162 / 180
第162話 穴の底
しおりを挟む
大きく空いた穴の底には小さいながらも結晶化した建物の先端が見えている。
穴自体は深いのだが、淡く輝いているのでかろうじて輪郭を確認することができた。
「ボクたちはついに伝説の地下都市を発見したのだ」
「遥よ、何を言っておるのかの?」
「あ、いえ」
なんとなく探検隊ごっこをしてみたかっただけです。
「さすがに暗いですね。明かりを投げますか?」
穴の底は一部以外闇に覆われているので何となく不安になる。
手っ取り早く光源を投下したいのだが……。
「う~む。まぁ構わぬじゃろう。光に反応する何かがおるかもしれぬがのぅ」
「はい。お姉様たちの判断に従いますわ」
お婆様は何かを懸念しているようだ。
まぁ言いたいことはわかる。
対する瑞歌さんといえば、もはやただの肯定するだけのマシンなので放置しておこう。
参考にならないし、何があっても蹴散らすだけだろうからね。
「ミレたちは……。あ、大丈夫? わかりました」
今回、ミリアムさんは連れてきていない。
というか今後もこの手のことにミリアムさんは連れてこないだろう。
なぜならミリアムさんはすでに新世界の管理者の1人になっているからだ。
いずれこの世界の管理は手放すことになるだろう。
「じゃあいい感じの光源投げます」
さっそくボクは最近覚えた新たな光源を投下することにした。
「【原初の光】投下!!」
原初の光とは、説明によると最初に闇を晴らすときに使われた光のことだそうだ。
多分恒星くらいのイメージでいいのかな?
「遥や、その光は光ではあるが光源ではないぞ?」
「お姉様、言わぬが花ですわ」
「???」
2人が何を言っているのかはわからないけどボクはすでに白い光を投下してしまった後だった。
光は徐々に降下していく。
すると不思議なことに、光はどんどん拡大していきあっという間に穴の底を明るく照らし出してしまったのだ。
しかも光の通った場所は暗くならず、そのままの明るさを維持している。
「光が残ったまま? どういうこと?」
光がとり抜けた後も明るいというのがよくわからない。
ボクが困惑していると、ため息をついたお婆様が理由を教えてくれた。
「その【原初の光】は光なき世界に光を差し込むためのものじゃ。例えば混沌の世界であったり闇の世界であったりの」
「光と光源は違うんですか?」
「少なくとも【原初の光】は照らしだすためのもので明るくするためのものではないのじゃ」
「むむむ……」
どうやら【原初の光】は光源としてはよろしくなかったようだ。
反省しなきゃ。
「まぁまぁお姉様。今後この場所が光を失うことがないという点だけ考えればいいことではないでしょうか」
「ううむ。じゃが、植生というものがあってな……」
「えっと、光を失うことがない? どういうことですか?」
もしかしてこれ、放っておいても消えないやつですか?
「まぁそうじゃな……。この光で照らされた場所は明るいままじゃな。言い換えれば神の奇跡ともいうが……。まぁよい。この光によって【混沌の根】の力が極端に弱まったようじゃしのぅ。ほれ、見てみい」
お婆様にそう言われ、示された方向を見る。
すると、蠢くようにして黒い何かが大きな建物の方へと逃げていくのが見えたのだ。
「情けないのぅ。あれでいて死ぬ前まではイキっておったというのに」
「本当に浅ましいですわね。もしかしたらこの理外こそが本当の地獄なのかしら?」
「かもしれぬのぅ。さあて、さっそくあぶり出しにかかるかのぅ」
逃げていく黒いものを見たお婆様たちは何やら楽し気にそう話している。
特にお婆様は足をぴくぴくさせているので、本当は今にも飛び掛かりたいのだろう。
「とりあえず壊さない程度に、ですよ?」
「わかっておる!」
お婆様はそう言うと、一目散に穴へと飛び込んでいったのだった。
「放っておいていいんですか?」
てっきりお婆様と一緒に行くだろうと思われた瑞歌さんがボクのそばに残っているので問いかけてみた。
「構いませんわ。それにすぐ終わるでしょうから。それよりも遥お姉様の補助をしなくてはなりませんもの」
瑞歌さんはそう言うと、ボクの体をそっと抱きかかえる。
「ミレたちは勝手についてくるといいですわ。私は遥お姉様を抱えて下に降りますので」
「ということらしいので、ミレたちは無理せずついてきてくださいね」
ボクの言葉を聞いたミレたちは力強くこくんうなずいて了解してくれた。
「さぁお姉様、行きますわよ」
「は、はい。ひやぁぁぁぁぁ」
そう言うや否や瑞歌さんは穴に飛び込んだ。
おかげでボクは自由落下を味わう羽目になってしまった。
これ、ものすっごくこわい!!
◇
しばらく落下した後、ボクたちは穴の底にたどり着いた。
穴の中は全体的に明るく照らし出されていて暗いところがほとんどなかった。
唯一暗い所といえば建物の中くらいだろうか?
