呼ぶのもおこがましい力の奔流が、異常な密度で、三人の勇者――アレル、ダイス、ナイア――達目掛けて襲い掛かるのが見えた。
三人は紙一重でそれをかわし切ったけれど、その力は大地を穿うがち、遥か彼方の丘を吹き飛ばした。
遠くで戦場の片付けを行っていた人々もその異変に気付き、こちらを指差し、何かを叫び出した。


こうして守護者による『審判』が始まった……

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