【改稿版】僕は最強者である事に無自覚のまま、異世界をうろうろする

風の吹くまま気の向くまま

文字の大きさ
52 / 239
第四章 すれ違う想い

52. 結社

しおりを挟む
第017日―2


「あなたはカケル君を助けて、一緒に彼の力の秘密を探りたいのよね?」

ミーシアのその言葉で、ハーミルの中の警戒心が最高レベルに跳ね上がった。
ミーシアは笑顔のまま、言葉を続けた。

「安心して。私達も彼を支えたいと思っている仲間よ。って、突然こんな話をしても信じて貰えないと思うけれど、会ってもらいたい人がいるの」
「私をさらっても、あんまり利用価値無いと思いますけど。剣で切り抜けるか、自害するかですし」
「ふふふ、イクタスの言う通り、気の強いお嬢さんね。でも約束するわ。私達はあなたがカケル君の味方である限り、決してあなたに危害を加えない」

ハーミルはミーシアの目をしばらくの間じっと見つめた後、口を開いた。

「時間は1時間。時間内でも、私がその人物との会見に価値が無い、と判断したらすぐ帰らせてくれる事。これが条件よ」

ミーシアがうなずいた。

「じゃあ、早速案内するわ」


ミーシアはすぐ近くの古民家へとハーミルを案内した。
古民家の扉を開けると、見知った顔がハーミルを出迎えた。

「ようこそ、『結社イクタス』へ。わしが副総裁のイクタスじゃ」
「イクタスさん? こんな所に居たんですね。皆心配していましたよ。急に居なくなるから」

気さくな感じでそう口にしながらも、ハーミルは油断なく、イクタス、ミーシア、そして周囲の様子に視線を巡らせた。
イクタスやミーシアからは、毛先ほどの殺気も感じられない。
この古民家も、外観同様、内部も至って普通の調度品があつらえてあり、罠が仕掛けられている気配もない。
少なくとも、ハーミルの感覚では危険を感じられなかった。
ハーミルはイクタスに話しかけた。

「ところで、結社イクタスって何ですか? ミーシアさんが会わせたかった人物って、あなたですか?」
「残念ながらわしでは無い。おぬしに会わせたいのは、当結社の総裁じゃ。おぬしの知りたい事全て、直接、総裁の口から聞けると思うぞ」

そして奥へ続く廊下を指差しながら、ミーシアにハーミルを案内するよううながした。
ハーミルが、ミーシアについて行くと、廊下の突き当りに扉があった。

「失礼します」
『どうぞ、お客人を中へ』

促されて、ハーミルだけが部屋の中に入った。
後ろで扉が閉まる。
鍵がかけられた気配は無い。
窓の無いその場所は、広目の書斎のような部屋であった。
中央部分には、巨大な半透明のクリスタルが浮遊している。
そしてそのクリスタルの向こう、正面の机には、灰色のローブを目深まぶかかぶった何者かが座っていた。

『ようこそ。貴女あなたとこうして話せる日を心待ちにしていました』

年齢不詳、性別不詳のその何者かは、にこやかに語りかけてきた。


ハーミルには、目の前の人物の年齢、性別を推し量る事が出来なかった。
身に着けている灰色のローブかこの部屋、或いは両方に、何らかの細工が施されているようであった。

「あなたが結社イクタスの総裁さん? どう言ったご用件かしら?」
『話をする前に、これだけは確認しておきたい。まず大前提として、貴女はいかなる事があっても、カケルを守り抜く覚悟をお持ちか?』
「私の望みは彼の望みをかなえる事。それを妨げるものは、例え相手が帝国といえども戦う覚悟よ」

改めてハーミルは、自身の決意を披露した。
ハーミルの言葉に、相手は深く満足しているようであった。

『素晴らしい覚悟だ。やはり貴女なればこそ、大事を話せる』
「大事?」
『17年前、イクタス、エンリルそしてディースの三人が、『彼方かなたの地』への扉を開き、そこに居た守護者を見出したことは、貴女も知っているはずだ』

ハーミルは頷いた。
その話第40話は、北の塔最上階で、イクタス本人の口から聞いた。

『彼等は知的好奇心から、『彼方かなたの地』への扉を開いた……少なくとも、イクタスとディースはそうであった。そして守護者は彼等の要請に答えて、彼等と共に『彼方かなたの地』を去る事を選んだ。最初、彼等と守護者は友好的な関係を結び、守護者は『彼方かなたの地』に蓄えられた莫大な霊力の結晶、霊晶石を大量にこの世界へもたらした。それは本来、この世界の人間には利用不可能な霊力を、一定条件下で利用可能にする物であった』

総裁を名乗るその人物は、ローブの陰から、ハーミルをじっと見つめながら話を続けた。

『ところがエンリルは違った。彼が『彼方かなたの地』へと足を踏み入れ、守護者をそこより連れ出したのは、実は自身の秘めたる野望の為であった。彼は『彼方かなたの地』に蓄えられた霊力と、守護者自身の力を我が物にせんと望んでいた。彼の野望に気付いた守護者は、イクタスと共に彼とたもとかった。彼が霊晶石の力で魔王となった後、イクタスと守護者はこの結社を作った。そして心ある同志達を集め、魔王エンリルから、守護者を守り続ける事にしたのだ』
「あなたは“守護者”……って口にしているけれど、それはカケルの事じゃないわよね? カケルは守護者の力を継承した、そうイクタスさんは話していたけれど、“『彼方かなたの地』から連れ出された守護者”をあなた達は守っているわけよね?」
『我等の目的は、守護者の力を個人の野望に利用される事を防ぐ事。故に、今の我等が守るべき対象は、守護者の力を継承したカケルだ』
「カケルに力を継承させたという、その“元”守護者はどうなったの?」

ローブの陰に隠されているその人物のかおに、幾ばくかの寂しさがともった。

『ある事情からカケルを救うため、守護者はカケルに自身の全て――守護者としての力――を与えた。そして『彼女』は人間になった』
「つまりあなた達は、私もこの結社と協力ないし、結社の一員として、カケルを共に支えていこう、そういうわけね?」
『その通りだ。どうか我等に力を貸して欲しい』

ハーミルは、目の前の人物の見えざるかおをじっと見つめた。

「あなたの話は分かったわ。でも、あなた達がカケルを利用しないと言い切れる? 魔王エンリルのように、野望を隠してないという保証は?」

ローブの下の口元に笑みが浮かんだ。

『さすがは剣聖ハーミル。一筋縄では協力を取り付けられぬか』

そして少しの間を置いて、言葉を続けた。

『実は、私にも初めて人を愛するという感情を知った瞬間があった……まあ、正確には思い出した、と言うべきか……』

唐突に聞こえる話題転換に、ハーミルが怪訝な顔をした。
しかしその人物は、彼女に構わず言葉を継いだ。

『とにかく、精一杯の告白を試みたのだ』

話しながら、その人物が、顔を隠すローブに手をかけた。
そして、それをゆっくりと脱ぎ去っていく。
声が次第に明瞭になり、カケルの中にいたハーミルが、カケルと共に聞いたあの声で、あの言葉がつむがれた。


『私と共に、悠久の時をこの世界で過ごしてみぬか? と」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...