姉に巻き込まれて異世界転移〜ワガママ舌を満足させます〜

ぺんたまごん

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「グゥー……、ガゥガゥガゥ!」
「あらベイビー、急にどうしたの?」

 ぐるぐるしている間もヴィス君が僕にキスしてくる。な、なに、親愛のキス?挨拶のキス?ほっぺだけじゃなくて、口にまでしてきた!
 た、食べられそう!こ、怖いよ!

 一方でベッドの方から不機嫌な動物の鳴き声と気怠げな女性の声が聞こえる。

 黒熊さんは僕らから視線を外して、ベッドに横になっている人……じゃなくて熊さんの方に行く。

 僕がキスされているのを止めてくれない。旭も「熊さんと仲良ししてる!いいなー!」って呑気なこと言ってる。

「ヴィ、ヴィス君!んぷっ、んんっ!……も、っやめて!」
「キスをするだけでこんなに愛らしい顔になるんだな。顔真っ赤にして、すごく可愛い」
「ううっ……!」

 細い身体と思ったけど、それは身体の大きい黒熊さんと茶熊さんと比べたらだ。人間なら巨体である。押しても全然びくともしない。

「バイオレット、どうしたんだ?」

 黒熊さんが心配そうにベッドに寝ている熊さんに話しかける。

「この子、何か変なのよ。何か話しているみたいに鳴いてるの」
「ガゥガ……ヴゥ~!」
「ほらね?」
「本当だな……」
「ガゥガァッ……ガゥ……っ、こらぁ神様!さっさと喋れるようにしなさいってば!」
「「「!!!」」」

 急にお姉ちゃんの声が聞こえた。
 声の方向はベッドの方。

「な……」
「赤ん坊が喋った……?!」

 僕も熊さん達もびっくりして固まっていると、お姉ちゃんがクハハと笑った。

「もう神様、仕事が遅い!」

 満面の笑みで神様をディスるお姉ちゃん。
 よくわかんないけど、神様に口答えするお姉ちゃん凄すぎるよ。

 お姉ちゃんの子どもである旭は、すぐにお姉ちゃんの声わかったみたいで、タタッとベッドに近づいていく。

 ヴィス君もびっくりしたようで、キス攻撃が止ん隙にズサァと逃げた。ホッ。

「ママだ!ママ起きたね!おはよ!おはよー!」

 旭はすぐにママだとわかったようだ。
 僕も旭に続いて、すいませんと謝ってベッドに近づくと、大きい金熊さんと両手の大きさのこれまた黒と茶のマーブル小熊がいた。

 大きい金熊さん、毛並みめっちゃ綺麗。ここには色んな色の熊さんがいるんだな。
 そして金熊さんの手の中にいるとても可愛い小熊を見てピンときた。お姉ちゃん生まれ変わって、赤ちゃんとして生まれるって言っていた。僕らが来たタイミングで生まれたこの小熊。
 ということは……。

「旭、瑠偉!無事にこっちに来れたのね。良かった。また生きて会えたわ……!」

 慈愛の籠ったお姉ちゃんの声が小熊から聞こえた。
 間違いない。この小熊はお姉ちゃんだ。

「ママ!ママは何でクマさんになってるの?」
「えっ、私熊なの?!きゃっ、モジャモジャの手だわ!面白い!」

 キャキャっとお姉ちゃんと旭は難なく受け入れ、楽しそうに笑っている。
 周りの熊さん達は何が何だかわかってないようだ。

「一つ聞きたいのだが……我が娘と坊や達は知り合いなのかい?」

 黒熊さんがおずおずと確認する。
 お姉ちゃんがその質問に簡潔明瞭に答えてくれた。

「家族よ!この小さくて世界一可愛いのが私の子どもの旭、そしてそっちのヒョロ介が弟の瑠偉。私たちは別の世界からこの世界にきたのよ。よろしくね!」

 熊さん達は理解が追いつかないらしく、「はぁ……」と気の抜けた返事が聞こえた。
 とりあえず産後の金熊さんは数時間は安静にしなくちゃいけないってことで、僕たちは別室に案内されることになる。どうなるんだろ。


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