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第3章
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ミカエルは咄嗟にルネをアルベルトから隠すように庇った。自然と抱きしめられる体勢になって、ルネはミカエルの腕をつかんだ。
「ミカエル、様っ。ど、どうしてアルベルトが……」
「分からない。でも、我々を探している感じではないな」
ルネを抱きしめながらアルベルトを視線だけで追う。
彼の服装は騎士団の鎧ではなく、庶民が着るような服装だった。そして何人かのガタイの良い男を連れている。恐らく同じネイティア家の騎士団員だろうとミカエルは推測した。アルベルトは彼らと何か話をしながら、通りを過ぎて次第に見えなくなった。
ふう、と息をつきミカエルはルネを離す。
「すまない。苦しくなかったか?」
「大丈夫ですわ」
気丈に答えたつもりだったが、声は震えてしまったし、ミカエルの腕をつかむ手を離せない。
ミカエルはもう一度ルネを抱きしめた。今度は綿でくるめるように、優しく。
「大丈夫。変装もしているし、気付かれていないよ。大丈夫だ」
「は、はい……」
ミカエルの体温がルネと混ざる。温かくて柔らかくて、なにより安心する。
「ルネ。すまないが……」
「分かってますわ。帰りましょう、ミカエル様」
ルネはミカエルに変な心配をかけまいと笑って答えた。
でも残念に思ったのは隠し切れなかった。楽しみにしていた買い物も出来ずに、会ってはいけない人を見かけてしまった。こういう時、改めて自分はあくまで家から逃げている最中なんだと痛感する。
(でもお父様。隣国までアルベルトを向かわせるなんて、何を考えているのですか。それほどまでに私を……)
身震いがする。自分の父が同じ人間に思えない。彼の執着心が気持ち悪くて仕方がない。
ルネはミカエルの腕を強く引いた。
「早く帰りましょう、ミカエル様」
今は一刻も早く安全な場所に戻りたい。ただそれだけだった。
夜。ルネは悪夢に泣いていた。
「やめて……お義母、様……」
蚊の鳴くような声で寝言を言うルネの傍に、ミカエルはいた。今日は一緒に寝たいとルネが申し出てきたときは驚いたが、彼女はこのことを予見していたのかもしれない、とミカエルは思う。
1階のソファの上でルネの手を握り、頭を優しく撫でる。
今日の悪夢の原因はきっと昼間のアルベルトのことだ。彼を見てから、ルネは分かりやすく怯えてしまっていた。この調子だと、起きた時にさらに涙を流して泣いてしまう。それを考えるだけで胸が痛い。彼女の傷がまだ癒えていないことを、はっきりと見せつけられるからだ。自分の力不足にやるせない思いがこみ上げてくる。
(どれだけ私が強くても、どれだけ私が大丈夫だと告げても、彼女の本当の意味での安寧は訪れないのか)
そのことがひどく悲しい。彼女には「守ってやる」という言葉だけでは足りないのか。なら何を与えればルネは安心してくれるのだろう。
アルベルトのことも気がかりだ。彼があの街にいた理由が分からない。
(だが今日行った街は砂蛸の一件の街へ向かう通り道にある。もしかしたら噂を聞きつけて調べに来たのか?だが国を跨いでとなると国王の許可が必要なはず。まさかそれを許可したのか?裏切り者と知っているはずなのに?)
ミカエルはかぶりを振る。
(いやそれは考えにくい。だとすると国王の許可なく調べに来ているということになるが、正義感の強いアルベルトがそれを容認するとも思えない)
膝の上で泣きながら眠るルネの様子を見ながら、ミカエルは嫌な予感を感じていた。
(アルベルト。まさか何かに巻き込まれているのか……?)
「ミカエル、様っ。ど、どうしてアルベルトが……」
「分からない。でも、我々を探している感じではないな」
ルネを抱きしめながらアルベルトを視線だけで追う。
彼の服装は騎士団の鎧ではなく、庶民が着るような服装だった。そして何人かのガタイの良い男を連れている。恐らく同じネイティア家の騎士団員だろうとミカエルは推測した。アルベルトは彼らと何か話をしながら、通りを過ぎて次第に見えなくなった。
ふう、と息をつきミカエルはルネを離す。
「すまない。苦しくなかったか?」
「大丈夫ですわ」
気丈に答えたつもりだったが、声は震えてしまったし、ミカエルの腕をつかむ手を離せない。
ミカエルはもう一度ルネを抱きしめた。今度は綿でくるめるように、優しく。
「大丈夫。変装もしているし、気付かれていないよ。大丈夫だ」
「は、はい……」
ミカエルの体温がルネと混ざる。温かくて柔らかくて、なにより安心する。
「ルネ。すまないが……」
「分かってますわ。帰りましょう、ミカエル様」
ルネはミカエルに変な心配をかけまいと笑って答えた。
でも残念に思ったのは隠し切れなかった。楽しみにしていた買い物も出来ずに、会ってはいけない人を見かけてしまった。こういう時、改めて自分はあくまで家から逃げている最中なんだと痛感する。
(でもお父様。隣国までアルベルトを向かわせるなんて、何を考えているのですか。それほどまでに私を……)
身震いがする。自分の父が同じ人間に思えない。彼の執着心が気持ち悪くて仕方がない。
ルネはミカエルの腕を強く引いた。
「早く帰りましょう、ミカエル様」
今は一刻も早く安全な場所に戻りたい。ただそれだけだった。
夜。ルネは悪夢に泣いていた。
「やめて……お義母、様……」
蚊の鳴くような声で寝言を言うルネの傍に、ミカエルはいた。今日は一緒に寝たいとルネが申し出てきたときは驚いたが、彼女はこのことを予見していたのかもしれない、とミカエルは思う。
1階のソファの上でルネの手を握り、頭を優しく撫でる。
今日の悪夢の原因はきっと昼間のアルベルトのことだ。彼を見てから、ルネは分かりやすく怯えてしまっていた。この調子だと、起きた時にさらに涙を流して泣いてしまう。それを考えるだけで胸が痛い。彼女の傷がまだ癒えていないことを、はっきりと見せつけられるからだ。自分の力不足にやるせない思いがこみ上げてくる。
(どれだけ私が強くても、どれだけ私が大丈夫だと告げても、彼女の本当の意味での安寧は訪れないのか)
そのことがひどく悲しい。彼女には「守ってやる」という言葉だけでは足りないのか。なら何を与えればルネは安心してくれるのだろう。
アルベルトのことも気がかりだ。彼があの街にいた理由が分からない。
(だが今日行った街は砂蛸の一件の街へ向かう通り道にある。もしかしたら噂を聞きつけて調べに来たのか?だが国を跨いでとなると国王の許可が必要なはず。まさかそれを許可したのか?裏切り者と知っているはずなのに?)
ミカエルはかぶりを振る。
(いやそれは考えにくい。だとすると国王の許可なく調べに来ているということになるが、正義感の強いアルベルトがそれを容認するとも思えない)
膝の上で泣きながら眠るルネの様子を見ながら、ミカエルは嫌な予感を感じていた。
(アルベルト。まさか何かに巻き込まれているのか……?)
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