死神の砂時計

蒼依月

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2話 11月14日

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「ふ、ふふ。あははっ。そうか。貴女は私の授業じゃなくて、私を見に来てたのね」
「そうなの!私、あなたのこと、すごく気に入っちゃったから」

 そう言うと、深雪はまた笑った。

(面白いなぁ、この子)

 思わず吹き出してしまう深雪。

「いいよ。内緒にしてあげる。またおいで。私も、最近は貴女を見つけることが癖になっちゃったんだ」


 それから深雪は、本当にレティが潜りであることを誰にも言わなかった。
 深雪は授業の最初にレティを探した。レティは決まって1番後ろの一番端に座っていた。深雪はレティと目を合わせると決まって笑いかけてくれた。


「では、今日はここまで」

 深雪が授業を締めた後、レティは深雪が教室を出るまで動かない。
 だから、誘うのは容易だった。

「ご飯、一緒に食べない?食堂行きましょ」

 2限目の授業終わり、深雪はレティを誘った。レティは最初、声をかけられたことに唖然としていたが、みるみるうちにその頬を紅潮させながら頷いた。

 学生食堂は第2校舎を出て中庭を進んだ先にある。レティは始めて入る場所に少し緊張した様子で、深雪の後ろにぴったりとついて行った。
 深雪に案内され、窓際の端の席に着く。
 深雪は自分の弁当を開いた。

「ねぇ、本当に食べないの?」
「はい。あまりお腹空いてなくて」

 死神はご飯を食べない。そもそも空腹という概念が無かった。それでも着いてきたのは、深雪ともっと長くいたいから。単純に彼女と仲良くなりたかった。
 彼女は俯いて自分の弁当を食べ始めている。伏せられた瞼に、暗めのアイシャドウが塗られている。

「白石先生」
「ん?」
「んふふ、呼んでみただけ」
「え?なにそれ」
「呼んだらこっち向いてくれるじゃない」

 レティは深雪の視線が弁当から自分に向いたことに満足そうに口角を上げた。
 深雪が昼食を食べている間、レティはずっと深雪を見つめていた。

「そんなに見つめられると緊張する」
「そんなこと言わずに、また行きましょう?」

 彼女達の昼食会は深雪の授業がある日は、毎日のように開かれた。そのうち、レティが昼食を何故だか食べないことを察して、深雪は自分の研究室で昼食を摂ることを提案した。レティはとても嬉しそうだった。

「先生はいつもここで研究をしているの?」
「そうね。授業がない時はだいたいここにいるわ」

 レティは部屋の中を一通り見回した。
 入って1番手前に応接用のソファとローテーブル、その奥にパソコンが2台置かれた机と、座り心地が良さそうな椅子が配置されている。壁際には研究に使うと思われる本がずらりと積み上がっていた。
 その中でも気になったのは、砂時計だ。机の上、ローテーブルの上、本棚や窓際にもいくつか置かれている。全てデザインが違うものだ。アンティーク調の物から、色がついた砂が入った現代的な物もある。

「砂時計、好きなの?」
「わかる?」
「これだけ置いてあればね」

 深雪は面白そうに笑った。

「好き、だね。砂時計は、ほら。引っ繰り返せば何度でも始まりがくるでしょう?それって何度でもやり直せるって意味があると思わない?」

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