神様になったTS妖狐はのんびり生活したい~もふもふ妖狐になった新人神様は美少女となって便利な生活のため異世界と日本を往復する~

じゃくまる

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第87話 浄化と転生

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 盗賊のおじさんたちを下僕化してしまった瑞歌さんは置いといて、ゴブリンたちが運んでいた武具や財宝を回収する。
 金銀財宝とはよく言ったもので、キラキラしたものをたくさん回収することができた。
 紋章のようなものが入ったものは1つもなく、名前などもない。

『ミレ、ちょっとこっちに合流しにきてください』
 戦利品の確認をしながらミレにテレパシーを送る。
 こうしておけばミレたちはすぐに駆けつけてきてくれる。

 それからしばらく時間を置いた後、周囲にミレたちが転移してきたのが見えた。
 どうもフェアリーノームには、仲間の元へ転移できるスキルがあるようなのだ。
 このスキルのおかげでフェアリーノームたちは苦戦したとしても援軍をすぐに得られるらしい。
 便利すぎません?

「あれ? ミレ、その肩に担いでる袋は何です?」
 よく見てみると、ミレとミカとミナ、それぞれの肩にも同じようなとても大きく膨らんだ袋が載っていた。
 材質は、麻かな?

「何かの戦利品?」
 ボクが問いかけると、ミレはこくんと頷く。
 ゴブリンにでも遭遇したのかな? そう思っていると袋を下ろして中身を取り出し始めた。
 中から出てきたのは大量の金銀銅貨と武器防具やアクセサリー、それから宝石とよくわからない水晶や魔法陣のようなものが描かれた道具の数々だった。

「これどこから持ってきたんです?」
 そう聞くと、ミレたちはゴブリンたちが向かっていたと思われる場所と同じ方向を指した。
「巣……? 案内してください」
 ミレにそうお願いすると、こくんと頷いてミレたちが歩き出した。

「ミリアムさん、瑞歌さん、千早さんミレイさん行きましょう。盗賊さんたちはとりあえずついてきてください」
「わかりました」
「わかりましたわ」
「わかりました~」
「はい」
「へ、へい」
 さて、移動している間に盗賊さんたちをどうするか考えておこう。

 ◇

 ミレたちに案内されて歩くことしばらく、何やら木と藁で組まれた粗末な小屋がたくさん見えてきた。
 周りにはたくさんのゴブリンの死体がある。
 どうやらここがゴブリンの集落だったようだ。

「ミレたち、暴れすぎてませんか?」
 大事件が起こった後の廃墟集落がそこに存在していた。
 見ると、ミレたちはそっぽを向いたりして誤魔化すような仕草をしている。
 
「とりあえず、財宝類はここに運び込まれていたってことですね」
 先ほど渡された袋の中身はすべて空間収納に保管してある。
 よくもまぁこんなに集めてきたものだ……。

 さすがに魔物といえどこのままにしておくのはなんだか忍びない。
 死体は一か所に集め火葬にし、神社で祈るように手を合わせて次の生を祈った。
 すると不思議なことに、空からキラキラと輝く薄い玉のようなものがふわりふわりと降りて来たのだ。

「なんでしょう?」
「これは、魂ですね。純化されています」
「初めて見ました……」
 ボクがそのきれいな玉を見ながら呟くと、ミリアムさんが補足してくれた。
 ミレイさんに至っては感嘆の声を漏らしている。

「魂、ですか?」
「はい。とはいえ、魔物の魂が純化されたものですので、妖精や精霊にしか転生できませんが」
「なるほど。では一時的に集めておきましょう。瑞歌さん管理お願いしていいですか?」
「えぇ。任せてくださいまし、遥お姉様」
 瑞歌さんは嬉しそうに微笑みながら純化されたいくつもの魂を集めていった。
 これは新世界で転生させるようにしよう。

「集落は焼き払ってください。その後は碑を建て結界を張りましょう。魔物除けにもなりますから」
 魔物が集落を作るということは何かしらに使える場所なのかもしれない。
 ボクたちで確保しておいて、あとで活用しよう。

「姐さんたちはいったい何者なので……」
 今まで黙ってついてきていた盗賊のおじさんの一人がそう口に出した。

「ん~。そうですね……」
「遥お姉様、答える前に条件を課しましょう」
「条件、ですか?」
「えぇ」
「わかりました。お任せします」
「ありがとうございます」
 瑞歌さんには何か妙案があるらしい。
 なら任せてみようかな?

