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しおりを挟むお姉ちゃんはまだ来ないし、痴態と言われる理由を知りたい僕はラインさんに質問した。ついでに様付けで呼ばないでと伝える。様なんておこがましいもんね。
「ではルイ君と呼びますね。痴態の説明の前に……ルイ君は獣化しないのですか?」
「獣化?」
獣化とは今のラインさんの姿、熊さんそのものの姿のことらしい。
僕たちは人間という種族で、この姿しかなれないことを伝えると、ラインさんはかなり驚いた。
「そうなのですか。では痴態を知らないのも頷けます。今の私の姿は本来の獣人と言われる姿ですが、ルイ君の今のお姿は……その私たちは『人間化』と言われる姿に酷似しており、大変無防備な状態なのです。基本は繁殖行為の時にしかならない姿にならないので……別名、痴態と言われております」
「繁殖行為……」
つまりエッチする時の姿。
地球でいったら、裸でウロウロしている状態のようなものということになる。それならば今までの熊さん達の反応も頷けた。
僕は新常識を頭に入れて、いそいそとタオルがずれていないから確認する。だってこの姿が裸として見られている状態なら恥ずかしい。
「ドンドさんの娘さんが別の世界から来たと言われていました。どうやってこちらに来られたのですか?」
ラインさんは頭を捻りながらも、僕の話に耳を傾けてくれた。
この世界ではない、人間が沢山いる別世界から神様の不思議な力で来たと説明すると、「人間化したままの種族……痴態を出したまま生活するとは、開放的な種族ですね」とオープンセックスみたいな捉え方をされてしまった。いえいえ、そんなはしたない種族じゃないですよ!
ラインさんは、僕のぶっ飛んだ話を信じてくれて、「大変でしたね」と労ってくれた。ここの獣人さん達は優しいな。
ラインさんは他の種類の軽食を持ってきますと言って、部屋を後にして出ていった。
ラインさんを待っている間、旭があまりにも不味いと連呼する謎のチョコレート似のお菓子が気になり、僕も一口貰うことにする。
どんな味なんだろう。恐る恐る口に入れてみた。
「んんっ?!」
口に入れた瞬間、口に入れた事を後悔した。
まずはガツンと塩味。そして青臭さ、苦味、酸味が来て、ほんのり牛……かな。お肉の味がする。
雑草で作ったの?っていうぐらい口の中が青々しい。
感触はパサパサ。干し草入り?
これは旭が吐き出すのもわかる味だ。
不味い不味いと旭と同じように心の中で連呼し、お茶で流し込み、なんとか一口飲み込んだ。齧った残りの謎の物体は食べる気にはならず、カップ横にちょこんと隠した。
「これは大変かも……」
食が合わないって、結構大変なことじゃないだろうか。
地球にいた頃だって、異国の料理で苦手な物があった。僕はパクチーが苦手で、パクチーが使われたタイ料理は全然食べれなかったのを覚えてる。
お姉ちゃんは美味しいって食べてたから、あれは食の好みだなってわかるんだけど、なんというか、コレは野菜のえぐみと塩味が強すぎる。アク抜きしないのかな。野菜好きな僕でさえ青臭いなら、好き嫌いの激しい旭なんて食べれたもんじゃないだろう。
他の食べる物を持ってきてくれるって言っていたから、まだ悩むのは早いよねと思っていると、ラインさんが帰ってきた。
「お待たせしました。すみません、ドンドさんの赤子に食べてもらうスープを作っていたら遅くなりました」
「あ、お姉ちゃんのスープですか?」
「はい。最初に作っていたスープは苦手だったようで、別の種類を使って作ってきたんです」
「あー……。それはお手数をおかけします」
「いえいえ、ヴィス君で慣れてますので」
お姉ちゃんのスープってどんなのだろう。
……さっき食べた感じだと、多分食べなさそうな気がする。
「それで摘めるものを数種類持ってきました。先程のも、これも全部携帯食なので、お口に合うといいのですが」
「ありがとうございます」
コトリと置かれたお皿の中には偽チョコレートと同じような形の食べ物だ。色は緑、クリーム色、赤色の三種類。
ラインさんは僕たちが食べれるのか不安なようで、今度は部屋から出ていかなかった。
そして旭は、お腹が減っていて食べたいけれど先程の嫌な味を覚えているため、「ルイ食べて」と僕に毒見役を押し付けてくる。
食べるしかない状況で、安全そうなクリーム色の固形物を手に取った。
そして恐る恐る口に含む。
「うっ」
土のついたじゃがいもに牛乳をかけて食べているような味だった。土の味いらないよ。綺麗に洗ってないのかな。
口から出したい。
そんな気持ちがむくむく出てくるが、ラインさんが見ているためそんなことはできない。僕は呑み込みを拒否する喉を叱咤して、お茶で流しながらごくりと呑み込む。
「……どうでしたか?」
「美味しい?」
ラインさんは不安そうに聞いてきた。旭も僕の返答を首を傾げて待っている。
美味しくないとは言えないのでオブラートに包んだ。
「僕の口には、合わないみたいです……」
「そうですか……。別の世界におられたら、こちらの食事はお口に合わないのですかね」
「うぅっ、食べたい。お腹減った!」
とうとう旭はお腹が空いてグズリ始めてしまった。そのため意を決して僕は緑色と赤色も続けて食べた。何か食べれればいい。空腹は可哀想だ。
緑色は野草の汁を煮詰めたのかと思うぐらい苦くて青臭くてとても食べれない味だったが、赤色は甘酸っぱい果実の味だった。イチゴの味を濃厚にしたような味で、これはすごく、すごーく美味しかった。旭も赤色の粒はパクパク食べてくれて僕も一安心だ。
ラインさんが赤色の固形物は乾燥したイチゴの実と、すり潰したスィート草という甘味で作ったもので「レッスィ」と呼んでいる食べ物だと教えてくれる。
レッスィのおかわりをお持ちしますねと、ラインさんが緑とクリーム色の固形物が残るお皿を下げようとすると、コンコンと扉がノックされた。
「失礼する」
「旭、瑠偉お待たせ!ねぇねぇ瑠偉!ちょっと聞いてよー」
入ってきたのはドンドさんと大きな手に抱っこされている小熊のお姉ちゃんだった。
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