知らない世界はお供にナビを

こう7

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サルサでのんびり

娘さんを頂きます

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フェンリル。
なっちゃん曰く、神獣の一種の神話の世界の住人で一匹でもいれば国なんて簡単に滅ぼしちゃう凄いヤツ。
私みたいな小娘なんて呼吸をするよりも苦労せずに屠ることが出来るだろう。
唸っているこのフェンリルは私のお腹の上で鳴いているワンコの親かな。よく見なくても毛色がそっくりだ、うちの娘息子に何してくれてんじゃあと怒鳴り込みにでも来たの?


お腹に伝わるモフモフを触りたいけど睨まれて動けない。

「ガウ!!」

「ひぃっ!?」

もうずっとガウガウばかりで分からない。私を喰うのか喰わないのかはっきりしてほしい。
なっちゃんあのフェンリルさん何を言っているの?

『訳しますね。娘といつも遊んでくれてありがとう人の子よ、我らの姿を見た者は大抵が怖れ逃げ惑う中そなただけが気さくに遊んでくれた。娘も大層喜んでいる、ですね。』

あの一鳴きに込められたまさかの長文。でも良かった、決して怒っているわけでなくむしろ感謝されていたとは思わなかった。

伝わるか分かんないけどこちらも伝えておこう。

「い、いえこちらこそ楽しかったです。最高の毛ざわりで素敵でした。素晴らしきモフモフをありがとうございます。」

案の定伝わらないのか首を傾げている。どうにか伝えたい私の気持ち。

『ご主人様、少し声のトーンを上げて腹から発するようにガウと鳴いてください。それで伝わります。』

指示されるがまま鳴いてみた。
私の鳴き声を聞いたフェンリルさんがただでさえ大きな目を更に見開いたけど…。
ワンちゃんもお腹の上でぴょんぴょんと跳ねているし発音間違えたかも。

「ガ、ガウ!」

「ワン!」

な、なっちゃんなんて言ってる?

『まずは親からですが、「娘は幼くまだ嫁にするには早い。しかし、そなたの熱い想いは我の心に深く響いたぞ。だから、しばらくは友達からということで共に過ごすと良い。ふふ、まさかお主のような人族がこの世に居るとは…まだまだ世界は広いな。」です。そして娘さんですが「わーい!」です。』


ガウの汎用性に驚くばかり。
私のガウに込められた想いはかなり曲解して伝わったようだ。
どうしようこの婚約断れる?

『無理ですね、あちらはノリノリです。もし断ればご主人様だけでなくこの大陸が終わります。』

よし、まずは友達からで。年の差とかそんなレベルじゃない違いがあるけど結婚前提のお付き合いをしていこう。
人生が破滅するよりもモフモフが嫁に来るなら可愛いもんだよ。


カエデ15歳、幼いワンちゃんが婚約者になりました。

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