「お前たちには本来知ることのできない情報を知る権利を与えましょう。ですが……」
 瑞歌さんはそう言い、一呼吸置いた。

「それには条件としてお前たちはその薄汚い今の生を終える必要がありますの」
 瑞歌さんがそう言った瞬間、盗賊のおじさんたちはざわめいた。
 言ってみれば死刑宣告だ。

「こ、殺すってことで!?」
「そんな……」
「どっちにしたって突き出されたら縛り首か斬首だ」
「で、でもよぉ」
「黙りなさい」
 瑞歌さんはざわめく盗賊のおじさんたちを一括する。
 途端にみんな静かになってしまった。
 よく調教されていますね……。

「別に死んで地獄へ行けと言ってるわけではありませんわ。お前たちはここで一度死に、お姉様のお力で純化され、新たな身体に転生してもらうつもりですわ。死ぬまでこき使われた挙句、死後に地獄へ落とされるよりはマシではなくて?」
「……」
 瑞歌さんの言葉はおそらくものすごい譲歩したものだろう。
 でも、死ぬことを受け入れられる人間なんているはずがない。
 だから、とても残酷な言葉だと思う。

「……。わかりやした。その提案を受け入れさせていただきやす」
「お、俺も……」
「俺だって」
「死ぬのは怖いけどよ、死んだ後に地獄へなんて言われたらよ……」
「盗賊稼業やってるときは楽しかったつもりだけど、こうなっちまったらそれを選ぶしかねえよな」
「姐さん、やり直せるんですよね?」
「えぇ。保証しますわ」
 盗賊のおじさんたちの一大決心を、ボクでも見惚れそうな微笑みで肯定する瑞歌さんがいた。

「たのんます」
 その発言を最後に、瑞歌さんの黒い影によって盗賊のおじさんたちは全員いなくなった。

「遥お姉様、これを」
 そう言って渡されたのは薄汚れた魂だった。

「わかりました。すぐにやりましょう」
 こうして受け取った魂を祈ることで浄化した。
 浄化された魂は純化された魂となり、きれいなものになっている。

「あとはこの魂の入れ物ですが……」
「であれば、私がいくつか自作した精霊の魂の受け皿を使いましょう。その魂分はあるはずです」
 悩んでいるとミリアムさんからそんな提案があった。
 いつの間に作っていたんだろうか? でもこれは渡りに船だ。

「わかりました。それでお願いします」
「はい、主。ですが、人間の魂である分定着しづらい可能性があります。数滴でいいので主の血をいただけますか?」
「ボクの血を使うと妖狐族になりますよ?」
「構いません」
 どうやらミリアムさんは彼らを妖狐族にするつもりのようだ。

「わかりました。どうぞ」
 そう言って数滴の血を渡すと、「ありがとうございます」と言いながら受け取った。

 それからミリアムさんは空間収納のようなものから魂分の少女の身体を取り出した。
 その少女たちの身体に少し血を与える。
 すると恐ろしいほどの変化で彼女たちの身体は妖狐族の身体へと変わってしまった。

「どうしてこんなに変化が早いんですか?」
「精霊の身体は人間の身体と違って適応力が違うのです。なのでこのようにそれに合った体へとあっという間に変化します」
 どうやら、人間の体の構造とは根本的に違うようだ。
 
「主、魂の受肉をお願いします。身体に1つ1つ魂を重ねていってください」
「はい。いきます」
 ミリアムさんの指示通りにボクは魂を重ねていく。

「っ!」
 息を飲むような音が後ろから聞こえたので見てみると、ミレイさんが口元を抑えて涙を流していた。
 千早さんはやれやれといった感じでハンカチを手渡す。

「聖職者には感じ入るものがあるのでしょう。これは人にはできない神の御業の1つなのですから」
「なるほど」
 なんとなく納得しつつ、すべての作業を終えた。

「主、運命神でもある主の名の元に、彼ら、いえ、彼女たちに新たな運命を与えてください」
「あ、は、はい」
 よくわからないものの、とりあえずやってみることにする。

「御神楽遥の名の元に、汝らに新たな運命を与える。これより汝らは【妖狐族】として仕える様に」
 そう宣言した瞬間、少女たちの身体から光が立ち上った。
 そして、彼女たちが起き上がったのだ。

「これにて転生完了です」
「さすがですわ、遥お姉様」
「すごいです! 遥様ばんざーい!!」
「あぁ。私はここに来られて、本当に良かった……」
「終わったのかな? ふぅ、よかった」
 何とも締まらない終わり方だが、無事にすべてが終わったらしい。
 座り込んだボクの頭をミレたち3人がよしよしと撫でてくれた。

「もう。くすぐったいですよ」
 でもなんだか少し嬉しい気分だった。
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