対人恐怖症は異世界でも下を向きがち

こう7

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闘技大会と‥

絶望の闘技大会3

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ついに運命の対決がやってきた。

目の前のレイピアを手に持つ女性がクロウさんが戦わなければならない相手。
司会進行の方の説明では、あの女性はエルザという帝国の姫さまで騎士も率いている強者らしい。

そんな姫騎士さんにクロウさんは大剣を差し向け、高らかに宣言する。

「エルザ、俺がこの戦いに勝ったら婚姻は諦めてもらおう!俺は本当の自由を手に入れてみせる。」

「‥‥‥」

エルザさんは何も言わずに黙って聞いている。

「お前達のことは特別嫌いな訳でもない。でも、怖い‥怖いんだ。だから、恐怖をこの大剣で切り開かせてもらう!」

かっこいい。
他の観客はこんな綺麗な姫さまに何言ってんだとブーイングをしている。

みんなは何も分かっていない。
多分あの姫さまも心に恐ろしいものを秘めた魔王なんだ。

頑張れ勇者!
勝つんだ勇者!

「‥‥ふう、もう宜しいということですわね?」

「え?」

「もう自由な時間は要らないという事ですわね?」

あの姫さまはクロウさんの宣言を大して気にしてない様子。
あまりの落ち着きようにクロウさんが狼狽している。

「折角、監視はつけても自由にさせていましたのに、自ら手放すだなんて。まぁ、愛しい愛しい私の旦那様だこと。」

「ひ、ひぃっ!?」

姫さまの目が獰猛な肉食獣のように妖しく光る。
これは‥。

「では、私が勝ったら結婚いたしましょうね。あ・な・た‥ふふ」

「う、うわあぁぁぁ!!!」


クロウさんの絶叫のような雄叫びと共に試合が始まった。
クロウさんは己の恐怖を振り払うように無我夢中で姫さまに大剣を振り回しまくる。

姫さまは優雅なティータイムを過ごすが如く軽やかに躱したり、時には受け流したりと余裕の表情。

なおもクロウさんの追撃は止まらない。詠唱を呟き、身体強化や大剣に付与したりと親の仇のように徹底的だ。


でも、それでもあの姫さまは嘲笑う。

僕にはどうしても結末が見えてきてしまって涙が溢れてくる。

嫌だ、やめてよぅ‥

姫さまは振り上げてきた大剣を舞うように避けて宙返りしながら無事着地する。

そして、着地と同時に一気に距離を詰め、大剣の柄の部分に強烈な一撃を当てる。

クロウさんは耐えきれず大剣を手放してしまった。



終了の刃が迫って来る中、この大勢いる観客の中の僕とクロウさんが目が合った気がした。
それは時が止まったようにばっちりと。


さようなら


そう言って笑った。


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