神様になったTS妖狐はのんびり生活したい~もふもふ妖狐になった新人神様は美少女となって便利な生活のため異世界と日本を往復する~

じゃくまる

文字の大きさ
26 / 180

第26話 妖都へ

しおりを挟む
 目の前で土下座をする初老の男性は前村長さんなのだという。
 今はボクの目の前。正確にはボクの前でボクを守るように立ちはだかるミレの前で頭を下げている最中だ。

「バカ息子が何かをやらかしたと聞いたので嫌な予感がしていましたが、まさかこれほどのことをやらかすとは……」
 そう話す前村長さんの声はだんだん震えている。
 一体どうしたというのだろうか。

「えっと、とりあえず顔を上げてください。それと説明を」
「かたじけのうございます。嫌な予感は正しかったようです。この目で見てわかりました。遥様は妖都に連なるお方だと」
「妖都?」
 毎度毎度出てくるこの名称。ボクは知らない。
 もしかしてお母さんが管理しているっていう場所の話なのかな。

「ボクの変化、ばれてます?」
「うっすらと、力の奔流が見える程度ですが。だからあれほど注意して相手をよく見ろと口を酸っぱくして言ってきたというのに……」
 前村長さんはとても悔しそうだった。

「ぷはぁ。と、父さん。ど、どういうことですか」
「ばかもん!! 危うく我らが滅びるところであったんだぞ! 本当にこやつは……。そうだ。サスロよ。お前、妖都のどこまで入れる?」
「え? 急に何ですか? ちゃんと市街門まで行けます」
「妖都の衛兵に見抜けても、わしには見抜けなかったか……」
 きょとんとするサスロさんと歯噛みする前村長さん。
 どうやら二人には大きな認識の差があるようだった。

「サスロ。今日限りでお前の職を解く。しばらくはわしが代行し、時期が来たらカペルに譲るものとする」
「ど、どういうことですか、父さん!」
「わしが知らんとでも思ったのか! カペルたちが堕落した者に襲われた件。それにお前が一枚嚙んでいることを」
「!?」
「ど、どういうことですか村長! いえ、サスロさん」
「い、いや。これには……」
「言い訳無用。お前が今回の襲撃を前にやつらに協力を求めたことはわかっている。妖精銀一箱を横流しするために輸送ルートを教えたこともな」
 そう言われてふと思い出したことがあった。
 
「そういえば、金貨を持ったゴブリンと錆びてるけど鉄装備を持っていたゴブリンを倒しました。破壊された馬車の近くで」
「少なくともこのあたりの堕落した者は鉄製品などもってはおりません。どこからか調達したのでしょう」
 前村長さんはそう断言した。

「くっ……。くぅ……」
 観念したサスロさんはどこかに運ばれていく。

「さて」
 前村長さんはボクに向き直ると、改めて頭を下げる。

「妖精銀の件、聞き及んでおります。わしはここを離れていても状況を教えてくれる者がおりますゆえ。どうせですから、一緒に妖都へ赴きませぬか? 納品もありますれば」
 前村長さん改め、新村長さんはそうボクに提案した。

「は、はい。それは構いません。報酬に妖精銀がもらえるなら。ミレたちもミリアムさんもいい?」
「もちろんです」
 ミリアムさんはそう言い、ミレたちも頷いた。

「そうだ、新村長さんのお名前は?」
 ずっと聞けていなかったのでもやもやしていたんだよね。

「ガルドと申します。サスロの父でございます」
 ガルドさんはそう言うと、再び頭を下げた。

「ボクは御神楽遥(みかぐらはるか)です。よろしくお願いします」

 しばらく積み込み作業が続くとのことなので、妖都への輸送の準備が整うのを待つ。
 準備が終わるとガルドさんに案内されて、村長宅裏手にある石造りの鳥居の前にやってきた。

「いつもでしたら宝玉を使うのですが、資格ある者であればこの球に手を翳すことでも開くと聞いております」
 大きな石鳥居の横に小さな球の入った灯篭があった。
 ボクはその球に手を当ててみる。

 ボクが球に触れた瞬間石鳥居の間の空間が揺らぎ、何やら門のようなものが映し出される。

「おぉ……。言い伝えは本当でしたか!!」
 ガルドさんは感極まったような声で言った。

「す、すごい……」
 少なくとも日本では見たこともない現象だ。
 ゲームでは見たことあるんだけどね。
 
「さぁ参りましょう。皆様方は馬車にお乗りください」
 ガルドさんに案内され、ボクたちは馬車に乗り込んだ。

 馬車が動き、鳥居に入り始めると周りが暗くなっていく。
 その様子はまるで明かりのないトンネルに入ったかのような光景だった。
 しばらく馬車が進むと徐々に明るくなりはじめ、空気が一変する。
 先ほどまでは森の匂いに満ちた場所から入り無臭の場所を通ったが、今は香料の匂いのする場所にいる。
 こうも一気に匂いが変わるのかとボクは思った。
 なんというか、すごい。

「ようこそ、【武蔵】の首都【妖都伏見】へ。荷物の検査と資格の確認をしますのでそのままお待ちください」
 鳥居を出てすぐの検問所のようなところで、当世具足を身に付けた衛兵さんに声をかけられる。

「お願いします。こちら、遥様とミリアム様、フェアリーノーム様たちは初入国となります」
「わかりました。ではまずガルドさん以外の方の確認と資格の発行をいたします。ガルドさんはしばらくお待ちください」
「わかりました。ところで、我が愚息はどこまで入れましたか」
 ガルドさんは衛兵さんに恐る恐る尋ねる。

「サスロさんですか。彼は都市門までの資格しか発行できませんでしたので、そちらでの荷の受け渡ししか行っておりませんね」
「そう、ですか」
 ガルドさんは再度落胆してしまった。

「隊長! 大変です!」
「どうした、なにがあった」
「こちらをご覧ください」
 ボクの検査を行っていた衛兵さんが何やら慌てた様子で隊長という人を呼ぶ。
 一体どうしたんだろう?

「こ、これは……! 至急、元首に連絡を! 急げ!!」
「申し訳ありません。皆様、このまましばらくお待ちください」
 何か問題があったらしく、ボクたちは転送門で待機することになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...