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他所の聖女と異界の勇者
恐怖はいつも隣に
しおりを挟むぐふふふ、素晴らしい夜がやってまいりました。
この馬車は手狭ではあるもののちゃんと寝台を設置した特別製。
それでもそれぞれの仕切りは布のみ。
少し風を吹けばその先にはお姉様の寝顔が待っています。
お姉様には寝る前に忠告されてしまいました。お昼頃についついキスを迫ったのが失敗。
「いい、絶対寝てる時に入っちゃ駄目だよ。」
「うぅ…そんな折角お姉様とお眠りになるまでお話したかったのに。」
「布越しからでも十分出来るでしょ。さっきの前科もあるんだから今日は大人しく寝なさい。」
「うぅ…はい、分かりました。」
年下か弱い系妹の上目遣いでうるうるも今は通用しない。
くっ、本能に従い過ぎましたわ。
「それじゃあ、お休み!」
「はい、お休みなさい。」
そして、皆さんが寝静まった深夜に至ります。
さてさて行動に移りましょうか。
まずは音を立てないよう慎重にお姉様との境界線である布を取り払う。
ふふ、完璧。
次はいよいよお姉様の寝顔や全てを拝見します。
ここで素人ならばすぐにお姉様の愛くるしい寝顔へと群がります。ですが、玄人の私から言わせて貰えればそれは二流三流の動きです。
一流は下から攻めます。
なぜならいきなり顔へと近付けばお姉様の気配察知能力なら気付きかねません。下から徐々に徐々に気配を馴染ませ、お姉様の空間の一部となるのです。
それではちょっと移動。
くぅー、生足がたまりません。寝る前にローブから簡易な寝間着へと変わり、お姉様の生足がどうぞご覧あそばせ状態に。
ハァハァハァハァ。
触れてはいけない。今、欲望に従いスリスリすれば即バレてしまいます。
香りだけ頂きます。うん、美味しい!
ハァハァハァハァ。
上へ参ります。
くはぁっ!?
寝間着がお乱れになられてお姉様の絶壁が!
あの寝間着と絶壁の隙間に埋まりたい。
香りだけ頂きます。うん、美味しい!
ハァハァハァハァハァハァ。
いよいよ頂点にして至宝へ。
もう大分お姉様の空間にもハァハァ、一体化した気がします。
もうご尊顔を閲覧しても問題ないでしょうハァ。
そして、昼間には成し得なかった偉業である愛と欲望の貪り合い(キス)を達成させます。
私は空気私は空気と念じつつ、お姉様のお寝顔をいざ拝けーん!
目と目が合う。
芽生える感情。
それは焦りとやべぇ感。
咄嗟に微笑む私と呆れる貴方。
冷や汗が一つ。
「スゥ様、さっきから何をしてたの?」
「…………つい寝ぼけてお姉様の元まで来たみたいです。」
「寝ぼけて?とても丁寧にそこの布を外してたよね。」
冷や汗が二つ。
「…………私ったら寝相が少々悪いので。」
「目をギンギンに血張らせて侵入してたよね。」
冷や汗が三つ。
「…………私もしかしたら夢遊病かもしれないです。」
「気配はかなり消してたけど、凄いスンスンって匂いを嗅ぐ鼻息と呼吸音が荒かったよ。」
「………………、お姉様っ!!」
冷や汗が三つ揃えば後が無い。
死ねばもろとも、喰らえ少しでも一部でも一欠片でもお姉様を奪え。
肉欲の姫君は聖女へと挑む。
戦えスゥ様、頑張れスゥ様。
次回、お姫様は眠ります。
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