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秋編②『金貨六枚分のきらめき』
第二話「走馬灯オルゴール」⑴
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「待ってました、オータムフェス!」
「見て、買って、食べまくりましょう!」
「……仕入れは?」
洋燈神社のイチョウが色づく頃、今年も洋燈商店街でオータムフェスが開催されていた。
由良はLAMPの備品を調達するため、去年に続き、商店街を訪れた。同行している中林は相変わらずのお祭り気分で、偶然居合わせた真冬と共にはしゃいでいた。
「私、真冬ちゃんと一緒に見て回るので、店長は紅葉谷さんとお願いします!」
「LAMPに似合う、シャレオツな食器を見つけてきますよ! 現役ティーンの底力、ご覧あれ!」
そう二人は言い残すと、買い出しメモ片手に風のように去っていく。人混みにまぎれ、一瞬で姿が見えなくなった。
「……仕事を忘れないか不安だわ」
「大丈夫ですよ、きっと。僕らも楽しみながら探しましょう、添野さん」
由良がため息を吐く横で、紅葉谷はニヘラと笑う。「僕もオータムフェスに行くので」と、自ら荷物持ちを買って出たのだ。
「懐かしいなぁ、オータムフェス。今年こそは秋色インクを使いこなすぞ!」
「珠緒、今年は仕入れているといいですね」
意気込む紅葉谷を横目に、由良は微笑む。
紅葉谷と出会って、ちょうど一年が経つ。
去年のオータムフェスで紅葉谷の〈探し人〉と共に秋色インクを探していた時は、まさか本物とも秋色インクを探す羽目になるとは思ってもいなかった。ましてや、紅葉谷がLAMPの常連客となり、店の買い出しの荷物持ちを頼むことになるなど、想像もつかなかった。
(紅葉谷さん、来年もLAMPに来てくれるといいな。それで今よりももう少し、親しい間柄になっていたらいいのに……)
「って……いやいや、あり得ないから」
「? 何があり得ないんです?」
「ただのひとりごとです。気にしないで下さい」
由良は己の心の声を、自ら否定した。柄にもないことを望み、羞恥心で顔が火照る。
横で聞いていた紅葉谷は不思議そうに首を傾げていた。
(アホか、私は! 紅葉谷さんはお客様、私は一介の店長でしょうが! 今だって、お互いに名字で呼び合うとか、二人で映画観に行くとか、イレギュラーなイベントが起こってるってのに! これ以上、進展させてたまるか!)
二人は目的の品を求め、珠緒が営むアンティークショップLost and Foundを訪れた。
今年のLost and Foundは色鮮やかに塗装された小屋が店舗となっていた。ドアはなく、自由に出入りできる構造になっている。
店内の壁にはおよそ日本では見ることの出来ない色合いとデザインのポンチョが多数飾られている他、珠緒が一年かけて集めた海外の骨董品や古道具の数々が所狭しと並べられていた。個性的な品ばかりだが、意外にも若い女性客達で賑わっていた。
「Hola~。元気してた?」
店主である珠緒はナスカの地上絵柄のポンチョを身にまとい、由良と紅葉谷を出迎えた。地上絵は金の糸で刺繍されており、照明に当たるたびにキラキラと輝く。
相変わらずの間伸び口調だったが、さすが世界中を渡り歩いているだけあって、スペイン語の発音は完璧だった。
「えらく派手な格好ね」
「今年は南米がテーマだから、特注で作ってもらったのー。んで、そちらさんは?」
珠緒は紅葉谷を見て、尋ねる。
「うちの常連の紅葉谷さん。前に、秋色インクを買いにこの店へ来ていたはずだけど?」
「お客さんの顔なんて、いちいち覚えてらんないよー。取引先の人の顔だって、うろ覚えなのに」
「それでよく仕事が成り立ってるわね」
「どや」
「褒めてない」
「見て、買って、食べまくりましょう!」
「……仕入れは?」
洋燈神社のイチョウが色づく頃、今年も洋燈商店街でオータムフェスが開催されていた。
由良はLAMPの備品を調達するため、去年に続き、商店街を訪れた。同行している中林は相変わらずのお祭り気分で、偶然居合わせた真冬と共にはしゃいでいた。
「私、真冬ちゃんと一緒に見て回るので、店長は紅葉谷さんとお願いします!」
「LAMPに似合う、シャレオツな食器を見つけてきますよ! 現役ティーンの底力、ご覧あれ!」
そう二人は言い残すと、買い出しメモ片手に風のように去っていく。人混みにまぎれ、一瞬で姿が見えなくなった。
「……仕事を忘れないか不安だわ」
「大丈夫ですよ、きっと。僕らも楽しみながら探しましょう、添野さん」
由良がため息を吐く横で、紅葉谷はニヘラと笑う。「僕もオータムフェスに行くので」と、自ら荷物持ちを買って出たのだ。
「懐かしいなぁ、オータムフェス。今年こそは秋色インクを使いこなすぞ!」
「珠緒、今年は仕入れているといいですね」
意気込む紅葉谷を横目に、由良は微笑む。
紅葉谷と出会って、ちょうど一年が経つ。
去年のオータムフェスで紅葉谷の〈探し人〉と共に秋色インクを探していた時は、まさか本物とも秋色インクを探す羽目になるとは思ってもいなかった。ましてや、紅葉谷がLAMPの常連客となり、店の買い出しの荷物持ちを頼むことになるなど、想像もつかなかった。
(紅葉谷さん、来年もLAMPに来てくれるといいな。それで今よりももう少し、親しい間柄になっていたらいいのに……)
「って……いやいや、あり得ないから」
「? 何があり得ないんです?」
「ただのひとりごとです。気にしないで下さい」
由良は己の心の声を、自ら否定した。柄にもないことを望み、羞恥心で顔が火照る。
横で聞いていた紅葉谷は不思議そうに首を傾げていた。
(アホか、私は! 紅葉谷さんはお客様、私は一介の店長でしょうが! 今だって、お互いに名字で呼び合うとか、二人で映画観に行くとか、イレギュラーなイベントが起こってるってのに! これ以上、進展させてたまるか!)
二人は目的の品を求め、珠緒が営むアンティークショップLost and Foundを訪れた。
今年のLost and Foundは色鮮やかに塗装された小屋が店舗となっていた。ドアはなく、自由に出入りできる構造になっている。
店内の壁にはおよそ日本では見ることの出来ない色合いとデザインのポンチョが多数飾られている他、珠緒が一年かけて集めた海外の骨董品や古道具の数々が所狭しと並べられていた。個性的な品ばかりだが、意外にも若い女性客達で賑わっていた。
「Hola~。元気してた?」
店主である珠緒はナスカの地上絵柄のポンチョを身にまとい、由良と紅葉谷を出迎えた。地上絵は金の糸で刺繍されており、照明に当たるたびにキラキラと輝く。
相変わらずの間伸び口調だったが、さすが世界中を渡り歩いているだけあって、スペイン語の発音は完璧だった。
「えらく派手な格好ね」
「今年は南米がテーマだから、特注で作ってもらったのー。んで、そちらさんは?」
珠緒は紅葉谷を見て、尋ねる。
「うちの常連の紅葉谷さん。前に、秋色インクを買いにこの店へ来ていたはずだけど?」
「お客さんの顔なんて、いちいち覚えてらんないよー。取引先の人の顔だって、うろ覚えなのに」
「それでよく仕事が成り立ってるわね」
「どや」
「褒めてない」
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