知らない世界はお供にナビを

こう7

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サルサでのんびり

廊下でも雨が降る

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声にならない叫びがカエデの精神を走り回る。発する言葉が50音のア行しか言えない女の子に陥ってしまった。
知らなかった真実と知らずに繰り返してきた過ち。この場にロープが無くて良かった。今のカエデなら喜んで首に括り付けていたでしょう。

何分間もうめき声を上げながら顔を隠す少女に宿屋の主は割れ物に触れるようにそろりと声を掛ける。

「あ、あんた大丈夫かい?辛いことでもあったのかい、大丈夫あんたはまだ若いんだからこれから幾らでもやり直せるさ。」

マールさんの優しさが魔槍グンニグル並みの威力を持ってカエデの精神へとぶっ刺していく。カエデの木霊はまだ止まらない。
たまらず少女は適当に銀貨を取り出し女将さんへ半ば強引に受け取らせた。

そして、二階へと駆け上がっていく。


後ろから掛かる女将さんの制止も恥じらいでズタボロの少女には届かない。階段を上がって一番近くの部屋へと入室。しばらく引き篭もって心の乱れを整えたい、その一心のみでした。


だから、不法侵入とかじゃないので許して下さい。悪気はございません、あるのは羞恥だけです。


カエデは堂々たる侵入により部屋の住人とマールさんの前で正座中。

「あんた、いきなり奇声を発したと思ったらお客さんの部屋に入り込むなんてどういうつもりだい?」

「す、すびばせん…。愚図で愚かな私めをお許し下さいませ。」

「い、いやあんた自分を卑下し過ぎだよ。ほら、お客さんに謝りな。」

「は、はい…。」

マールさんの隣で正座する愚か者の私を見てオロオロするお姉さんに謝罪を述べる。額に当たる床がひんやりして気持ちいい。

「ず、ずびばぜんでした。私は愚図で愚かで光合成をする植物様以下の人間です。ご、ごめんなさい…。」

「そ、そこまで自分を貶さなくても…。あの、私確かにいきなり入られてびっくりしましたが、怒っていませんよ。ですから、顔を上げて出来れば立ち上がって下さい。本当に気にしてませんから。」

このお姉さんは聖人だ。こんな愚か者に慈悲深くもお許し下さるなんて。

土下座する少女からじんわりと水溜りが広がっていく。この水はなんだとは言わない。しかし、ただならぬ水量から少女の反省度合いが伺える。

「ま、マールさんこっちが悪い事しているように思えてくるので許して上げて下さい。私は同性ですし全く気にしてませんので…。」

「そ、そうだね。あんたが許したならあたしもこれ以上とやかく言わないよ。ほらカエデだったね?立ちな、もう怒っていないからさ。」

尚も土下座で涙する愚者を女将さんとお姉さんが無理矢理立ち上がらせた。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの少女に戸惑い部屋へと逃げるお姉さん。

残されたマールさんはやれやれといった様子でポケットから鍵を一つ取り出した。
そして、ぐっちゃぐちゃの少女の腕を掴んで廊下の奥にある一室へと押し込んだ。

「はい、これはここの部屋の鍵だよ。出る時は必ず鍵を閉めときなよ、何か盗まれても知らないからね。あとこれは宿代のお釣りね。泣き止んで落ち着いたら下に降りて来な、ご飯を用意して待っているからね。」

「………ばい。」

バタンと扉が閉じられた。
カエデは備え付けのベッドへとふらふらと近付き、そしてダイブ。


隣室に迷惑を掛けないよう声を押し殺して泣きました。


びっちょびちょに濡れた枕は後日交換して貰いました。

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