羽の生えた男

ざしきあらし

文字の大きさ
2 / 4

2

しおりを挟む
  二人はともに暮らし始めた。はじめは支えられるだけだった男は、次第に活力を取り戻し、以前と同じように生活できるようになっていった。
  しかし時折、男は頭を抱え涙を流す。もっと早く君に出会っていれば。羽を理解してくれる人に出会えていれば。私は羽を大きく広げ、空を飛べていたかもしれないのに。男は悔やむ。
  男を理解し、ともに暮らすことを選んだパートナーはそっと男を抱きしめ、、これからのことを考えよう、と囁く。囁きは静かでありながら、希望に満ちた力強い言葉であった。
  男はその言葉を聞き、やっと、心から笑うことができた。

  二人は小さな飲食店を営み始めた。男が料理を、パートナーがウエイターをする。小さな、小さな飲食店だ。
  男の料理はおいしかった。何を作ってもおいしかった。一人での生活が長かったためか。大切なパートナーのおかげか。どうしてうまいのかよく理由はわからないが、とにかくおいしかった。そのため店は繁盛していた。
  しかし、男には唯一扱うことができない食材があった。鶏肉である。なんとなく、親近感が湧くため、なんとなく、申し訳ない気持ちができてしまい、なんとなく、避けてきてしまった。しかし、このどんな料理もおいしいと評判の店に、鶏料理だけないのは、なんだかもどかしい。お客さんからのオーダーはないため、切迫した状況ではないが、パートナーからとりあえず作ってみようよといわれ、作ることにした。
  とてもおいしい料理ができた。信じられないほどおいしかった。
  店で新メニューとして出したところ、即、大人気のメニューとなった。
  飛ぶように売れるようになった鶏料理。     男はしばらくの期間呆気に取られていたが、喜んで食べてくれるお客さんの顔や言葉を見聞きして、とても笑顔になった。
  二人は笑顔を絶やすことなく、今日も幸せそうに料理を作り、それをふるまう。
  羽のことなど忘れている。羽はまた小ぶりになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、孝之は高校三年生、十七歳。妹の茜は十五歳、高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

麗しき未亡人

石田空
現代文学
地方都市の市議の秘書の仕事は慌ただしい。市議の秘書を務めている康隆は、市民の冠婚葬祭をチェックしてはいつも市議代行として出かけている。 そんな中、葬式に参加していて光恵と毎回出会うことに気付く……。 他サイトにも掲載しております。

処理中です...