姉に巻き込まれて異世界転移〜ワガママ舌を満足させます〜

ぺんたまごん

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 ツネさんの家族は子ネズミさんが十匹ほどいた。ネズミって近くで見たことなかったけど、ハムスターみたいですごく可愛い。
 扉を叩くとお姉ちゃんと旭が笑いながら追いかけっこして遊んでいた。元気だなぁ。

「お昼ご飯できたよ」
「ごはん!お腹減ったー!」

 旭が僕に駆け寄ってくる。

「わぁ!ネズミさんいっぱい!」

 旭はパァと笑顔を弾けさせて子ネズミさん達を見た。ネズさんが子ネズミさん達を紹介してくれる。

「上からイチ、ニィ、サン、シ、ゴ、ロク、ナナ、ハチ、キュー、ジュって名前なんだ」
「数字じゃん!」

 旭が楽しそうに笑う。子ネズミさん達も姿を隠していない人間の旭が珍しいみたいで、みんな旭の周りに席をついた。
 か、可愛い!写真がないのが悔やまれる。


「ドンドさん、バイオレットさん。ツネさんとネズさんからお魚貰って、お昼作ったんです。みんなで食べようと思ってお連れしました」
「やぁドンド。この坊やにお昼の招待されたので、私たちもお邪魔しますよ」
「ツネさん達か。ああ、みんなで食べよう」

 ドンドさんのお部屋は広くて、机も熊さんが十人座れるぐらい大きいんだ。
 ツネさん達家族も持参した椅子に座って席に着いたので、それぞれの前に食事を置いて、いただきますと挨拶した。

 一番早く食べ始めたのはヴィス君。
 僕の料理姿を見ていたら食べたくて堪らないってずっと隣で言ってた。
 作ってる最中にちょっかいだしてきて、「僕のことも食べたい」って冗談言うもんだから、お鼻をピンって指で弾いてあげたよ。痛がってたからちょっと悪いなって思ったけど。
 ヴィス君が日本酒にかなり抵抗を感じてたみたいだったけど、カマの酒蒸しに手をつけてくれる。

「うまい!これあの発酵種使ってたやつだよな?魚のパサパサが嫌だったけど、これは骨が少し食べにくいが美味い!」

 酒蒸しは気に入ったみたい。嬉しいな。
 ドンドさんやツネさん達も発酵種や頭を食べることに抵抗があったみたいだけど、美味しくてびっくりした顔をしていた。クラクラする感じもないって。みんなの美味しそうな顔を見ると胸がほわほわするね。

「瑠偉、発酵種って何?」

 あら汁を飲んでいるお姉ちゃんが聞いてきた。

「日本酒だよ。日本酒が果実みたいに木に絡まって実ってたんだ」
「日本酒?!私飲みたい!」
「お姉ちゃんはまだスープと重湯しか食べれないよ……」
「くぅぅ!」

 悔しがるお姉ちゃん。酒豪のお姉ちゃんは日本酒にワイン、ビールをちゃんぽんしても潰れないんだ。すごいよね。
 でも熊獣人になったから体質変わってるかもしれない。こっちの人はお酒飲まないみたいだし。

「ってか刺身がある!私も刺身食べたい!」

 ドンドさんが生モノはまだダメだってお姉ちゃんを諭す。拗ねてあら汁をめちゃくちゃ食べてる。

「あー美味しいけど味噌欲しー!」

 お姉ちゃんは、味噌なしあら汁に不服なようだ。僕に味噌味噌と溢す。気持ちはわかるよ。僕も欲しいから。

「「ごちそうさまでした」」

 みんな綺麗に完食して、ホッと一息つくとヴィス君が僕の横に立っていた。

「今日のご飯も美味しかった」
「ありがとう。そう言ってくれると嬉しい」

 僕はニッコリとヴィスくんに微笑む。手料理が美味しいって言われて嬉しくないわけないもんね。
 するとヴィス君は俺の両手を掬うように持って、手で包み込んで口元に持っていく。
 ヴィス君の手の甲はふわふわだけど、手のひらは肉球だからしっとりモニモニしている。気持ちのいい手だなと思っていたら、手の甲に軽くキスをされた。

