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第85話 ホブゴブリンにはご注意を
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この森にはゴブリン族が非常に多い。
それはつまりそれ以外の種族が少ないともいえた。
おそらく青肌一族の村より南東に行くほど、ほかの魔物に出会う可能性があるのだろう。
「影よ、貫け」
「ゲギャー!?」
村周辺にはゴブリンはあまり出てこない。
だがそれよりもずっと北に移動すると、突如としてゴブリンの数が増えるのだ。
これはおそらくミレやミリアムさんの結界の作用だと思われる。
「これでざっと20体ほどですか。ずいぶんいますね」
村から出て最初に出会った10体のゴブリンを倒した後、なんだかなんだで20体ほどのゴブリンと出会うことになった。
当然前と違って余裕で勝てるようになったのだが、それでもこう多いとうんざりしてしまう。
戦利品は『汚れた』とか『錆びた』とか『刃こぼれした』とかそういうものばっかりなのだ。
「え~っと、とりあえず『錆びた』ものと『刃こぼれした』ものはきれいにしても意味がないので2個1くらいでインゴットにします」
空間収納に放り込んで『アイテムクリエイト』スキルでインゴットにしていく。
おかげで鉄材関連のインゴットが結構増えてきた。
しかし、ゴブリンたちはこの装備をどこで入手しているのだろうか?
「ゴブリンって鍛冶能力あるんでしょうか」
ゴブリンの鍛冶屋というとイメージがわかない。
「手に入れた武具を見る限りでは人間やドワーフによる作品ではないことがわかります。形はいびつですし完全に刃になっていないものもありました。おそらく見様見真似でやっているのではないでしょうか」
ボクたちの後ろを歩くミリアムさんがそう分析した。
「ミリアムさんは魔物についてはあまり?」
「えぇ。私は詳しくはありません。精霊自体が魔物に興味をもてませんので」
「そうなんですか?」
うすうす気が付いていたけど、精霊は興味を抱く対象が限定される傾向にあるようだ。
まぁ庇護したところで、このゴブリンたちが祈ったり崇めたりする気はしないけど……。
「どこの世界でもそうですけど、魔物の行動というのはワンパターンですの。それに興味を抱けというのも無理な話ですわ。例えば、朝から晩まで石を積み上げる作業を10年20年と繰り返す。そんな者を見ていて興味を抱けるか? という話ですわね」
賽の河原みたいな話でもなければ興味を抱くことはおそらくなさそうだ。
これで最後に、『すごい大作を完成させた』というなら話は別だろうけど。
「なるほど。あ、待ってください。前方にゴブリンがいますね。大柄なゴブリンっぽいのも3体一緒にいます」
「ホブゴブリンですわね。下級ゴブリンの指示役みたいなものだと聞いてますわ」
「話を聞いた限りですと、いわゆる上位種というやつのようです」
「ホブゴブリンは繁殖力の強いオスの個体ときいたことがあります。どんな生物とでも性交をするとか」
「うへぇ~……」
話を聞いているだけでも気持ち悪い。
でも同時に、ゴブリン社会の階級格差が見えたような気もした。
「ハイゴブリン族とは本当に違うんですね」
ガルドさんたちのことを思い出すが、明らかにゴブリンとは容姿が異なっていた。
まぁガルドさんたちがゴブリンのことを蔑称で呼ぶことを考えると、違う道を辿った存在ということになるのだろうけど。
「少し様子を見てみます。巣が近いかもしれませんからね。攻撃は一旦待ってください」
「わかりました。では皆様の気配と音を消します」
ミリアムさんは軽く手を振るとボクたちに何かの力が働いたことが分かった。
おそらく膜のようなものを張ったのだと思う。
ボクたちはそのままホブゴブリンたちの様子を見るために近づいて行った。
ちなみにミレたちは遊撃中なので今はいないが、ホブゴブリンを観察しているときに乱入してくる可能性もある。
「何かを運んでいる? キラキラ輝くなにか……」
「金銀財宝、そして宝石ですわね」
「鎧や剣、斧なんかもありますね」
「あの麻袋は……コインでしょうか」
「血の付いた武器を見る限りですが、何かを襲った後のようです」
現在目の前を移動しているゴブリンたちは全員で何かを運んでいた。
あれらはどこから運んできたのだろう。
「人も運んでいるようですね。でも数は多くない。全員男性? 薄汚い格好で革の防具をつけている……」
「あぁ、盗賊ですわね。人里離れた場所に拠点を持っていたのでしょうね」
「なかなか強そうですが、負けたということですか。というか結界内を通っている?」
「魔物は出入りできますからね。連れていかれてるので通れているのでしょう」
ところで、このゴブリンたちは男性を運んでどうしようというのだろう?