至るところキラキラと輝いていて、この場所はひどく眩しかった。
「至るところ金属だらけですわね」
「ですね~」
周りを見てみると輝く金属の鉱物で埋め尽くされている。
しかもそれらが全て妖精銀だというのだから驚きだ。
「都市1つまるまる鉱脈化した感じですもんね」
どこまでも続くように見える巨大な都市。
それら全てが1つの鉱脈となって存在していた。
穴自体は深いのだが、淡く輝いているのでかろうじて輪郭を確認することができた。
「ボクたちはついに伝説の地下都市を発見したのだ」
「遥よ、何を言っておるのかの?」
「あ、いえ」
なんとなく探検隊ごっこをしてみたかっただけです。
「さすがに暗いですね。明かりを投げますか?」
穴の底は一部以外闇に覆われているので何となく不安になる。
手っ取り早く光源を投下したいのだが……。
「う~む。まぁ構わぬじゃろう。光に反応する何かがおるかもしれぬがのぅ」
「はい。お姉様たちの判断に従いますわ」
お婆様は何かを懸念しているようだ。
まぁ言いたいことはわかる。
対する瑞歌さんといえば、もはやただの肯定するだけのマシンなので放置しておこう。
参考にならないし、何があっても蹴散らすだけだろうからね。
「ミレたちは……。あ、大丈夫? わかりました」
今回、ミリアムさんは連れてきていない。
というか今後もこの手のことにミリアムさんは連れてこないだろう。
なぜならミリアムさんはすでに新世界の管理者の1人になっているからだ。
いずれこの世界の管理は手放すことになるだろう。
「じゃあいい感じの光源投げます」
さっそくボクは最近覚えた新たな光源を投下することにした。
「【原初の光】投下!!」
原初の光とは、説明によると最初に闇を晴らすときに使われた光のことだそうだ。
多分恒星くらいのイメージでいいのかな?
「遥や、その光は光ではあるが光源ではないぞ?」
「お姉様、言わぬが花ですわ」
「???」
2人が何を言っているのかはわからないけどボクはすでに白い光を投下してしまった後だった。
光は徐々に降下していく。
すると不思議なことに、光はどんどん拡大していきあっという間に穴の底を明るく照らし出してしまったのだ。
しかも光の通った場所は暗くならず、そのままの明るさを維持している。
「光が残ったまま? どういうこと?」
光がとり抜けた後も明るいというのがよくわからない。
ボクが困惑していると、ため息をついたお婆様が理由を教えてくれた。
「その【原初の光】は光なき世界に光を差し込むためのものじゃ。例えば混沌の世界であったり闇の世界であったりの」
「光と光源は違うんですか?」
「少なくとも【原初の光】は照らしだすためのもので明るくするためのものではないのじゃ」
「むむむ……」
どうやら【原初の光】は光源としてはよろしくなかったようだ。
反省しなきゃ。
「まぁまぁお姉様。今後この場所が光を失うことがないという点だけ考えればいいことではないでしょうか」
「ううむ。じゃが、植生というものがあってな……」
「えっと、光を失うことがない? どういうことですか?」
もしかしてこれ、放っておいても消えないやつですか?
「まぁそうじゃな……。この光で照らされた場所は明るいままじゃな。言い換えれば神の奇跡ともいうが……。まぁよい。この光によって【混沌の根】の力が極端に弱まったようじゃしのぅ。ほれ、見てみい」
お婆様にそう言われ、示された方向を見る。
すると、蠢くようにして黒い何かが大きな建物の方へと逃げていくのが見えたのだ。
「情けないのぅ。あれでいて死ぬ前まではイキっておったというのに」
「本当に浅ましいですわね。もしかしたらこの理外こそが本当の地獄なのかしら?」
「かもしれぬのぅ。さあて、さっそくあぶり出しにかかるかのぅ」
逃げていく黒いものを見たお婆様たちは何やら楽し気にそう話している。
特にお婆様は足をぴくぴくさせているので、本当は今にも飛び掛かりたいのだろう。
「とりあえず壊さない程度に、ですよ?」
「わかっておる!」
お婆様はそう言うと、一目散に穴へと飛び込んでいったのだった。
「放っておいていいんですか?」
てっきりお婆様と一緒に行くだろうと思われた瑞歌さんがボクのそばに残っているので問いかけてみた。
「構いませんわ。それにすぐ終わるでしょうから。それよりも遥お姉様の補助をしなくてはなりませんもの」
瑞歌さんはそう言うと、ボクの体をそっと抱きかかえる。
「ミレたちは勝手についてくるといいですわ。私は遥お姉様を抱えて下に降りますので」
「ということらしいので、ミレたちは無理せずついてきてくださいね」
ボクの言葉を聞いたミレたちは力強くこくんうなずいて了解してくれた。
「さぁお姉様、行きますわよ」
「は、はい。ひやぁぁぁぁぁ」
そう言うや否や瑞歌さんは穴に飛び込んだ。
おかげでボクは自由落下を味わう羽目になってしまった。
これ、ものすっごくこわい!!
◇
しばらく落下した後、ボクたちは穴の底にたどり着いた。
穴の中は全体的に明るく照らし出されていて暗いところがほとんどなかった。
唯一暗い所といえば建物の中くらいだろうか?
至るところキラキラと輝いていて、この場所はひどく眩しかった。
「至るところ金属だらけですわね」
「ですね~」
周りを見てみると輝く金属の鉱物で埋め尽くされている。
しかもそれらが全て妖精銀だというのだから驚きだ。
「都市1つまるまる鉱脈化した感じですもんね」
どこまでも続くように見える巨大な都市。
それら全てが1つの鉱脈となって存在していた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
243
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる