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脅迫はお願い
しおりを挟む配下達の堪忍袋の緒が切れた。
もうこの騎士達の未来は決まってしまわれた。今回も俺は観戦者、売られたのは俺なのに買っちゃうのはどうしても配下達。
騎士共から護るように前へ立つ三人娘。
それを見た王子様はこんな状況下にも関わらずトンチンカンな事を言う。
「ほう、なかなか麗しい娘たちではないか。ふむ、貴様そこの娘たちを私に献上するなゔぁはっ!?」
いけない、思わず殴ってしまった。
殺してはいないからセーフ。でも、完全にアウトではある。
仰向けに鼻血を垂れ流しながら倒れる王子様を騎士達は呆気にとられポカーンと眺めている。
「き、貴様達…ふ、不敬だ!完全なる不敬だ!お前達、奴らを殺せ、殺すのだ!!」
正気に戻った一人が顔を真っ赤にさせながら仰る。
「ごめん皆、先に殴っちゃった。」
「むふふ、良いのですよ主君。むふふ私の為に怒ってくれたぁ…。」
「良い、主の愛を感じた。それだけで良い。むふふ…。」
「……………漲ります。」
こっちはこっちでニンマリと第三者の目からは引いてしまう表情をしていた。
ほら、襲って来ているよ。
「全く…せっかく主君の愛を堪能しているのに無粋な輩だ。リリー、カナデやるぞ。」
「「うん(はい)。」」
始まる戦闘。
けれど、大それた戦闘にはならない。人数差があろうとも実力差が段違い。
開始早々のシルヴィアの長槍による横一閃で簡単に胴体が上と下で仲違いする。
カナデはカナデで振るう双剣の通った道筋は豆腐のように切れて崩れる。人の角切りってやっぱりグロい。
精神耐性が高くなかったらヤバかった。
リリーはというと黒い球体を宙に生み出した。
その球体から何百もの細い棘が生えてハリセンボンのように周囲へ伸びる。
R18指定の映像が目の前で広がる。この子達、こんな可愛い顔して殺る事に容赦が無い。しれっと横には六本の木が出来てるしね。
結果、20秒も掛からず終わってしまった。戦闘パートが戦力差であっさり過ぎる。危険は避けたいけど、もっとやり甲斐のある相手と戦いたい。
フラグじゃないよ。
最終的に生き残っているのは血溜まりの中で眠る王子様ただ一人だけ。
早く起きてもらうとしますか、ちゃんとお願いしなきゃいけないからね。
ビチャビチャ音を立てながら血溜まりの王子様に近付く。
ちょっと強めに殴ったせいで色々な体液が顔から溢れて少し気持ちが悪い。
なので、そこらに落ちている木の棒を拾って顔をつんつんする。
19回目のツンツンでようやく呻きを上げながら起きてくれた。
「う、うぅ…私は…。」
「おはようございます、王子様。」
「うぅ………はっ、貴様は!?よくも私を殴りおって成敗してくれる!」
状況がまだ理解出来ていない。
周り見てごらん、貴方の騎士達は皆アンデッド一直線に進んでいるよ。
「はいはい、周りを見てください。貴方をお守りする存在はもれなく全員さよならバイバイしました。では、騎士達を殲滅した俺達にまだそんな態度で接してきますか?」
「なっ…。」
辺りを見回し絶句するシェパード殿下。
さっきまで一緒になってやいのやいのしていたお供を失ったんだ、さぞお辛いことだろう。
「き、貴様らぁ…。」
あちゃあ、冷静さよりも怒りが上回ったか。
本当にこんな人が次期国王なの?
「許さん、必ず殺してやる!大軍を率い」
「うるさい。」
シルヴィアの一閃が王子様の腕を捉える。
空へ上昇していく左腕。王子様の利き手が右であることを祈ります。
左腕の喪失とその激痛が少し遅れて発覚する。
「あぐぁ…う、腕が!?い、痛いいだい痛い痛いいたいいだいうがぅ…うあぁぁぁ!!」
痛みにのたうち回る。
痛々しくて見ていられない。
でも、お願いは忘れない。
「王子様痛がっているところ申し訳無いのですがお願いがあります。」
「いたい痛い痛い助け、助けてくれ腕が…痛い痛い痛い」
残念、全然聞いてくれない。
リリーに治療してもらおう。
「リリー、治してあげて。」
「いいの?」
「うん。この調子じゃあまともに聞いてくれないからね。」
「ん、分かった。」
キュルピーン!
はい、腕復活。
そんじゃあ、改めましてお願いします。
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