聖女ですが追放されたので、怪しい3人衆と旅をすることにしました。

蒼依月

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第1章

9話

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 シオンは差し出された手をじっと見つめ、続いてガーラの紫がかった双眸を見定めた。

(本気、なんだ。本気で私を仲間として迎え入れようとしてくれてる)

 シオンは彼の手を取った。控えめに握って、困ったように笑った。

「皆さんのあんな重たい過去を聞かされて、断れると思っていたのですか?」
「それは……すまない。君をどうしても放っておくことができなくて」
「分かっています。私も、国に裏切られたようなものですから」

 ガーラは僅かに眉を下げてしまった。そんな顔をさせたいわけではなかったのだが。

「あの、色々と話してくれてありがとうございました。改めて。聖女のシオンです。これからよろしくお願いします」

 シオンは笑顔で言い、丁寧に頭を下げた。



□□□□□□□□


 
 スイを起こしに行くのは、もうシオンの日課になっていた。
 
「スイ、入るよ」

 ノックをしても返事がなかったので、一応断りを入れて部屋に入る。
 スイの部屋は彼女のイメージと同じ、翡翠色で統一された明るい部屋だった。子供っぽさは足りない気がするが彼女らしい部屋だ、と最初に入った時に思った。
 ここに来て10日程経っている。洗濯と食事の準備は、シオンの役目になっていた。王宮勤めだったといえど、やれることは自分でやってきた経験が役に立っている。

(そんなだから、かわいげがなかったのかな)

 散らかった部屋を見渡し、ベッドに向かう。こんもりと盛り上がった布団の塊がそこにあった。
 シオンはふっと笑みを浮かべてその塊に手を伸ばした。ゆさゆさと揺らしてみる。

「スイ、おはよう。朝ごはんできたよ。一緒に食べよう」
「んう……しお…ん…」
「そうだよ。起きて」
 
 スイは返事のようなそうでないような声をもらして、もそもそと布団から這い上がる。
 
「おは……お姉ちゃん」
「うん。おはよう」

 かすれた声で呼ばれ、思わず頬が緩む。スイが抱っこを要求してきたので、シオンはベッドの上に座り彼女を膝に乗せた。さすがに10歳の子供を抱っこしてダイニングまで行く体力は無かった。スイの身支度もしないといけない。
 スイがシオンの首のあたりに頬ずりをした。鱗が冷たくて気持ちがいい。

「スイ、顔洗っておいで。髪の毛とかしてあげるから」
「あい」

 スイは眠そうに目を擦りながら洗面所に向かった。

 スイの髪をとかして、服を着替えさせてダイニングに向かうと、すでにガーラ達2人は食べ始めていた。ここでは食事は個人で取るらしい。
 朝の挨拶を交わし、スイとシオンも席に着く。
 朝食を食べていると、ガーラが珍しく口を開いた。

「今日、魔物の退治に行く」
「え?今日?」

 シオンが驚いて問い返すと、ウェストが少し困ったように言った。

「お前、そういうことは遅くても昨日のうちに言ってくれよ」
「スイはいいよ」
「今度はどこなんだ?」
「カタリ村」
「カタリ村って、ここから近いな」
「スイも行く」

 3人でどんどん話が進んでいく。シオンが口を挟む隙も無い。

(これ、私も行っていいのかな。でも、なんか入り込める感じじゃない)

 朝食を食べる手をとめて逡巡していると、ガーラと視線がぶつかった。

「シオン。君にも来てほしいんだが、いいだろうか」
「え、あ、はい。大丈夫です」
「よかった」

 よかったというわりには不愛想な面差しに、シオンは呆気にとられる。

「ごめんな、シオン。こいつ、いつもこうでさ」
 
 ウェストが笑いながら謝ってくる。するとガーラは不貞腐れたようにウェストを睨んだ。

「おい」
「だってそうだろう?急に仕事に行くとか言い出して。しかも不愛想だしな、お前は」
「うるさい」
「ガーラが笑うときもあるよ。ちょっとだけど」

 シオンは3人のやり取りをどこか引いて見た。
 楽しい、そう思った。

(良かった。あの時ガーラさんの手を取って)



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