今日も聖女は拳をふるう

こう7

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豚司教に教育を

路地裏の纏め人

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さて、この子達もしっかりと食べたみたいだし、色々と聞かせてもらおう。
とりあえず、今のところ食べながら聞けたのは男の子の名前がロイということ。


「君達はあの路地裏に2人で住んでいるの?」

俺の声に少し体をビクッとさせるけど、ちゃんと答えてくれそう。

「ううん、父ちゃんもいる。でも、足を怪我して動けない。だから、俺たちで食べ物を探しまわっていたんだ。」

父親はいるけど怪我して働けない。
こんな小さい子達じゃあ働き口もないか。


「アモスさんがたまに食べ物を少し分けてくれたけど、アモスさんも病気にかかってここ最近は水と地面に生えた草で食いつないでたんだ。」

アモス?

「アモスさん?貴方達のお父さんではないのよね?」

「アモスさんは俺達と同じ路地裏に住んでる人だ。でも、手に入れた食べ物をみんなに分けてくれる優しい人なんだよ。」

どんな環境でもそういう人はいる。
そのアモスって人は路地裏を纏めている人なんだね。


「良ければ、私達にそのアモスさんって方を紹介してもらえませんか?」

ロイくんの方がまた警戒心をチラ見せしてくる。

「あ、アモスさんに何かする気か?」

「もちろん!何かするつもりです。でも、ひどいことはしないよ。」

じっと俺を見つめてくる。へぇ、一丁前に見極めようとしてるね。

「お兄ちゃん、大丈夫だと思うよ。」

「ミーナ‥。分かった、アモスさんの所まで連れて行く。だが、アモスさんに変なことをしたら許さない。みんなお世話になっているんだ。全員で殴りかかってやるからな!」

「ええ、かまわないわ。それではアモスさんの所までよろしくお願いします。」

可愛らしい警告を貰い、今度はこの兄妹の先導の元、路地裏に入っていく。
どこもかしこも薄暗い。
平気で虫やねずみが徘徊してあちこちから異臭も漂ってくる。

ロコルお姉ちゃんがたまに大丈夫か聞いてくるけど問題ない。
俺は毒臭を放ってくる魔物とも戦ったことがあるからね。



そして、複雑な路地裏の迷路を進み、目の前に数人の人の姿が。
なにか揉めているようだ。

「お前たち、これはどういうことだ!みんなに配るよう言ったじゃないか!」

「うるせー!なんで他の奴らに分けなきゃならねぇんだよ。」

「みんなで協力して生きていけばなんだって乗り越えていける、そうだろう?」

随分な理想を語るなあの人。

「そんな考えはこの世界で通用しない。へっ、病気になってくれて清々するぜ。お前の偽善に付き合わなくて好き勝手に出来るからな。」

「お前たち‥」

理想と正論。

弱肉強食のこの世界ではその理想はあまりにも愚か。

でも、嫌いじゃないよ。

「こんにちは!」

まずは空気を読まずに元気な挨拶!

「「ああん?」」

喧騒とした中での場違いな挨拶に一斉にこちらを見る。
みんな片腕や足が欠損していたり、目に切り傷がある者もいる。


「なんだてめーは?」

「アモスさんってどなたでしょうか?お話をしたいんですが‥」

「アモスは俺だが‥」

おー理想を語ってた人がアモスさんか。

「おい、無視してんじゃねえよ!どっかの貴族のガキが潜り込んだのか?金目の物だけ置いて失せやがれ!」

「私はただ‥」

治療しに来ました。って言う前に片目を切り傷で塞がれたおっさんが襲いかかってくる。いきなり女の子に暴力って。お姉ちゃんの言う通り血の気が多いね。

でも、ロコルお姉ちゃんがすぐに対応する。俺に向けてきた腕をいつでもへし折れるように関節を決めている。
良い動き。

関心してる場合ではない。
このおっさんの合図で他の人達も襲ってくる。
でも、所詮ロコルお姉ちゃんの相手ではないね。関節決めたまま、他の人達をどんどん沈めていく。

「はい、それまでそれまで」

止めないと、せっかく治療しに来たのに怪我人を増やしても仕方がない。

ロコルお姉ちゃんの肩をポンと叩いて止める。
襲ってきた人達は関節決められていたおっさん以外は気絶してしまっている。

「えーと、改めてお話しますね?私達は貴方達の怪我や病気を治しに来ました。」

「怪我や病気を治すだと?」

「ええ、ここの人達は怪我や病気で働けなくなって居場所がなくなった人達。だったら、治したらいい話。少なくとも、今よりかは何倍も良い環境になるでしょう?」

「ふ、はは、治すだって?どうやって!ここには病魔が巣を作って死を待つだけの奴だっている。俺だってその1人だ!足を失って立つことも出来ない者だっている。そんな彼らを治す?妄言も大概にしろ!」

アモスさんは呆れたように笑い、次第に激昂していく。


そうだね。こんな子供に何が出来るんだって気持ちだよね。

でもね、安心しなよ。
俺は聖女だからね。


俺はアモスさんに近づく。


「だったら、治してあげるよ。」


手をかざし、額の聖女の証が輝き出す。



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