姉に巻き込まれて異世界転移〜ワガママ舌を満足させます〜

ぺんたまごん

文字の大きさ
4 / 36

4

しおりを挟む
 とりあえずお姉ちゃんと僕、旭、そしてこっちの世界お姉ちゃんの父になる黒熊のドンドさんで状況整理することになった。

 お姉ちゃんは身体の異常がないかを医師に診てもらうために後ほど合流ということになり、ドンドさんも奥さんのバイオレットさんを労ってから来るとのこと。
 そのため先に僕らは、別の熊さんによって別室に案内された。

「一度外に出ますね」

 案内係をしてくれる茶熊さんは、ラインさんと言う名前だ。物腰が柔らかい声の熊さん。

 僕たちが転移してきた場所は出産時と産前産後に使う特別室だったらしく、熊さん達が住む居住区には道が繋がっていないってことだった。

 居住区の一角に来賓室があって、そこに行くため一度外に出んだけど、出てびっくり。僕は高大な景色に目を奪われた。

「すごーい!大きい!」
「大きい洞窟みたい……」

 目の前には小山ぐらいある巨大な白い岩。

 世界遺産のカッパドキアを彷彿とさせ、岩肌に幾つもの穴が空いていて段上のテラスが見える。内部もすごい。
 蟻の巣のように沢山の部屋があり、熊さん一人がやっとこさ通れる程のウネウネした廊下が続いている。

 案内された部屋は十畳ぐらいの空間で、分娩室の同じように、かまくらみたいに丸くて滑らかな造りになっていた。綺麗に研磨されているのか、表面はツルツル、冷んやりしていて手触りが気持ちいい。

 調度品は椅子と机と至ってシンプル。これらも部屋に使われている石と同じだ。ここの世界はこの石をよく使うんだろう。

 華美な装飾はなく、絵や骨董品もない、実用的な雰囲気の部屋だった。

 ラインさんはお茶を用意してくれて、器用に大きな熊さんの手でポットからお茶を注いでくれる。手には触ったら気持ち良さそうな肉球と鋭い爪がみえるけど、指の関節を人間のように動かしていて難なく持っていた。ここの熊さんすごい。

「どうぞ。熱いので気をつけてお飲みください」
「ありがとうございます」
「ありがと!」
「ドンドさんが来るまで寛いでいてくださいね。私は部屋の外にいますので、何かありましたらお声掛けください」
「はい」

 ラインさんが旭に手を振ってくれたあと、木製のドアから出て行った。僕は緊張が解かれてホッと息をつく。

 僕と旭だけになったので、頭から被っていたタオルを脱いだ。旭もそれに倣って脱ぐ。

 机にはお茶と一緒に用意してくれた丸いチョコレートみたいな焦茶色のお茶菓子が鎮座していた。食器は木製で、角のない丸く丁寧な造り。

 お茶の色は紅茶のような綺麗な色だ。
 旭が喉乾いたと連呼するので、とりあえず飲めるように冷まして、飲んでも大丈夫なのか確かめるために一口飲んでみる。

「ん、美味しい」

 お茶は少し甘くて、柑橘系のフルーツティーのような味がした。

 旭もこれなら飲めるだろうと飲ませてあげると、ジュースだ!って言って、喜んでゴクゴク喉を鳴らして飲んだ。可愛い。

「うわぁ!これチョコ?やった、いただきまーす!」

 旭はテーブルの上にあったお茶菓子を目敏く見つけた。お菓子大好き旭君。甘い物には目がない。

「あ、待って、僕がまず食べてからで……」

 制止する間もないまま、旭ら丸いチョコレートに似たお菓子を手に取ってすぐにパクリと口に入れた。

 するとニコニコしていた顔から一変、野菜を食べた時のように顔をクシャッとさせた。

「うっ、うげ!まっずい!」
「うわ、大丈夫?!」

 旭は机の上にベェと吐き出す。いつも常備している濡れティッシュをポケットから出して、旭の口を拭いて机も綺麗にする。

 旭とは元々好き嫌いが激しいので、苦手な味だったのかなと背中をゆっくりさすった。

「これまずい!アクマの食べ物!」
「ふはっ、悪魔の食べ物とかどんな味なの」
「食べたらわかる!」

 不味い不味いと連呼する旭を笑いながら宥めると、控えめにトントンとドアがノックされて扉が空いた。

「ラインです。外に聞こえたんですが、お子様大丈夫ですか……うわ!」

 旭の声が外まで聞こえたみたいだ。出された物を未だに不味いと連呼している旭にお茶を飲ませて、ラインさんに苦笑いで返す。

「大丈夫です。ちょっと好き嫌いが激しい子なんです。ここのお茶は大好きで沢山飲んでます」
「そ、そうですか。あ、あのルイ様!」
「はい?」
「お身体を隠してください!小さき者の痴態はまだ許されますが、少年の痴態は晒す方も見る方も良くありません!」
「痴態……あ、そうでしたね」

 脱いでいたタオルをカッパのように再び着る。このバスタオルはサラサラしているけれど、分厚いのでちょっと面倒だ。

 旭は再びタオルを被るのを泣いて嫌がったので、旭君はまだ年齢的に大丈夫ですとラインさんに言われたため、そのままの格好で過ごすことになった。六歳過ぎたらそのままではダメですよと言われた。もうすぐじゃん。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界でホワイトな飲食店経営を

視世陽木
ファンタジー
 定食屋チェーン店で雇われ店長をしていた飯田譲治(イイダ ジョウジ)は、気がついたら真っ白な世界に立っていた。  彼の最後の記憶は、連勤に連勤を重ねてふらふらになりながら帰宅し、赤信号に気づかずに道路に飛び出し、トラックに轢かれて亡くなったというもの。  彼が置かれた状況を説明するためにスタンバイしていた女神様を思いっきり無視しながら、1人考察を進める譲治。 しまいには女神様を泣かせてしまい、十分な説明もないままに異世界に転移させられてしまった!  ブラック企業で酷使されながら、それでも料理が大好きでいつかは自分の店を開きたいと夢見ていた彼は、はたして異世界でどんな生活を送るのか!?  異世界物のテンプレと超ご都合主義を盛り沢山に、ちょいちょい社会風刺を入れながらお送りする異世界定食屋経営物語。はたしてジョージはホワイトな飲食店を経営できるのか!? ● 異世界テンプレと超ご都合主義で話が進むので、苦手な方や飽きてきた方には合わないかもしれません。 ● かつて作者もブラック飲食店で店長をしていました。 ● 基本的にはおふざけ多め、たまにシリアス。 ● 残酷な描写や性的な描写はほとんどありませんが、後々死者は出ます。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

処理中です...