死神の砂時計

蒼依月

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15話 12月19日(2)

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 このままでは深雪の頭上にデスロードが突き刺さってしまう。レティの声は、深雪には届いていないようで、深雪はそのまま歩いていく。
 デスロードが深雪に迫る。レティはもう一度叫んだ。

「先生っ!!」

 深雪が立ち止まった。きょろきょろと左右に首を動かしている。
 口を動かして何かを言っているのが見えた。それが自分の名前だと分かる前に、レティは飛び出していた。
 凄まじい速さで深雪に向かっていくレティ。それはすでに人間のなせる技ではなかった。
 デスロードは止まらない。毎秒ごとに縮まっていくデスロードと深雪の距離に、レティだけが歯噛みしている。
 デスロードが深雪のふんわりとした髪に触れるまであと数十センチという距離まで近づいた時、レティが伸ばした手が、深雪に触れ、2人の視線が絡まった。
 
「レ───」

 ドォォン!!
 大きな衝突音とともに、とてつもない衝撃が体を打ち、旋風と砂埃が吹き荒れる。しばらく止まなかった茶色い雲のようなそれに、周りの人間も少なからず被害を受ける。皆それぞれに顔を手で覆ったり物陰に隠れたりした。
 そんな中、ヘラは空中に浮いて様子を俯瞰していた。その瞳は驚きで見開かれている。
 ようやく砂埃が晴れ、見えてきたのは抉れた地面と、そこから少しずれた場所で横たわる2人の姿。
 レティはゆっくりと体を起こし、庇った深雪を見下ろした。彼女の瞼は閉ざされている。

「先生……白石先生、起きて。起きて、先生。お願い……お願いよ……先生」

 レティが緩く肩を揺らすと、深雪が唸った。

「うっ」
「先生!」

 起き上がろうと身じろぐ深雪。レティはそっと体を離した。深雪は後頭部を打ったのか、顔をゆがめてそこをさすっている。

「先生、大丈夫?」
「まあ、なんとか……。レティこそ」
「私は何ともないわ」
「良かった」

 深雪はレティの後ろの、抉れた地面を見て唖然とした。

「何あれ。なにか落ちてきたの?」

 レティは何も答えずに、その抉れた部分を睨めつける。

「レティ」
「何?先生」

 深雪を振り向くレティの顔は、美しい笑顔だった。

「ありがとう。助けてくれようとしたでしょう?」
「助けられてよかったわ」
「レティが飛び出してきた時は何事かと思ったけど」

 深雪はふっと頬を綻ばせた。

「来てくれてよかったよ。おかげでまだ生きてる」

 『まだ』という言葉が、レティの胸を締め付ける。
 レティは深雪の胸部を見た。

(まだ、終わってない)

 深雪の砂時計の砂は、まだ落ち続けている。最初に見た時とは違い、上下の砂の量が逆転していた。
 レティは俯いて唇を結ぶ。無意識に拳を握りこんでいた。

「レティ?」
「……ねぇ先生」
「ん?」
「私、頑張るから」
「何を?」
「大丈夫ですか!?」

 深雪の問いかけは、騒ぎを聞き付けてやってきた警備員によって掻き消された。
 深雪は相変わらず後頭部を押えながら、警備員に事情を説明していた。と言っても深雪にも何が何だか分からない状況だったが。それでもできる限り、自分が見た事を伝えている。

 レティはその後ろ姿を見ながら、視線だけを上に向けた。そこには中空に浮かぶヘラが厳しい表情でレティを見つめていた。
 その手には数分前に深雪を襲ったおおきな両手剣が握られていた。
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