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最終章
最終話 夕生※
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丈が独り言みたいに呟く。夕生は丈の腕を弱い力で握った。
「ん、は、ああ……じょ、丈」
「大丈夫、怖くないよ」
丈は片手で夕生の手を軽く握って、頬にキスを落とす。耳元で囁いた。
「気持ちよくなれるとこだから」
「そ、そうなんだ」
「うん」
しこりをトントンと甘く叩かれて、声があふれる。
「あっ、は……ああ、声、出る」
「出して」
丈が囁く。夕生はこく、と頷く。
これまで、丈に触れられる日を期待して自分でもアナルを解していた。
早く丈が入れるように。丈を迎えられるように。丈が気持ちよくなれるように。
不思議なこの体はローションがなくても愛液が溢れてくる。今まではそうして一人で指を濡らしていた。
でもこんな風に気持ちよくなったことはない。
丈に触られるだけでこうも違うんだ。
「ああっ、……っ、う、んっ」
中を満遍なくかき混ぜられて、内壁を優しく擦ってくる。ローションと蜜液がグチュグチュと音を立てた。ますます溢れていってる。
じゅんと、中が疼き始めて腰がびくびく揺れる。丈が全部見守ってくれるから夕生は素直に反応した。
「うっ、はっ……はっ、ああ!」
またしこりを撫でられる。指で挟んだり、押し込められたり、優しく愛でられる度、声が大きくなる。
「あ、ううっ……っ! あっ、あ」
「夕生」
「じょ、丈……、そこ、あっ、んんぅ」
「気持ちいい?」
「うん、きもちぃ、はあ……あ、う、ぅ」
中が熟れて熱くなっていく。どうしよう。もうこんなに気持ちがいいなんて。
丈はしきりに頬や目元、そして唇までにキスしてくる。夕生を安心させるためもあるかもしれないが丈がしたくてしているみたいだった。
秘部を撫で回されて、唇が緩んでしまう。丈の舌が入り込んできて、くちゅと口内を荒らし始めた。
「ふっ、んんぅ、ん……っ」
「夕生、」
「あっ、うあっ、あっあっ」
「好き」
口も下も丈にいじられている。頭の中に入り込む声までも夕生を刺激した。
全部が丈で一杯で気持ちいい。
……でもこれからもっといっぱいになる。
それを想像するとナカが勝手に丈の指を締め付けた。
「うぅ~~っ、あ……っ」
「すげぇうねってる」
丈の低い声でより腹が疼く。気持ちいいが急激に高まって視界が潤む。
夕生は開いた唇から声を漏らした。
「あ、もう、イッちゃうかも……」
「夕生」
「んぁ、……え?」
突然、指が抜けていくので夕生は目を見開いた。
丈は目元に唇を押し付けてから、鼻先の触れる距離で囁く。
「挿れていい?」
掠れた声に胸がきゅうっと苦しくなる。
夕生は首を上下に振って、縋り付くように丈の首に腕を回した。
「入って、丈」
「……あー、もう、夕生……」
丈は「大好き」と言って余裕ない笑みを溢した。
少し顔が離れて、太ももを抱えられる。
とろとろに解れたアナルに丈の太いかたまりがゴム越しに当たる。ずっと下の方で揺れていた丈のペニスは硬く勃起していて、夕生は目にするたび、ドキドキしてたまらなかった。
丈が腰を支えてくる。
「挿れるよ」
「うん」
夕生が答えると同時、ずぷっと体内に熱い猛りが侵入した。
「あっ、あ~~~~……っ!」
「……くっ」
指とは全く違う重たい塊がゆっくりと中に押し分けて入ってくる。その圧倒的な質量に息が止まった。
「~~~~~っ、ぅ、あっ」
「夕生、」
丈も堪えるような苦しげな顔をしている。それでも夕生を気遣ってくれるので、それもまた胸をきつく締め付ける。
硬いペニスが、狭くぬかるんだナカを押し広げながら奥まで到達する。熱くて、大きい。夕生はその圧迫感の凄まじさに歯を噛み締めた。
「ふ、ぅ……ぐ、……ッ」
「夕生、息して」
すると丈が頬を撫でてくる。
その暖かさに夕生は強く結んだ唇を解いた。
丈も安心したようにふっと微笑む。その笑みは胸に熱をもたらし、忽ちブワッと広がっていく。
「痛くない?」
「いたく、ない」
本当は苦しいけれど夕生は自然とそう呟いていた。
苦しさよりも喜びの方が強かったからだ。
「丈がいる。嬉しい、うれしい」
「……あーあー」
丈は俯いて噛み堪えるように唸る。
それから腰を抱え直すと、光の宿ったような鋭い目つきで夕生を見つめてきた。
「動いていい?」
腹のナカは丈でいっぱいだった。沢山解されて愛でられて愛液でぬめる内壁が、丈の膨らみを丸々飲み込んでいる。
