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街までの道のり
一日目の終わり
しおりを挟む魚を取得したカエデ、手に入れた数はなんと12匹。みっちゃんスタンガン恐るべし。
そこらへんに生えている植物の茎を利用して魚を4匹ずつにまとめて尾を結び持ち運びしやすくする。
鞄がないからこうするしかない。
スタンガンはスカートのポケットに入れてまとめた魚を掴んで今夜の寝床探し。
もう外は暗くなり始めている。
「なっちゃん、何処か安心して寝られる場所はあるかな?」
『はい、お任せください。このまま川を沿って下流へと向かいましょう。』
「あーい!」
これまでなっちゃんのお陰で生き永らえている。もう従順、主人だけどもあなたの虜。
なっちゃんを先導について行く。
川と並行して進むとなっちゃんの動きが止まった。どうやらこの辺りが今夜の私の寝床となるようだ。
『ご主人様ここなら今夜は安心して過ごせます。ただ屋根も無く野ざらしでの睡眠となるので申し訳ございません。』
「何を言っているの。今までなっちゃんのお陰でこうして元気にいられるんだよ。そのなっちゃんがここが一番安全というんだから間違いないよ。感謝こそして文句言うわけ無いじゃん。」
散々助けてもらってこんなことで非難したら最低最悪な雌豚に成り下がっちゃうよ。
『………もうちょっとご主人様に優しくしようと思います。』
「ん、なにか言った?」
『いえ、なんでもございません。それよりも焚き火用に枝を集めましょう。火を起こせば魔物も寄り付きにくくなりますので。』
「はーい!」
もう完全に夜になった森の中。
纏めたお魚達は冷やしといたら多少は保つという助言に従い、川の中に入れて置きました。
そしてなっちゃん監修によって枝や葉を拾っていく。まだ夜目になってないし、燃やしたら毒を吹き出すものもあるらしく無闇やたらに拾っていい訳ではないそうだ。
腕いっぱいに拾得して寝床へと帰って来ました。時折、遠くから聴こえた遠吠えにちょっとビクリとしてしまった。だけど、なっちゃんが大丈夫ですよ襲って来ないですよと励ましてくれた。
なっちゃんはやっぱり優しいなー。
寝床に着いたなら次にやる事は晩ごはん作り、といってもそのまま魚を焼くだけ。
纏めておいた内から4匹を使う。
拾っていきた枝の中から串になりそうなのを厳選しもう死んだ目で無抵抗な魚の口へ無理矢理突っ込んでいく。
これで調理は完了。包丁は無いので下処理とかなにも出来ない。鱗はなんとか落ちてる石で擦り落とした。
次に焚き火。
枝を空気が通しやすいように組んで雰囲気作りに差し色として葉っぱも添えていく。
そして、ようやく私がまともに活躍する場面。
ここまで全部なっちゃんの指示のお陰とご主人として情けない限りでした。
でも、そんな私とはお別れ。
見よ、これが我が極限まで集中力を高めた魔法を!
ピンポン玉サイズの火の玉がゆっくりとふらふーらと組んだ枝へと降っていく。
無事点火した。
そこからのカエデのドヤ顔である。
褒めて褒めてと言わんばかりになっちゃんへとドヤ顔を決めている。それを生暖かく褒めるなっちゃん。
その姿は子供と母親。
主従関係は最早成り立っていない気がする。
こうして完成した焚き火を囲むように串刺した魚を突き立てていく。
後は体育座りをして待つのみ。
焼き加減はこれまたなっちゃん、もう足を向けて寝れないね。
その間になっちゃんにご相談。
今後の事を考えれば荷物を運ぶ為に収納道具的なのが欲しい。自分的には器用な方だと自負しているので鞄を自作出来ないかななんて思ってたりする。
『ご主人様が鞄の作成ですか?…………………それよりももっと便利なのがございます。』
「謎の間が気になるけどまぁいいかな、もっと便利なのって何?」
『はい、それは魔法です。分類は時空間魔法に当たります。異空間を創りその中に荷物をしまうことが出来ます。通称空間収納と呼ばれています。全適性のあるご主人様なら取得可能です。』
おぉー凄く異世界。
これは絶対覚えなければ、いつまでも制服姿で両手に束ねた魚を持った状態はあまりにもな姿だ。
サバイバルの中でも女性らしさを忘れてはいけない。
明日から徹底的に練習しよう。
意気込んだところでなっちゃんから上手に焼けましたとコールを頂いた。
大きな葉っぱの上に移して早速齧り付く。
塩なんて貴重品はない。
更には内蔵も齧ったから少し苦い。
けれど、食べる口が止まらない。朝から夜まで何も食べていなかった。食欲がなによりも調味料となっていた。
食べ続けているとふいに塩味がした。
焼き魚を見ると魚の上にポタポタと液体が滴っている。
いつの間にか私は泣いていたみたい。
幾ら口では吹っ切れたと言っても晴れて大学進学で念願の一人暮らしからのこれである。
泣いて何が悪い。
どうせ周りにはなっちゃん以外誰もいない。居ても魔物くらい。
だったら、泣くだけ泣いて土下座の悪口を吐きまくってやる。
少女の誰かに向けての罵詈雑言が寝息へと変わったのはそれから数十分後のことでした。
眠る少女の頬を伝う涙を拭うように寄り添っていたのはなっちゃんだけの秘密です。
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