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戦乱の帝国にて聖女と三姉妹は踊る
敷かれた線路は強固で残酷
しおりを挟む平伏する信者になってしまった信者。
たった数日なのに涙と鼻水と涎と謎の体液を流しながら抱き着いてくるスゥ様とロコルお姉ちゃん。
ついでとばかりに俺の胸をモソモソ触っている。
なんて地獄絵図。
とりあえずスゥ様に拳骨を落としておく。
「「おぉー…。」」
本当に怖い。
なんで頭を殴って感嘆の息が漏れるの?
お爺ちゃんから私よりちっちゃい子供までキラキラした目で羨んでいる。
なに、殴って欲しいの?
「スゥ様、これどういうこと?」
「え?どういう事とは?」
「いや、だからどうしてここでも信者なんて増やしているの?他所様の所で勝手に増やしちゃ駄目でしょ。」
「え?」
「え?」
なんでキョトン顔するの。
ちょっと可愛いから怒れない。
「ロコルお姉ちゃんもロコルお姉ちゃんだよ。スゥ様の暴走を止めてくれないと。」
「え?」
「え?」
やだ、もうロコルお姉ちゃんまでキョトンとする。
可愛いなぁもう。
「こほん…と、とにかく早くこの人達どうにか元通りにしないと。」
「「フフ…。」」
二人が仲良く微笑む。
「「もう手遅れです(わ)!」」
大喝采を送ってくれる信者達に見送られながらお城の中へ戻る。
俺の後ろ姿はさぞ哀愁が漂っていただろう。
あの神様の言う通りに事態が進んでいる気がする。
どうしよう…せめて鍛えておこう。
「はぁ…ところで結局帝国と共和国の戦争ってどうなったの?」
目の前で見た光景ですっかり蚊帳の外にぶん投げてたけど確か戦争中だったはず。
でも、帝国の頂点である皇帝は現在もなおショコラさんに殴られていたよね。
「お姉様、帝国との戦争はもう終わりましたよ。上のゴミ屑共は洗の…いえ調きょ…いえ交渉の末、戦争は止めることになり今後はゴミ屑として少しでも屑が取り除けるように帝国内で慈善活動に勤しむそうです。」
「…………………そう。」
「それに一番上である皇帝の発言権は失われました。今、この帝都内で最も発言権があるのはお姉様です。それに次いで私、ミーナ、ロコルさん、ショコラさんと続いてます。」
「………そう………はぁっ!?」
無視できなかった。
「な、なんで?」
「なんでとは何ででしょうか?女神であるお姉様がただの皇帝ごときよりも上に座するのが道理でしょう。」
「いや、俺ただの聖女…。」
「フフフ…。」
すぐ笑って誤魔化す。
もう神様の泥沼に片足どころか肩までしっかり浸かってしまったような気がする。
「い、嫌だよ国をどうこうするとか。俺はただの聖女なんだから。」
「フフフ、それには心配及びません。傀儡として引き篭もっていた王妃を引きずり出して交しょ…いえ調きょ…いえ洗脳して女王としてこの国に君臨してもらうことに致しましたから。」
言っちゃった、この子洗脳って認めちゃった。
「スゥ様…あんた変わっちまったよ。」
「ですが、何もしなければお姉様が帝国の女王として君臨する羽目になりましたがそれでも宜しかったのですか?」
………………。
「…………スゥ様、よくやった!頑張った!偉い!」
「お、お姉様ぁ…お褒め頂きありがとうございます。ご褒美にベッドへ行きましょう。」
「いや、行かない。」
これぞとばかりに夜這ろうとしてくる。
腕を引っ張っても行きません。
何はともあれ女王様になる未来は回避出来た、あとは現人神を避けるだけ。
それによくよく考えれば今は多分女神熱が高まっているだけだ、いずれ冷めて俺がただの聖女だってなるよ。きっとそうなる、うんなる。
なってくれ!
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