丈が必死で動かずに、ペニスをナカに馴染ませてくれているのがわかる。
でも夕生は、丈のその強い眼差しの先が見たかった。
「うん……動いて」
丈の真剣で切迫した目つきはまるで獲物に目をつけたようだった。
夕生は今まで長い間丈と共にいた。夕生にとって丈は優しい幼馴染で、好きな人。
丈はよく『かっこいいアルファ』と言われるけど、今まで夕生は丈の第二性を特に意識したことはない。
けれど今初めて、
(——アルファだ)
と思った。
グレーの瞳に鈍い光が混じっている。
今からアルファに喰われるんだ……。
口内に唾液が滲んだ。硬い性器の埋まるナカがさらに熱くなる。
それが嬉しくてたまらないのは、アルファはアルファでも相手が丈だからだ。
「んあっ、は……あっ、ッ~~~!」
「う、」
ゆっくりとペニスが動き出す。すっかり火照った内壁をずるっと擦り上げながら、引いては押してとストロークが始まる。
奥まで埋め込まれるたびに声が溢れ出た。
「んぁ、あっうっ、は、んん~~……っ」
丈の性器は硬く大きくて、夕生の狭い内壁は限界まで広がっている。
だらだらと愛液が溢れ出てローションと絡み泡を立てる。淫らな水音もより強くなっていった。
「あっ、は、は、んんっ」
「夕生、」
「丈、じょ、丈……っ」
律動が激しくなっていく。前後に動くペニスが夕生の体を揺らす。
内壁全体が丈の硬いペニスで愛撫されて熱く蕩けていた。最初は凄まじかった圧迫感もその熱に溶かされていく。
夕生は丈の首にしがみついた。丈が心配そうに問いかけてくる。
「夕生、苦しくない?」
「……気持ちいい……」
丈の動きが数秒止まる。
夕生は、涙の滲んだ瞳で丈を見上げた。
「どうしよう、初めてなのに気持ちいい……」
気持ちよくて気をやりそうだ。夕生のペニスも勃ち上がって、腹の上で揺れている。
丈は唇を引き結んでから、溢れるような笑みを漏らした。小さく「よかった」と付け足し、上半身を倒してくる。
夕生の背中に丈の腕が回る。
抱きしめられると同時、また律動が再開した。
「あっ、あっあっ、んん~~ッ!」
浅いところの敏感なしこりを擦り上げるように突き上げてくる。夕生の頭の中に快感の火花が散った。
ギリギリまで引き抜かれては、奥まで押し込まれる。体が揺れるほどに激しく突き上げられるけど、丈に抱きしめられているから逃げることはできない。
「あっ、は、んんぅ、うっぐ、~~~……ッ」
「は、夕生、」
丈の求めるような声が愛しくて堪らなかった。
でも夕生もまた丈を求めている。どれだけ激しく突かれても、決して丈の体を抱きしめて離さない。
「ああ……はっ、ああーっ、うう……っ」
声は甘い嬌声となって際限なく溢れ出て。
心も体も繋がった場所も、どろどろに蕩けていくみたい。
もう限界が近かった。それを丈に伝えたくて潤んだ瞳でじっと彼を見つめる。
すると、喘ぎ声が漏れるだけで何も言ってないのに、丈が何か気付いて、
「夕生?」
と声を落とす。
夕生はもう丈が好きすぎて泣きたかった。
涙を堪えて、「じょう」と拙く呟く。
「も、イきそう」
「うん、イッていいよ。俺ももう出そう」
「丈もきて」
「……あー好きだ、」
「んんっ、あ、うぁ~~……!」
丈は吐息をこぼすと、グッと腰を押し付けてくる。
奥に先端がコツンと当たる。そのままぐりっと押し付けられるともうダメだった。
夕生はぎゅっと丈を強く抱きしめる。丈がもう一度腰を引いて、またグッと奥まで差し込んでくる。
電流が走ったみたいだった。快感の波が頭まで上ってくる。
「あ、ああぁ、っ、……~~~~っ!」
「夕生……」
体に力が入ってより強く抱きしめる。丈もまた、同じだけの力強さで夕生を抱きしめ返してくれた。
びくびくっと太ももが痙攣する。達したナカが射精する丈のペニスを締め付ける。
二人して絶頂を迎えて荒い呼吸を吐いた。
丈が隣に倒れ込んで、横から夕生に口付けてくる。
長い間キスをしていた。角度を変えて何度でも。深い口付けになるとまた二人の間に欲情が孕んだ。
今日はもう何も気にせず抱き合っていられる日だから、二人は思うままに肌を重ねる。丈と夕生は同じ肌の熱さを、いつまでも確かめた。
昼前に集まったのに、気が付くともう夕暮れが迫っていた。
寝室のベッドで夕生と丈は裸のまま寝転がっていた。もう三回もしたから二人とも疲れていて、ただ話をしたりキスをしたりして過ごした。
今日は丈の家に泊まると家族には伝えている。だから夕飯は何にしようと丈と話していて、もうどこか出掛けるのも面倒だから、何か出前にしようと話し出した。
