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第75話 計画を進めよう

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 傲慢のエルガルドは能力を失い、力を失った。
 今後、この世界を闘いと忠誠の中で生きていくのは非常に難しくなるだろう。
 誰もを愛し大事にせよとは誰も言っていないのだ。
 ただ下手な差別をしないで、知るべきことを知らなければいけない。
 ミレイさんは去り際に、彼らにそう言い残していった。

 キャンプは撤去され、騎士たちはそれぞれの場所へと帰っていった。
 去り行く大神殿の騎士たちは羨ましそうにミレイさんの背中を見送り、難を逃れた王国騎士たちはエルガルドを汚れた者として扱いながら荷車に押し込んでいった。
 三者三様というかなんというか……。

「ただいま戻りました」
「おかえりなさい。一部始終見てましたけど、とりあえずお疲れ様でした」
 帰ってきたミレイさんとミレたちに慰労の言葉を送っていると、ミカとミナが彼女たちに紅茶とお菓子を用意していた。
 とりあえず小休止だ。

「食べながらでいいのでこれからのことを伝えますね」
「はい」
 紅茶を口にしながらミレイさんが頷く。
 ちなみに、リディさんに関しては今は自由にしていてほしいので、好きに遊んでもらっている。

「今後この地に街を作るわけですが、まずは新世界から資材を持ってこようと思います」
「この世界の素材は使わないのですか?」
「はい。そちらに関しては街ができ次第、住人たちに利用してもらうつもりです。新世界に住む人はしばらく限定しようと考えていますので」
 ある程度の開拓はするが、基本的な資材は新世界から調達する予定だ。
 街の近くに村を作ったり小屋を作るなら周囲の素材を利用してもらうつもりだし、過度な伐採が起こるようなら調達先を指定しなければいけなくなると思う。
 資源は有限なのだ。

「あの」
「どうしました? ミレイさん」
「新世界ですが、私たちも見ることはできるのでしょうか」
 ミレイさんがおずおずと手を挙げながら質問を投げかけてきた。
 
「はい。可能です。小休止の後、現地に行こうと思っています」
 というわけで、ほとんどミレイさんとしか話していなかったが、小休止を終えると新世界へと移動した。




 新世界に移動したボクたちが最初に見た光景、それは徐々に完成しつつあるボクたちの拠点の姿だった。
 といっても棟数は多くないのだが、人海戦術と重機がなくてもサクサクと進む重量物の運搬と搬入で基礎工事がどんどん進んでいっているのだ。
 建物がない場所でも、すでに基礎ができているのだから驚きだ。
 
「新世界、不思議な空気に満ちていますね」
 ミレイさんは深呼吸しながら異世界の空気を確認していた。
 
「あー! もふもふー!!」
「わっ、きゃー」
 リディさんが突然駆け出したので、何事かと思った見てみると、妖狐族の従者たちの尻尾に突撃しにいっていた。
 もふっという感じで尻尾に埋まり、妖狐族の少女たちが悲鳴を上げている。

「こら、リディ!」
 さすがのミレイさんも怒ったようだ。

「ふわふわでもふもふなものに突撃したくなる気持ちはわかりますから」
「私も瑞歌さんも人間形態しかとっていませんので、ああいう尻尾はないですしね」
「私は自分になくとも、お姉様の尻尾に埋もれるから大丈夫ですわ」
 ミリアムさんはあまりケモ耳に興味はなさそうだけど、瑞歌さんは他人の尻尾には興味津々な様子だ。
 そういえばマルムさんたちはどこにいるんだろうか。

「あ、シーラ。マルムさんたちはどこ行ったか知りませんか?」
 近くでおやつの準備をしていたシーラに声を掛けてみる。

「あ、マスター。おかえりなさいませ。マルムさんたちは少し遠くの調査に出ています。まだ帰還までは時間がかかると思いますので、帰還したらお知らせします。それと、新規の方ですか? ようこそ、いらっしゃいませ」
 ミレイさんたちを見たシーラがぺこりと挨拶をする。

「フェ、フェアリーノーム様がしゃべってる!?」
 ミレイさんはたいそう驚いていた。
 まぁそうですよね。

「フェアリーノームは向こうの世界ではしゃべれないんです。理由は色々あるようですけどね」
「はー。そうなんですね……」
 ミレイさんは驚きすぎたせいか、お嬢様のような雰囲気が一気になくなってしまった。
 もしかしたらこっちが素なのかもしれない。

「この場所が新世界の拠点となる予定です。この世界にはまだ人類がいないことがわかっていますが、魔物のような動物のような、まぁ獰猛な生き物がいることだけはわかっています」
 魔法要素はあるのに人類がいないせいで古代人の施設もない。
 少し寂しいからダンジョンでも作ろうかな?

「す、すごいです……。私たちの世界よりも圧倒的にすごいです!!」
 何がすごいのかわからないけど、ミレイさんには何か違いを感じられているようだ。
 まぁ、魔素というかマナは濃いめだと思うけど。
 エーテルもあることだし。

「あっちの世界では感じられない力のようなものが、この世界にはあふれているんです。具体的にはわかりませんけど……」
 長く向こうの世界にいたおかげか、違いを敏感に感じられるようだ。
 ボクはそういうものとしか捉えられないけど。
 
「世界の微妙な違いかぁ。ボクにはいまいち感じ取れないのが残念です」
「主は主ですから。作った方が違和感を覚えないのは当然です」
「逆に、変なものが来ればすぐわかるようになりますわ。遥お姉様」
 ミリアムさんたちにそう言われるとなんとなく納得できそうだ。
 特に瑞歌さんは違和感の塊だったしね。
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