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豚司教に教育を
叱られ聖女は笑う
しおりを挟む俺の帰りを待ち望んでいたように、教会に入るやいなやロコルお姉ちゃんとトーラスさんがいた。
お姉ちゃんもう起き上がって大丈夫なの?
じっと俺を発見した二人の表情がよく分からない。
多分、怒っているよね。
こ、怖いけど行くしかない。
俺が近づこうとする前にロコルお姉ちゃんが駆け寄ってきた。
そして、俺の頬を叩く。
といっても、叩くというよりも頬を触るように優しい。
痛くないけど、思いがけない衝撃に驚きを隠せない。
頬を触られたままお姉ちゃんを見ると、抑えることが出来ないほど大きな涙の粒を落としている。
「アリス様、アリス様は馬鹿です‥。どうして一人で、危ない真似を‥したんですか。わ、私の為ですか?私なんかの為に大事な命を‥」
自分のせいで俺が危険な目に遭ったと思っているの?
自惚れないで。
「違うよ。貴方のせいじゃない。私が私の為にしたこと。」
そう、これは俺の身勝手な八つ当たりから始まった行ない。
だから、関係ない。
自分を卑下しないで。
「いくらロコルお姉ちゃんでも、私の大切で大好きな人を私なんかなんて言わないで。」
頬に触れる手をそっと握る。
それを機にロコルお姉ちゃんの涙腺が更に決壊する。
そして強く再会を噛みしめるように抱きついてくる。
「し‥心配したんです。アリス様がどんなに強くても、怖かったんです!もうアリス様の笑った顔が、見れなくなるんじゃないかって。」
「うん、ごめんね。心配かけてごめんね。」
抱きついて更に安心したのかまるで子供のようにわんわんと泣く。
そんなに泣かれると俺もつられるように目頭が熱くなってくる。
ああ、もうほら止まんないじゃん。
そんな俺達を見守っていたトーラスさんが口を開く。
「アリス様、もう一人で突っ走るのはおやめください。貴方が私達よりも出来る事が多いのは分かります。ですが、貴方は聖女様である前に一人のまだまだ小さな女の子です。どうかお気づきください、胸が張り裂けそうなほど心配になる者達がいることを。どうかもっと私達を頼ってくださいませ。」
トーラスさんは悲痛な面持ちで苦笑し、俺の頭を優しく撫でる。
それが酷く心の中に染み渡っていき、より涙の勢いを増して行く。
ロコルお姉ちゃん、トーラスさん、エルドさん、ブラッドさん、二人組み、教会に集まっていた人達。
俺はこんなにも沢山の人達に心配させてたんだ。
そう思うと、申し訳ない気持ちと心に貯まっていく温かなもので涙がどんどん止まらない。
「ひぐっ‥ごめん、なさい。心配かけて‥ごめんなさい。」
そして、ありがとう。
久しく感じた懐かしくて大切で嬉しくて優しくて‥そんな全てをありがとう。
結局、声が枯れそうなほど泣いて泣いて、これでもかってほど泣きまくった。
泣いて疲れていつのまにか眠る。
久しぶりに夢を見た。
今までほとんど見る事はなくなってたのに。
色鮮やかに咲き誇る花畑の中に立つ二人の男女。
仲よさそうに手を繋いでいる。
そんな2人が俺の頭を撫でまくってくる。
顔はぼやけているし何を言ってるか分からないけど、笑っているように思えた。
そして、光が差し込んできたと思えば2人が大きく手を振って空へと消えていった。
夢の中の俺は分からないけど多分、大丈夫って言ってたと思う。
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