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第1章
12話
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スイの手には既にカラーの花が1本握られていた。
「あの」
「ふふ、いいのよ。それあげるわ。お金はいいから。新しく仕入れたものと明日取り変える予定だったの。だから、ちょうど良かったわ」
(気を遣わせちゃったかな。気を付けないと)
「ありがとうございます。すみません」
「いいって!お花も捨てられるよりよっぽど嬉しいと思うわよ」
リモの表情に嘘は無さそうだ。シオンは有難くその花を貰うことにした。
スイも満足そうにカラーの花を見つめている。
「スイ、今度から勝手に触ったりしちゃ駄目だよ」
「ん、分かった」
コクンと頷くスイ。膝をついていたシオンは立ち上がって、リモに訊ねた。
「あの、もう少し見ていてもいいですか」
「もちろん!」
特に花が欲しいわけでは無かったが、ただこの空間が好きだとシオンは思った。
足元には花束やブーケ用の生花、壁や天井にはドライフラワーが飾られていて、窓辺のちょっとしたスペースに土に植えられた小さな花たちが置いてある。どこを見ても花でいっぱいで、でもごちゃごちゃと散らかっている印象は無い。
(一面のお花畑にいるみたい。知らなかった、お花がこんなに心を落ち着かせてくれるなんて)
シオンは手近な花に近付き、その香りを嗅いだ。
「いい香りですね」
「その子はね、香りが評判の品種なのよ」
「そうなんですね。ずっと嗅いでいたいくらい」
シオンがそう言ってもう一度鼻を近づけた時、店のドアが開く音がした。
「いらっしゃいませ」
「シオン、スイ、こんなところにいたのか」
入ってきたのはガーラとウェストだった。
「話が終わった。そろそろ行こう」
「はい。リモさん、お花ありがとうございました。また来ます」
「ええ、待っているわ」
そのまま4人はレーヴを後にした。
ウェストがスイの握っているカラーを見て訊ねた。
「スイ、それはなんだ」
スイはその問いかけには答えず、シオンにカラーを差し出した。
「これ、シオンお姉ちゃんにあげる」
「え?」
「仲間になってくれたから。シオンお姉ちゃんが来てくれたの、スイ嬉しかったから、そのお返し。これ、細くて長くて、綺麗だから、シオンお姉ちゃんに似てるなって思ったの。だから、あげる」
「あ、ありがとう」
シオンは半分躊躇いながらそれを受け取った。
「嬉しくない?」
スイが眉を下げて聞いてくるので、シオンは慌てて首を振った。
「違うの!とても嬉しい。でも、私はそんな、何もしてないのにって」
3人はシオンからの言葉を待った。
「私、まだ皆さんのお仕事のお手伝いが出来るか分からないけど、精一杯頑張ります。だから、よろしくお願いします」
街の真ん中で頭を下げ始めるシオンに驚いたのは、ガーラとウェスト。ウェストは明らかに動揺して、頭を上げるようにシオンに言った。
顔を上げた視線の先で、ガーラと目が合う。紫がかった双眸が僅かに細められた。
「こちらこそ、よくついてきてくれた。スイだけじゃない。僕ら3人とも、君を歓迎している。心配するな。君の力は必ず僕たちの助けになる」
そう言って、ガーラは踵を返し歩みを進める。
今まで、こんなふうに言ってくれた人がいただろうか。
シオンは手元のカラーの花を見下ろした。
(これはこの花の力……なんてね)
だが、今まで喉に詰まっていた思いを伝えるきっかけをくれたのは、この花だ。
「シオンお姉ちゃん、行こ」
「うん」
シオンはカラーの花を傷めつけないように、そっと髪に挿してガーラを追いかけた。
「あの」
「ふふ、いいのよ。それあげるわ。お金はいいから。新しく仕入れたものと明日取り変える予定だったの。だから、ちょうど良かったわ」
(気を遣わせちゃったかな。気を付けないと)
「ありがとうございます。すみません」
「いいって!お花も捨てられるよりよっぽど嬉しいと思うわよ」
リモの表情に嘘は無さそうだ。シオンは有難くその花を貰うことにした。
スイも満足そうにカラーの花を見つめている。
「スイ、今度から勝手に触ったりしちゃ駄目だよ」
「ん、分かった」
コクンと頷くスイ。膝をついていたシオンは立ち上がって、リモに訊ねた。
「あの、もう少し見ていてもいいですか」
「もちろん!」
特に花が欲しいわけでは無かったが、ただこの空間が好きだとシオンは思った。
足元には花束やブーケ用の生花、壁や天井にはドライフラワーが飾られていて、窓辺のちょっとしたスペースに土に植えられた小さな花たちが置いてある。どこを見ても花でいっぱいで、でもごちゃごちゃと散らかっている印象は無い。
(一面のお花畑にいるみたい。知らなかった、お花がこんなに心を落ち着かせてくれるなんて)
シオンは手近な花に近付き、その香りを嗅いだ。
「いい香りですね」
「その子はね、香りが評判の品種なのよ」
「そうなんですね。ずっと嗅いでいたいくらい」
シオンがそう言ってもう一度鼻を近づけた時、店のドアが開く音がした。
「いらっしゃいませ」
「シオン、スイ、こんなところにいたのか」
入ってきたのはガーラとウェストだった。
「話が終わった。そろそろ行こう」
「はい。リモさん、お花ありがとうございました。また来ます」
「ええ、待っているわ」
そのまま4人はレーヴを後にした。
ウェストがスイの握っているカラーを見て訊ねた。
「スイ、それはなんだ」
スイはその問いかけには答えず、シオンにカラーを差し出した。
「これ、シオンお姉ちゃんにあげる」
「え?」
「仲間になってくれたから。シオンお姉ちゃんが来てくれたの、スイ嬉しかったから、そのお返し。これ、細くて長くて、綺麗だから、シオンお姉ちゃんに似てるなって思ったの。だから、あげる」
「あ、ありがとう」
シオンは半分躊躇いながらそれを受け取った。
「嬉しくない?」
スイが眉を下げて聞いてくるので、シオンは慌てて首を振った。
「違うの!とても嬉しい。でも、私はそんな、何もしてないのにって」
3人はシオンからの言葉を待った。
「私、まだ皆さんのお仕事のお手伝いが出来るか分からないけど、精一杯頑張ります。だから、よろしくお願いします」
街の真ん中で頭を下げ始めるシオンに驚いたのは、ガーラとウェスト。ウェストは明らかに動揺して、頭を上げるようにシオンに言った。
顔を上げた視線の先で、ガーラと目が合う。紫がかった双眸が僅かに細められた。
「こちらこそ、よくついてきてくれた。スイだけじゃない。僕ら3人とも、君を歓迎している。心配するな。君の力は必ず僕たちの助けになる」
そう言って、ガーラは踵を返し歩みを進める。
今まで、こんなふうに言ってくれた人がいただろうか。
シオンは手元のカラーの花を見下ろした。
(これはこの花の力……なんてね)
だが、今まで喉に詰まっていた思いを伝えるきっかけをくれたのは、この花だ。
「シオンお姉ちゃん、行こ」
「うん」
シオンはカラーの花を傷めつけないように、そっと髪に挿してガーラを追いかけた。
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