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4話 11月28日
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(なんで……)
レティはその日、いつもの席に座って深雪を待っていた。授業が始まる1分前、深雪がいつもより少し遅めに登壇した。
いつものダークグレーのスーツにローヒールのパンプス。暗めのアイシャドウ、前髪をいつものようにサイドに流して、大好きな深雪が現れた。
心臓に砂時計を現して。
レティはしばらく動けなかった。それが困惑しているという事に、レティ自身気付いていなかった。今まで感じたことの無い焦りが背筋を走る。冷や汗が出て、口が乾いていく。レティは唾を飲み込んだ。
(違うわ、見間違いよ。先生が、そんな……急に……)
かぶりを振ってレティはもう一度深雪を見た。
深雪の胸に、心臓と同じ大きさの砂時計が見える。深雪の名前と同じ雪のような白い砂が、サラサラと流れ落ち始めている。
死が近い。深雪の死がどこからかやって来ている。
レティは深雪から目を逸らした。初めてレティから視線を外した。深雪は少しだけ訝しんだが、授業開始のチャイムが鳴り我に返って、普段通りに授業を始めた。
レティは俯いている。あんなに好きだった深雪を見ることが出来ない。
ぽた、と視界を埋めていた木目調の長机に水滴がこぼれた。
俯いた視線の先、それが自分の双眸から零れている事に、レティはしばらく気付けなかった。目元に違和感を感じて、指先で触れたら濡れていた。そこで初めて、自分が涙を流していることを知った。
死神は泣かない。そのはずなのに。
「わけが、分からないわ……」
レティは涙を拭いながら、そのまま教室を出た。
自分を目で追いかける深雪に気付きもせずに、レティはただひたすらに走った。
□□□□□□□□
レティが教室を出ていった。目元を指で拭って、もしかしたら泣いていたのかもしれない、と深雪は研究室の机に頬杖をつく。
レティが出ていったあの光景が、授業中も何度も何度も思い返されて、正直今日は授業どころではなかった。
(私を見て驚いたように見えた。私、何かしたかな……)
いくつになっても人間関係は難しい、と深雪は思う。
(でもまさか、30にもなってこんな風に一日中1人のことを考え続けることになるとは。レティ、今どこにいるんだろう)
外は朝から雨が降っていた。天気まで深雪の心を暗くしていく。
(駄目。もう帰ろう)
深雪はさっと立ち上がって机の上を片付ける。パソコン̤の電源を切り、黒のバックにポーチなどを詰めていた時、突然ドアをノックされた。
(こんな時間に?誰だろう)
時刻は9時をまわっている。ほとんどの職員は帰ってしまっているはずだ。
深雪は返事はせずに、ゆっくりとドアに近付く。何か、とても恐ろしいものがドアの向こうにいるような気がした。
ドアノブを捻る。深雪は少しだけドアを開け、その隙間からそれを見た。
「レティ!」
そこにはずぶ濡れのレティが、亡霊のように立ち尽くしていた。
レティはその日、いつもの席に座って深雪を待っていた。授業が始まる1分前、深雪がいつもより少し遅めに登壇した。
いつものダークグレーのスーツにローヒールのパンプス。暗めのアイシャドウ、前髪をいつものようにサイドに流して、大好きな深雪が現れた。
心臓に砂時計を現して。
レティはしばらく動けなかった。それが困惑しているという事に、レティ自身気付いていなかった。今まで感じたことの無い焦りが背筋を走る。冷や汗が出て、口が乾いていく。レティは唾を飲み込んだ。
(違うわ、見間違いよ。先生が、そんな……急に……)
かぶりを振ってレティはもう一度深雪を見た。
深雪の胸に、心臓と同じ大きさの砂時計が見える。深雪の名前と同じ雪のような白い砂が、サラサラと流れ落ち始めている。
死が近い。深雪の死がどこからかやって来ている。
レティは深雪から目を逸らした。初めてレティから視線を外した。深雪は少しだけ訝しんだが、授業開始のチャイムが鳴り我に返って、普段通りに授業を始めた。
レティは俯いている。あんなに好きだった深雪を見ることが出来ない。
ぽた、と視界を埋めていた木目調の長机に水滴がこぼれた。
俯いた視線の先、それが自分の双眸から零れている事に、レティはしばらく気付けなかった。目元に違和感を感じて、指先で触れたら濡れていた。そこで初めて、自分が涙を流していることを知った。
死神は泣かない。そのはずなのに。
「わけが、分からないわ……」
レティは涙を拭いながら、そのまま教室を出た。
自分を目で追いかける深雪に気付きもせずに、レティはただひたすらに走った。
□□□□□□□□
レティが教室を出ていった。目元を指で拭って、もしかしたら泣いていたのかもしれない、と深雪は研究室の机に頬杖をつく。
レティが出ていったあの光景が、授業中も何度も何度も思い返されて、正直今日は授業どころではなかった。
(私を見て驚いたように見えた。私、何かしたかな……)
いくつになっても人間関係は難しい、と深雪は思う。
(でもまさか、30にもなってこんな風に一日中1人のことを考え続けることになるとは。レティ、今どこにいるんだろう)
外は朝から雨が降っていた。天気まで深雪の心を暗くしていく。
(駄目。もう帰ろう)
深雪はさっと立ち上がって机の上を片付ける。パソコン̤の電源を切り、黒のバックにポーチなどを詰めていた時、突然ドアをノックされた。
(こんな時間に?誰だろう)
時刻は9時をまわっている。ほとんどの職員は帰ってしまっているはずだ。
深雪は返事はせずに、ゆっくりとドアに近付く。何か、とても恐ろしいものがドアの向こうにいるような気がした。
ドアノブを捻る。深雪は少しだけドアを開け、その隙間からそれを見た。
「レティ!」
そこにはずぶ濡れのレティが、亡霊のように立ち尽くしていた。
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