神様になったTS妖狐はのんびり生活したい~もふもふ妖狐になった新人神様は美少女となって便利な生活のため異世界と日本を往復する~

じゃくまる

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第155話 ヒンメスさんとアルテ

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 今ボクは旧世界側、つまり最初に降り立った世界に来ている。
 場所はアルテ村の神殿区画だ。
 
 今回はアキとミレと一緒にアルテ村を散歩する計画を立てたのだが、最初に神殿区画に降り立ったせいか、察知したヒンメスさんが慌ててやってきて、自ら案内を申し出てきてしまった。
 でも、悪いからということで一旦は丁重にお断りしたものの、やはり問題があるとかでヒンメスさんもついてくることが決定してしまう。
 
 正直ヒンメスさんは嫌いじゃないのだけど、イケメンの美丈夫なだけあって非常に目立つ。
 そうなると、自然とボクたちも目立ってしまうことになるのだ。
 注目されるのは好きじゃないんですよね……。

「あらヒンメス様、こんにちは。今日は可愛らしい子を連れていらっしゃるんですね? お子様ですか? あと、フェアリーノームが一緒にいるなんて珍しいですね」
 商店が集まった通りを歩いていると、店主の年配女性にそのように声をかけられた。

「あはは。そうですね。この子はとても大切な友人の子でして……」
 ヒンメスさんは苦笑しつつそのように紹介した。
 でも、ヒンメスさんの大事な友人って誰なんだろう?

「ヒンメス様のご友人と言うと、勇者様でしたっけ? おとぎ話に載っていますよね」
「えぇ、雄一郎ですね。彼の娘なんですよ」
「まぁそうなんですか? 勇者様はお姿を消されたと聞いてましたけど」
「まぁ……。それでは私たちは他も見て回りますのでもう行きますね」
「はい、またいらっしゃってください」
 ヒンメスさんはそう言うと年配の女性店主の元から立ち去る。

「申し訳ありません。とっさに友人の子だなんて嘘を吐いてしまいまして……」
 何を思ったのか、ヒンメスさんはボクに頭を下げ謝ってきた。

「いえ、大丈夫です。それより、雄一郎と聞こえたのですが……」
「あぁ、雄一郎ですね。前代の勇者で異世界から来た若者でした。とても勇敢でさわやかで、礼儀正しくそして強い。最後には女神様と結ばれこの世界を去った、伝説的な青年です。そして私の大切な友人でもあります」
 雄一郎について語るヒンメスさんは、とても誇らしそうだ。
 しかし、それが本当ならボクは伝えなければいけないことがある。

「ヒンメスさん。その、隠しているわけじゃないのですが……」
「はい? どうかなさいましたか?」
 ボクの顔を覗き込んでくるヒンメスさん。
 ボクは咄嗟にミレたちの顔を見る。
 するとミレがこくんとうなずく姿が見えたのだ。
 どうやら話せってことらしい。

「ええっと、その……。女神様と結婚した雄一郎なんですが……」
「はい」
「ぼ、ボクの父です……」
「な、なんですって!?」
 ボクも知らなかったことだが、お父さんにはこの世界に友人がいたようだ。
 でも、そんな話は一回も聞いたことがない。
 どうせなら教えてくれてもよかったのに……。

「そんな、まさか!? あぁいえ、そうですよね。女神である遥様のご家族……。そうでしたか、すっかり失念しておりました……。いえでも、そうですか。雄一郎は元気ですか?」
 混乱するヒンメスさんだが、辛うじてボクに尋ねる。
 よっぽど衝撃が大きかったのだろう。

「はい、元気です。そうですね……。ヒンメスさんには新世界の市民権を与えますので、父が来ることがあったら会ってあげてください」
「なんと……。ありがとうございます」
 ボクの配慮で少しでも再会できる機会が増えるといいな。
 たぶんだが、お父さんは新世界には来てもこの世界には来ないだろうから。