「あの男性たちはどうなるんですか?」
好奇心からそう尋ねると、恐ろしい回答が返ってきてしまった。
「ホブゴブリンは生殖行為以外にも発散のためにほかの生物を誘拐することがあります。あの盗賊たちはそのためでしょうね」
「は?」
思わず変な声が出た。
つまりそれはそういうことなわけだ。
「こわっ!? こわーっ!?」
たとえ盗賊であっても、ここは助けなければいけないだろう。
ボクの心の平穏と彼らのお尻のために。
それはつまりそれ以外の種族が少ないともいえた。
おそらく青肌一族の村より南東に行くほど、ほかの魔物に出会う可能性があるのだろう。
「影よ、貫け」
「ゲギャー!?」
村周辺にはゴブリンはあまり出てこない。
だがそれよりもずっと北に移動すると、突如としてゴブリンの数が増えるのだ。
これはおそらくミレやミリアムさんの結界の作用だと思われる。
「これでざっと20体ほどですか。ずいぶんいますね」
村から出て最初に出会った10体のゴブリンを倒した後、なんだかなんだで20体ほどのゴブリンと出会うことになった。
当然前と違って余裕で勝てるようになったのだが、それでもこう多いとうんざりしてしまう。
戦利品は『汚れた』とか『錆びた』とか『刃こぼれした』とかそういうものばっかりなのだ。
「え~っと、とりあえず『錆びた』ものと『刃こぼれした』ものはきれいにしても意味がないので2個1くらいでインゴットにします」
空間収納に放り込んで『アイテムクリエイト』スキルでインゴットにしていく。
おかげで鉄材関連のインゴットが結構増えてきた。
しかし、ゴブリンたちはこの装備をどこで入手しているのだろうか?
「ゴブリンって鍛冶能力あるんでしょうか」
ゴブリンの鍛冶屋というとイメージがわかない。
「手に入れた武具を見る限りでは人間やドワーフによる作品ではないことがわかります。形はいびつですし完全に刃になっていないものもありました。おそらく見様見真似でやっているのではないでしょうか」
ボクたちの後ろを歩くミリアムさんがそう分析した。
「ミリアムさんは魔物についてはあまり?」
「えぇ。私は詳しくはありません。精霊自体が魔物に興味をもてませんので」
「そうなんですか?」
うすうす気が付いていたけど、精霊は興味を抱く対象が限定される傾向にあるようだ。
まぁ庇護したところで、このゴブリンたちが祈ったり崇めたりする気はしないけど……。
「どこの世界でもそうですけど、魔物の行動というのはワンパターンですの。それに興味を抱けというのも無理な話ですわ。例えば、朝から晩まで石を積み上げる作業を10年20年と繰り返す。そんな者を見ていて興味を抱けるか? という話ですわね」
賽の河原みたいな話でもなければ興味を抱くことはおそらくなさそうだ。
これで最後に、『すごい大作を完成させた』というなら話は別だろうけど。
「なるほど。あ、待ってください。前方にゴブリンがいますね。大柄なゴブリンっぽいのも3体一緒にいます」
「ホブゴブリンですわね。下級ゴブリンの指示役みたいなものだと聞いてますわ」
「話を聞いた限りですと、いわゆる上位種というやつのようです」
「ホブゴブリンは繁殖力の強いオスの個体ときいたことがあります。どんな生物とでも性交をするとか」
「うへぇ~……」
話を聞いているだけでも気持ち悪い。
でも同時に、ゴブリン社会の階級格差が見えたような気もした。
「ハイゴブリン族とは本当に違うんですね」
ガルドさんたちのことを思い出すが、明らかにゴブリンとは容姿が異なっていた。
まぁガルドさんたちがゴブリンのことを蔑称で呼ぶことを考えると、違う道を辿った存在ということになるのだろうけど。
「少し様子を見てみます。巣が近いかもしれませんからね。攻撃は一旦待ってください」
「わかりました。では皆様の気配と音を消します」
ミリアムさんは軽く手を振るとボクたちに何かの力が働いたことが分かった。
おそらく膜のようなものを張ったのだと思う。
ボクたちはそのままホブゴブリンたちの様子を見るために近づいて行った。
ちなみにミレたちは遊撃中なので今はいないが、ホブゴブリンを観察しているときに乱入してくる可能性もある。
「何かを運んでいる? キラキラ輝くなにか……」
「金銀財宝、そして宝石ですわね」
「鎧や剣、斧なんかもありますね」
「あの麻袋は……コインでしょうか」
「血の付いた武器を見る限りですが、何かを襲った後のようです」
現在目の前を移動しているゴブリンたちは全員で何かを運んでいた。
あれらはどこから運んできたのだろう。
「人も運んでいるようですね。でも数は多くない。全員男性? 薄汚い格好で革の防具をつけている……」
「あぁ、盗賊ですわね。人里離れた場所に拠点を持っていたのでしょうね」
「なかなか強そうですが、負けたということですか。というか結界内を通っている?」
「魔物は出入りできますからね。連れていかれてるので通れているのでしょう」
ところで、このゴブリンたちは男性を運んでどうしようというのだろう?
「あの男性たちはどうなるんですか?」
好奇心からそう尋ねると、恐ろしい回答が返ってきてしまった。
「ホブゴブリンは生殖行為以外にも発散のためにほかの生物を誘拐することがあります。あの盗賊たちはそのためでしょうね」
「は?」
思わず変な声が出た。
つまりそれはそういうことなわけだ。
「こわっ!? こわーっ!?」
たとえ盗賊であっても、ここは助けなければいけないだろう。
ボクの心の平穏と彼らのお尻のために。
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