 またキスしたなって言おうと思ったけれど、ヴィス君の熱のある眼差しと合って、僕は口を噤んだ。

「ルイを俺の嫁にしたい。番になってくれ」
「ヴ、ヴィス君っ」
「……番になって欲しい。我慢できないんだ」
「うっ……」

 そんな顔で言わないで。
 ヴィス君は、顔に熱が集まった僕の顔を両手で包むように触れると、ベールをしている布越しから口にキスをし、ペロリと長い舌で舐められる。

 吸い込まれるようにヴィス君の瞳を見た。
 真っ黒な瞳と思っていたけれど、深いアメジストの色がとても綺麗だ。

 その瞳が笑うように細くなり、僕の顔を覆うベールを口元だけはだけさせ、もう一度僕の顔に近づいてくる。

 またキスされる、と思ったけれど僕は微動だにしなかった。

「あんた、いつの間に付き合ってたのよ?」
「!」

 お姉ちゃんの声で我に帰り、ヴィス君を引き剥がすように胸を押した。ヴィス君がグルルとお姉ちゃんに牙を向ける。

「アカネ……妹のくせに邪魔をするな」
「え、私?別にチューやめなくていいのよ。ただいつ付き合ったのか気になっちゃって」
「……こらアカネ。求愛の邪魔はしちゃいけないよ」

 ドンドさんも困った顔でお姉ちゃんを諭す。

「邪魔?してないわよ。お姉ちゃんに報告しなさいって思っただけよ」
「え、お姉ちゃんが気になるのはそこなの……?」

 私たち気にせずにチュチュしなさいよと言うお姉ちゃんに、見られていた気恥ずかしさで、僕は顔を茹蛸のようにした。ベールが隠してくれてたけどね。

 ツネさん達家族もヴィス君と僕が恋仲になるのに歓迎ムードだ。

 まだこっちきて一日目だよって僕が言うと、恋に時間は関係ないのよってお姉ちゃんが返答すると他のみんなもウンウンと頷いてた。
 獣人さん達の世界じゃ直感そど大事なものはないんだって。

「本能でコレだと思ったらすぐに捕まえないと他の者に取られてしまう可能性がある。それは絶対嫌だ。ルイは俺の嫁だ。ルイ、俺と番になってくれ」
「ううっ……」

 ヴィス君は熱のある声で僕に訴えた。
 僕は過去に、こんな風に好きと言われたことはないし、熱烈なアピールもしてもらったことがない。恋愛経験が未熟すぎてうまくは言えないけれど、この胸のドキドキは本物だ。
 ヴィス君とのキスも最初は驚いたし怖かったけど、嫌だとは思わなかった。
 だからヴィス君の気持ちに応えたい。そう思ったけど、一つ懸念がよぎった。

「僕、男の子だけどいいの?番って夫婦のことだよね?……男同士なら赤ちゃんできないよ?」

 お嫁さんと言っているならば僕を女の子と勘違いしている可能性がある。そう思ってハッキリと伝えるがヴィス君はそれは何の問題もないと言い切った。

「え、何で?」
「子種の貝を飲み続ければ雌に変化して子を成せるようになるからだ」
「こ、子種の貝……?」

 なんだそれ。

「ルイの世界にはないのか?雄同士や雌同士だった場合、子が成さないだろ。しかし子種の貝と言われる『ネコゼフネガイ』っていう貝の殻を粉砕して、小スプーン一杯を飲み続けると、一ヶ月ぐらいで身体が一時的に逆の性別に変化する。子どもを産んで、子種の貝の摂取をやめれば、元の身体に戻るから害もない」
「へ……」

 なんだかとんでもない貝が存在している。確かに地球でもカクレクマノミが性転換できることで有名だけど、人間である僕もできるのだろうか?
 ファンタジーな貝の存在を信じられない。

 妄想するように、思わず自分とヴィス君の間に子どもが産まれるのを想像した。
 ……熊さんの子どもが産まれたらお姉ちゃんみたいにコロコロした身体で生まれてくるんだよな……。絶対可愛い。

「ルイ、子を成すのはまだ先でもいい。だが俺はルイの見た目も料理も雰囲気も匂いも全て好きだ。今はみすぼらしい見た目だが、ルイの愛情こもった食事を食べれば俺は誰よりもかっこよく頼りになる男になる。だから俺を選んでくれ」

 ヴィス君の瞳がまっすぐと僕を見て、両手をギュッと握られる。うわっ、肉球に手が包まれてる。

「……う、うん」

 僕が辿々しく返事をすると、ヴィス君が「やった!」と歓喜して、ヴェールを剥いで唇に熱いキスをしてきた。

「きゃー!瑠偉おめでとう!」
「瑠偉兄ちゃんラブラブじゃん!ヒューヒュー♪」
「ヴィス、良かったな」
「ヴィスもとうとう世帯を持つのね。良かったわ」

 みんなが僕らのことを祝福してくれる。僕は照れながらもありがとうと気持ちを伝えた。
 するとみんなが拍手してくれてるのを気にせず、ヴィス君は僕をお姫様抱っこをして部屋から出て行こうとした。

「ヴィス君?!」
「愛し合いたい」
「?!?!」

 耳元で言われた熱の籠る言葉に、僕はパクパクと口を動かすしかできず、抱えられながらヴィス君の部屋に連れて行かれることになった。

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