「しかし、お父さんに友達がいたとは驚きました。なんとなくいなそうなイメージがあったので」
 とはいうものの、ボクはお父さんの交友関係についてはまったくわからないのだが。
 思い返せば、遊びに行くって言っていたこともなかったと思う。
 家族で出かけたことはあるけど。
 そんな、いつでもそこにいる父が当たり前だったから、ボクはそう思い込んでいたのかもしれない。

「まぁ詳細は伏せますが、一緒に色々なやんちゃをしたものです。今思い出すとさすがに恥ずかしいですけどね」
 そう話すヒンメスさんの表情は苦笑気味だった。

 それからボクたちはアルテの商店街を見て回った。
 村から街になる過程でいろいろなお店が増えたようで、人も多く大変賑わっている様子を見ることができた。
 村人一人当たりの収入も上昇したようで貧困とは無縁になりつつあるようだ。
 もう村と街を分ける必要はないのではないかと感じる。

「少し前までのアルテ村は、狩りと農業で生計を立てていたごく一般的な村でした。それが後にダンジョンが見つかり良質な狩場もあることもあって、徐々にハンターたちが増えていったのです。当初は色々と問題もあったようですが、ギルドができ秩序が生まれたことでお互いに共存することができるようになりました」
 商店街がよく見える位置に立ちながらヒンメスさんはそう語る。
 ボクはこの街の成り立ちも、今一緒にある村のこともちゃんとしたことは知らない。
 たぶんイーサさんなら知っているんだろうけど、今はお爺様の尻拭いをしている最中のようで、あまり反応してもらえないのだ。

「そういえば、ギルドの記録によると遥様が最初に降臨され登録された日にはアーサー様と一緒だったとか」
「あ、はい。懐かしい話ですね。アーサーさんのことは知っているのですか?」
 多分知っているはずだが、念のために確認する。

「えぇ。とても強く優秀なハンターで、達成できない依頼はないと言われていますね。まぁその正体が戦神たるイーサ様なのですから当然といえば当然なのですが」
「あはは。やっぱりご存じでしたか」
「はい。大神殿で知らぬ者はおりません。とはいえ、どこの誰かに教えるなどということは致しませんが。大神殿は神を祀り、そして神の動向を見守りお助けするのが使命ですので」
 それが当然とばかりに、ヒンメスさんは静かにそう言った。
 どうやら大神殿はよくあるタイプの教団とは違うらしい。
 そういえば、【神が降臨した】というような文句を聞いたことがない。

「それでは、続けて周っていきましょうか」
「わかりました。みんな、行きますよ」
 こうして、ヒンメスさんに案内されながらボクたちは再び商店街へと繰り出した。



 アルテの商店街は人に溢れていた。
 それは少し前からも思っていたのだが、実際に入ってみると想像以上に人が多いことがわかる。
 人種や種族関係なく人が集まっているので、熱気がすごい上に喧騒もすごいのだ。

「安いよ安いよ! 昨日捕れた猪のステーキだ! 寄生虫なんかいないから安心して食べてくれよな! 今ならなんとーー」
「新鮮な果物はいかが? 森の入れるところまで行って採ってきた、栽培の難しい果物だよ。なんとあの【ペペの実】だ!」
「頑丈でしなやかで、しっかりした革はどうだね? 森の中でも難敵と言われる【ボウルダー】の革だよ。あのでかぶつを倒すのには非常に苦労したんだ。だがその分、素材の質は折り紙付きだよ」
「美味しい美味しい串焼きだよ! 一本なんとーー」
「今日入荷したばかりの【エルム織】だよ! 数が少ないから早い者勝ちだ」
 
 屋台に露店、店舗などなど、あちこちからそのような声が聞こえてくる。
 そういえば、元気な商店街もこんな感じの賑わい方だったっけ。
 ふとボクは日本での出来事を思い出した。
 これはこれで新世界の参考になるかもしれない。

「とても賑わっている感じがします」
「そうでしょう。最近は特に商人が頻繁に来るようになりましたからね。物の出入りは多いし、たくさんのお金も動きます。辺境の寒村と言われた村がここまで成長した。まさに驚くべきことです」
「たしかにそうですね。思っていた以上にすごいです」
 ボクはみんなと一緒に歩きながら、その光景を見つめていた。
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