8 / 19
第1章
8話
しおりを挟む
ガーラの話口調はいたって冷静だった。まるで用意されたシナリオを読んでいるように、淡々と話を進めていく。だが組まれた手が彼の心情を表すように、何度も何度も組みかえされていた。
「僕はこことは全く別の世界から、突然召喚された。リース王国とは遠く離れたとある国の勇者計画によって、僕は勇者としてこの世界に来た。召喚された当時は右も左も分からず、ただ鍛錬に明け暮れる日々だった。ダンジョンをいくつか攻略しながら、気付いたら3年が経っていた。すると僕に魔王を倒すだけの力がついたことを知った国の連中は、僕を魔王討伐に繰り出した。結果として、君も知っている通り、僕は魔王を倒した」
ガーラはもう一度手を組みなおす。前のめりになった姿勢の彼とシオンの視線は交わらない。
「これでもう厳しい鍛錬ともお別れだと歓喜した僕だったが、地獄はここからが始まりだった。連中は魔王を討伐した僕を、どう扱っていいか考えあぐねていた。国の重要機密をいくつか知っている僕を野放しにするわけにはいかない。かといって、元の世界に戻る術も分からない。僕は完全に厄介者扱いだった。1年は王宮で暮らしていいことになったが、常に監視がついて回り自由はほとんど無かった。外に出ることも出来ずに缶詰め状態で、会えるのは一緒に鍛錬をした騎士団の数人だけ。そうして王宮で暮らす最後の日に突然、国王から望みは無いかと聞かれた。僕は外に出たいと伝えた。そうしたら……」
そこでガーラは言葉を詰まらせた。
「国の外に出るというのなら僕の友人を人質にとると言い出した。他国に情報を売るような真似をすれば、そいつを殺すと言った。僕はきっと王の逆鱗に触れてしまったんだろうな。あの時の僕は正気じゃなかった。外に出られるなら何でもいいと思っていたんだ。友人……さっき言った騎士団所属の奴なんだが、そいつに話も付けずにそれでいいと言ってしまったんだ。僕は王との謁見を済まし、友人に会った時に初めて後悔した。僕がいる限り国に監視を付けられる運命を彼に背負わせてしまった」
ガーラの表情が曇る。その時のことを思い出しているのだろうか。
「僕は自由と引き換えに、友人の命を取られた。それから、国王はどうせ国を出るなら、魔物を討伐しろと命令を下した。結局僕は事実上は国の使いってことだ。自由なんて、幻だった。魔物討伐の拠点をつくるために、僕はこの館を立てた。僕は物理攻撃より、魔法の方が得意なようで、頭で思えば大概のことは魔法で具現化できる。この館も、スイの人体変化も、魔法の一種だ。勇者になってよかった唯一の点と言っていいくらい役に立つ」
そこまで言って、ガーラは顔をあげてシオンの瞳を見つめ返した。
「これが、今までの僕の過去だ。シオン。改めて聞こう。僕たちと一緒に来る気は無いか?」
ガーラはシオンに向けて手を差し伸べた。その手のひらは、彼の背負う過去に付けられたと思われる傷跡が、痛々しく刻まれていた。
「僕はこことは全く別の世界から、突然召喚された。リース王国とは遠く離れたとある国の勇者計画によって、僕は勇者としてこの世界に来た。召喚された当時は右も左も分からず、ただ鍛錬に明け暮れる日々だった。ダンジョンをいくつか攻略しながら、気付いたら3年が経っていた。すると僕に魔王を倒すだけの力がついたことを知った国の連中は、僕を魔王討伐に繰り出した。結果として、君も知っている通り、僕は魔王を倒した」
ガーラはもう一度手を組みなおす。前のめりになった姿勢の彼とシオンの視線は交わらない。
「これでもう厳しい鍛錬ともお別れだと歓喜した僕だったが、地獄はここからが始まりだった。連中は魔王を討伐した僕を、どう扱っていいか考えあぐねていた。国の重要機密をいくつか知っている僕を野放しにするわけにはいかない。かといって、元の世界に戻る術も分からない。僕は完全に厄介者扱いだった。1年は王宮で暮らしていいことになったが、常に監視がついて回り自由はほとんど無かった。外に出ることも出来ずに缶詰め状態で、会えるのは一緒に鍛錬をした騎士団の数人だけ。そうして王宮で暮らす最後の日に突然、国王から望みは無いかと聞かれた。僕は外に出たいと伝えた。そうしたら……」
そこでガーラは言葉を詰まらせた。
「国の外に出るというのなら僕の友人を人質にとると言い出した。他国に情報を売るような真似をすれば、そいつを殺すと言った。僕はきっと王の逆鱗に触れてしまったんだろうな。あの時の僕は正気じゃなかった。外に出られるなら何でもいいと思っていたんだ。友人……さっき言った騎士団所属の奴なんだが、そいつに話も付けずにそれでいいと言ってしまったんだ。僕は王との謁見を済まし、友人に会った時に初めて後悔した。僕がいる限り国に監視を付けられる運命を彼に背負わせてしまった」
ガーラの表情が曇る。その時のことを思い出しているのだろうか。
「僕は自由と引き換えに、友人の命を取られた。それから、国王はどうせ国を出るなら、魔物を討伐しろと命令を下した。結局僕は事実上は国の使いってことだ。自由なんて、幻だった。魔物討伐の拠点をつくるために、僕はこの館を立てた。僕は物理攻撃より、魔法の方が得意なようで、頭で思えば大概のことは魔法で具現化できる。この館も、スイの人体変化も、魔法の一種だ。勇者になってよかった唯一の点と言っていいくらい役に立つ」
そこまで言って、ガーラは顔をあげてシオンの瞳を見つめ返した。
「これが、今までの僕の過去だ。シオン。改めて聞こう。僕たちと一緒に来る気は無いか?」
ガーラはシオンに向けて手を差し伸べた。その手のひらは、彼の背負う過去に付けられたと思われる傷跡が、痛々しく刻まれていた。
0
あなたにおすすめの小説
最強お嬢様、王族転生!面倒事は即回避!自由気ままに爆走しますけど何か?
幸之丞
ファンタジー
転生したら――まさかの王族。
豪華な生活は大歓迎だが、政治?儀式?婚約?
そんな面倒事、わたしには無理!
「自由に生きるわ。何が悪いの!」
そう考えた主人公エリーゼは、王家の常識を軽々とぶっ壊しながら、
好きなことだけを全力で楽しむ“自由至上主義”の王族ライフを爆走する。
だが、面倒事から逃げているはずなのに、
なぜか家族は勝手に主人公を「天才」「救世主」と勘違いし始め――
気づけば女神も巻き込む大騒動に発展していく。
面倒は回避、自由は死守。
そんな主人公の“予測不能な王族生活”が今、幕を開ける。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~
しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること!
8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。
どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる