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建設2
しおりを挟む上目遣いをどうにか躱した結果、現在リリーはジト目になってしまいました。
少女のジト目は心にくる。
でも、ヘタレじゃないけど俺にはどうしようもない。
ケンゾウ建築頑張ろうね。
視線から逃れるように作業開始。
「ほれクロ坊、儂が解体した物を全てここに出しておくれ。あと、主にはすまんがミスリルと木材を多めに解放して貰えんかのう。」
そんな申し訳無さそうに言わないでくれよ、お爺ちゃん。
ミスリルは確か100kgだったから宝箱から見つけた30kgと解放から残りの70kgを出す。
これで建築予算があと1600万z。
次は木材。
これは迷宮で見つからなかったから解放から出すしかない。シュトーム周辺の木々ではケンゾウが納得しないだろう。
なので、一覧から探していった結果見つけたのは神木という物。
セーフティア時代では神々討伐系イベントでは比較的簡単に手に入る。
お値段はミスリルよりも高い100万zだけど、神木丸々一本分手に入る。そう考えれば安いと思う。金銭感覚が麻痺り掛けているから分かんないけど。
これを残りの全額を使って16本。
所持金額が1億と2千万ちょっと。
まだあるじゃんって思う?
残念、家を建てたら仮とはいえ拠点を護る配下を何人か解放したらあっという間に無くなるよ。
早くコロックさんに会いたいな。
「主よ、もう建築を始めてよいかの?」
俺はどうやらミスリルやらなんやら出した後に立ちつくし耽っていたようだ。
今はお家だ。
「それで主はどんな家をお望みじゃ?」
「ん?理想を言うなら目立つと面倒臭そうだから一見見た目は普通、でも配下全員が住めて鍛冶場や訓練場とか配下それぞれの特色に合う施設もあると嬉しい。なんて言ってみたけどまぁ現状は難しいかな。」
あくまで理想。
建築材自体は少なくともこの街にあるどの材料も最高。でも、土地の広さや元々知っている天空城を想像しちゃうと理想に近付けるのは厳しい。
でも、ケンゾウは己の胸をドンと叩いて宣言した。
「主よ、儂に任せるのじゃ!期待に添えるよう全身全霊を込めて作り上げるぞ!!」
そう言って始まった建築は普通の大工さんがするようなそれとは違う。
まずケンゾウの前に建材となる素材を全て置く。
すると、ケンゾウは座禅を組んで目を瞑る。この時点で家の各パーツを頭の中で事細かく想像する。
むむむと唸り始めたら素材の下に大きな魔法陣が展開されていく。
素材が輝き出したらスキルが発動した合図。
魔法陣が消えた頃には、ケンゾウがイメージした家のパーツが出来上がっている。
決して寸法したりノコギリで切ったりなんてしない。
綿密に頭の中で思い浮かべたら加工されて魔法陣から現れる。
大工さん泣かせのケンゾウ特有のスキルだ。
あとはこれを指示通りに組み立てていくだけ。
「ほれリリーよ、お主の魔法で地面を掘っていくぞ。」
どうやら先に地下からやって行くようだ。
リリーがとても嫌そうな顔をするもケンゾウは一切気にせず急かす。
さすがのリリーもケンゾウには敵わないか。
「ケンゾウ、俺も何か手伝えることはあるか?」
俺はこれでもセーフティアでは天空城を地道に手掛けていた実績がある。
さぁ、どうぞ俺を使ってくれ。
「うむぅ…主よ、建築は儂がやるから家具でも探して来たらどうかのう?」
あれ?
軽く厄介払いされていない?
「あれ、こ、これでも建築出来るよ。」
「それは十分分かっとります。じゃが、やはり主に指示を下すなんて儂には出来ん。主には出来上がるまでどっしり構えてくれとったらそれで良いのじゃ。」
しょぼん。
配下に感情が芽生えた影響で生まれた悲しい障害。セーフティアの時であれば無表情ながらも一緒に作っていたのに。
このまま体育座りして陰で落ち込んでいたい。
けれど、クロコとシルヴィアの左右からの励ましでどうにか立ち上がり街へ繰り出す。
せめて良い家具を選ぼう…。
彼の背中はいつまでも哀愁が漂っていた。
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