姉に巻き込まれて異世界転移〜ワガママ舌を満足させます〜

ぺんたまごん

文字の大きさ
9 / 36

9

しおりを挟む

 お姉ちゃんにご飯を食べさせるため抱っこする。お姉ちゃんは熊の赤ちゃん。ぬいぐるみのようにコロコロした身体が可愛い。
 綿毛のような、極上の触り心地に思わずモフモフを堪能していると、お姉ちゃんが早く早くと急かしてくる。そうだった、ごめんごめん。

 旭が一足先に冷ましたご飯とスープを口にした。レッスィを食べて、お腹いっぱいだったはずだけど、美味しい!とパクパク食べている。よかった。
 熊お姉ちゃんの可愛い口に入れるとまん丸お目々がくりくり輝く。

「ん~!優しい味!苦くない!さすが瑠偉だわ!」

 お姉ちゃんも美味しいって食べてくれる。嬉しいな。
 お姉ちゃんを食べさせる合間に僕もご飯を一口。うん、お米古いかなって思ったけど、糠臭くないしモチモチしてて、甘い。お米の味も濃いから旨味があってすごく美味しい。

「なんと……このふわふわツヤツヤしているのが米なのか?」

 ドンドさんとヴィス君は、ツヤツヤご飯がお米だと分からなかったようで、僕の調理を見ていたラインさんの説明を聞いてびっくりしていた。

 そして熊獣人のみんなは、器用に鋭い爪の生えた肉球でスプーンを持ち、恐る恐るお米を口にする。すると目を見開いた。

 口に合わなかったのかなと不安になると、ヴィス君がうーーっと唸る。

「うまーーーいっ!」

 ヴィス君は目をキラキラさせながらそう言うと、凄い勢いでお茶碗にかぶりついていた。ミルクスープもすごい勢いでなくなっていく。ドンドさんもラインさんも、そんなヴィスを見て目を見開いていた。

「ルイ!お前の飯は最高だ!こんな美味い飯は食べた事ない!」

 ヴィスは沢山おかわりして、誰よりも多く食べていた。熊さんも人間のように表情豊かなんだなとわかるぐらい、美味しそうに食べている姿は嬉しくて、進んでご飯やスープをよそってあげる。

「ヴィスがあんなにご飯を食べるなんて……」
「私も初めて見ました……」

 ドンドさんとラインさんが食べっぷりのいいヴィス君を見て唖然としている。ヴィス君は本当に偏食なんだな。

「ヴィス君はご飯食べないんですか?」

 どれぐらいの偏食なんだろうと、好奇心でドンドさんに聞くと、ドンドさんは深く頷いた。

「ああ。ミルクとレッスィなど甘い物しか食べない。野菜も肉も全く食べなくて。身体が作られないから好き嫌いなく食べて欲しいのだが、ことごとくダメでな……。こんなに肉と野菜の入ったスープを食べている姿が幻覚ではないかと思ってしまう」
「ウケるんだけどっ!それ旭よりも偏食じゃん!」

 お姉ちゃんが横槍を入れる。ヴィス君は偏食と言われ慣れているようで気にしておらず、飄々と返答する。

「アカネもラインのミルクスープは嫌だって言って残してた。偏食じゃないか」
「ふん、私たちがいた世界はグルメだったのよ。私は好き嫌いありませんー。ってかあんたの毛、ボロボロじゃない。好き嫌いするからじゃない」
「……知ってる。でも食えないものは食えない」

 ヴィス君は毛並みのことを気にしているのか途端に言い淀んで、チラッと僕の方を見てきた。
 そしてトコトコと僕の方に寄ってくる。

「ルイ」
「ん、なに?」
「……ルイは俺のことどう思う?」
「ヴィス君のこと?」

 どうって、どういうことだろう。毛並みを気にしてたから、毛並みのことかな。

「毛が生えたら綺麗だと思うよ?」
「!それならルイがご飯を毎日作ってくれ!俺、食べるから!」
「え、僕?それは……」

 今日はお姉ちゃんにご飯を食べさせるために急遽キッチンを借りただけだ。
 熊獣人さんの態度から、多分一番偉い立場にいるであろうドンドさんをチラリと視線を送ると、目が合って微笑まれる。

「アカネはルイ君の作るご飯が一番美味しいようだ。そしてアカネの家族であるアサヒ君も。私の愚息……ヴィスもあんなに食事をしてくれた。感謝している」
「い、いえ。僕は料理ぐらいしか自信がないので」

 他は人並みか人並み以下しかできないポンコツなのだ。

「謙遜しないでくれ。元々ヴィスは美しい銀色の獣毛なんだ。ヴィスも今のように食事を食べていれば健康になり、気にしている毛のパサつきも艶も戻るんだが」
「銀色?」

 ヴィス君の獣毛は元は銀色だったのかとびっくりした。
 この灰色が艶々の銀色になるのを想像して、綺麗だろうなと見てみたい気持ちがちょっと出てくる。

「ああ。金毛のバイオレットと一緒にいる時は眩しいぐらいだった。それでルイ君。ルイ君は急に知らない場所に来て慣れるだけでも大変だと思う。だから行き過ぎた頼みだとは承知しているが、よければルイ君の家族であるアカネとアサヒ君に加えて、ヴィスの食事係になってくれないか?」

 ドンドさんからもお願いされた。
 ドンドさんに同調するようにヴィス君も前のめりで僕の両手を取る。

「俺はルイのご飯を食べたい。ルイのご飯食べたらすぐにかっこよくなる。な?お願いだ、作ってくれ」

 ヴィス君グイグイくる。
 僕は先程の食事風景を思い出した。ご飯をあんなに美味しく食べてくれたヴィス君。それなのにここの食事が合わないために、栄養不足でこんな姿なのは悲しい気持ちになる。

 料理作ってあげたいな。
 自然とそう思った。

「えっと……、僕がヴィス君の食べれる料理を作れるかわかりませんけどそれでもいいですか?」
「いいに決まってる。頑張って食べる」

 ヴィス君が食い気味に答え、ドンドさんがそんなヴィス君を苦笑しながら見る。

「……だそうだ。ヴィスもこう言っているし、ルイ君お願いできないか?」

 今日会ったばかりの俺に、自分の息子の食事を任せちゃっていいの?と不安になるが、お姉ちゃんの弟だから信頼されてるのかもしれない。
 それなら嬉しい。

 信頼してくれるなら、僕は自分が唯一自信が持てる料理でお返しできたらいいな。
 そういえば熊獣人さん達の食事はラインさんが作ってるって言ってた。これからも、こうやってみんなで集まってワイワイと食べたい。それなら料理を別々に作るより、僕が一緒に作ったほうがいいんじゃないだろうか。

「では……食事係のラインさんがいいなら、みんなの食事も僕が作ってもいいですか?こうやってみんなで一緒に食べたいです」

 ドンドさんは僕からそんな風に言われるとは思っていなかったらしく少し驚いていたが、優しい笑みを浮かべた。

「それは願ってもない申し出だ。ラインは他の群れとの仲介役でよく留守にするので、ラインが作れないときは野菜をそのまま食したり、干し肉を噛んで過ごしていたから」
「あれを……すごいですね」

 あんな苦い野菜や干し肉をそのままで食べるなんて。一食なら耐えれる。でも毎食は無理だ。
 みんな僕が料理作ることに賛成してくれたので、僕はプレッシャーを感じつつも、好きな料理が異世界でもできることに、嬉しさを感じた。

「ではルイ君。みんなの食事も頼むよ」
「はい。頑張らせていただきます」

 料理頑張るぞと意気込んでいると、視界にヴィス君が入ってきた。しかも近い。

「なぁ、ルイ。今日俺の部屋に来ておしゃべりしないか?」
「え?あ、また!」

 ヴィス君が鼻にチュッてしてきた。もうまたチュウしてきた!お姉ちゃん達の前で恥ずかしいじゃないか!
 しかも部屋にキスしながら誘うなんて、絶対喋るだけで終わらないだろう。あんなこととかこんなこととか。恋愛経験ゼロでも何となくわかるんだからね!

「……瑠偉、あんた満更でもなさそうね」
「なっ!」

 僕の腕の中で抱っこされたままのお姉ちゃんが、ニヤニヤしながら小さな声で言ってきた。僕は顔を真っ赤にする。

「ルイ、どうだ?部屋に来るか?」
「い、行かない!」
「そうか……残念だ。だが気持ちが変わったらいつでも来ていい」

 ヴィス君は離れる間際に僕の口にキスをする。
 ……なんだかキスされるのに慣れていっている気がするんだけど。大丈夫か、僕。

 多分人間の姿だったら恋愛経験ゼロの僕は、テンパってそれは狼狽えると思う。でもヴィス君、ほっそり熊さんなんだよ。
 最初は怖かったけど、こんなに何回もキスされると怖くなくなるし……嫌じゃないんだよね。ちょっと離れていったのも寂しいし。

「ほら、満更でもな……」
「もう、お姉ちゃん黙って!」

 意地悪なお姉ちゃんに、ミルクスープをあげることをやめたかったけど、そうすると消化器官が未発達になるかもしれないので、揶揄られながら僕はお姉ちゃんのご飯介助。まったくもう。

 僕はとりあえず、異世界初めての料理をみんなに喜んで食べてもらってホッと安心しながら、みんなでご馳走さまと挨拶をした。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界でホワイトな飲食店経営を

視世陽木
ファンタジー
 定食屋チェーン店で雇われ店長をしていた飯田譲治(イイダ ジョウジ)は、気がついたら真っ白な世界に立っていた。  彼の最後の記憶は、連勤に連勤を重ねてふらふらになりながら帰宅し、赤信号に気づかずに道路に飛び出し、トラックに轢かれて亡くなったというもの。  彼が置かれた状況を説明するためにスタンバイしていた女神様を思いっきり無視しながら、1人考察を進める譲治。 しまいには女神様を泣かせてしまい、十分な説明もないままに異世界に転移させられてしまった!  ブラック企業で酷使されながら、それでも料理が大好きでいつかは自分の店を開きたいと夢見ていた彼は、はたして異世界でどんな生活を送るのか!?  異世界物のテンプレと超ご都合主義を盛り沢山に、ちょいちょい社会風刺を入れながらお送りする異世界定食屋経営物語。はたしてジョージはホワイトな飲食店を経営できるのか!? ● 異世界テンプレと超ご都合主義で話が進むので、苦手な方や飽きてきた方には合わないかもしれません。 ● かつて作者もブラック飲食店で店長をしていました。 ● 基本的にはおふざけ多め、たまにシリアス。 ● 残酷な描写や性的な描写はほとんどありませんが、後々死者は出ます。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

処理中です...