「夕生食べたいものある?」
「思い浮かばないかも」
「じゃあピザとかは?」
「いいね」
「何頼もう。サイト見る」
「うん」
丈が裸のまま立ち上げる。テーブルに置いた携帯の元へ歩き出したかと思えば途中で止まり、夕生にブランケットを被せてくる。
「寒くない?」
「そうでもないよ」
「ならいいけど」
と言いながらも体全体をブランケットで包んでくる。夕生はぼうっとされるがまま、丈を眺めていた。
携帯を手にした丈がベッドに腰掛ける。丈は夕生の髪を撫でながら携帯を操作した。
夕生はのろのろと上半身を起こして丈の隣に座る。丈の肩に寄りかかって目を閉じると、丈が弾んだ声で「ほら」と言うので瞼を開いた。
「見て夕生、ハチミツとチーズのピザあるよ」
「美味しそう……」
「頼もう」
「うん」
「あ、見て、夕生」
「うん?」
次は何のピザだろうと丈を見つめるが、彼が見ていたのは携帯ではなかった。
丈が腰を上げて、窓へ近づく。レースカーテンを開けば外の景色が見える。
そこは夕暮れの街だった。
「綺麗な夕焼け」
丈は言って、夕生の元へ笑いかける。
丈は隣に腰掛けると「空がピンクで、雲は黄金に燃えてるね」と言った。
夕生はその光景を眺めながら呟く。
「うん……」
「なんか今日の夕焼け、特に綺麗かも」
「そうだね」
こんなに美しい夕刻の空を見ていると思い出すものがある。
子供の頃に帰り道で見た景色が脳裏に蘇るのだ。夕生は思わず微笑んで、吐息をつく。
すると丈がいきなり、
「夕生さ、子供の頃、班行動で帰ったこと覚えてる?」
と切り出した。
夕生は目を丸くして丈を見つめた。薄く開いた唇から、「うん」とこぼす。
「忘れるはずないよ。丈と出会ったきっかけだから」
びっくりした。
夕生も子供の頃を思い浮かべていたが、丈もまたそうだったのか。
けれど丈が思い出していたのはより具体的な記憶のようだった。
彼は「昔、」と続ける。
「名前の由来を聞かれた時があっただろ」
「え……」
「覚えてない?」
丈は優しく目を細めた。
「俺は答えたけど、夕生は聞かれたくないみたいに俯いててさ」
夕生は唾を飲み込んでから、ゆっくり頷く。
それは特に夕生の記憶に刻まれる夕暮れの時間だ。あんなに昔のことなのにまさか丈も覚えているなんて考えなかった。
頷いてから「覚えてる」と答える。丈は少し真面目な顔をした。
「あれって、どうしてって聞いていい?」
夕生は唇を閉ざして、数秒考え込んだ。
あの時の緊張感を思い起こす。誰にも聞かれないように、夕生が問われる番が来ないようにじっと俯いていた。
でも今なら穏やかな気持ちで答えられる。
「……俺には意味がなかったから」
ここにいるのが丈だから。
夕生は裸のまま、裸の心で告げた。
「夕生は、夕方に生まれたからって、それだけだったんだ」
「そっか」
丈は頷く。丈が夕生の肩を抱いて、二人は密着する。
しばらく今ここに在る夕暮れを眺めていた。不意に、丈が言った。
「夕生は俯いてたから聞こえてなかったんだね」
「え?」
驚いて丈を見上げる。
丈は横顔で微笑んだ。
「上の学年で一番うるさい男子も同じだったよ」
「……」
夕生は啞然と黙り込んだ。一度唾を飲んでから、問いかける。
「同じ?」
「そう。覚えてない? うんこだか何だか叫んでたやつ」
「あ……いたかも」
「春生って名前だったんだよ、その子。親に『春に生まれから』って言われたんだってさ」
夕生はひゅっと息を呑んだ。
同じだ。
それはまさしく夕生と同じ由縁だった。
丈が目を細める。
「みんな良い名前だねって言ってたよ」
夕生は唇を噛み締める。
……知らなかった。あの時は息を潜めるのに精一杯だったし、他の子の名前に意味があると知らしめられるのが怖くて俯いていたのだ。
でも同じ子がいた。そしてその子は。
「春は俺の季節だって笑ってた。確かにそうだよな」
そう語る丈の目は、
(夕方は夕生の時間だ)
というようだった。
「……」
夕生はどこか脱力した気分を味わう。思わず自分の手の甲を見下ろす。
すると丈が手を握ってくれる。
だから夕生はまた顔を上げて、丈を見つめた。
「……丈」
「うん?」
どうしよう。
とても心が軽くて、何もかもが明るく見える。
眩しすぎる夕暮れのせいなのか、ここに自分を愛してくれる人がいるからなのか。
驚くほど楽観的な気分になって、夕生は言った。
「俺の名前もいい名前かも」
「かもじゃなくてそうなんだよ」
丈は即答した。
間を置かず強く断言する。
「夕生のものなんだから」
「……」
——子供の頃、夕生は夕暮れ時が嫌いだった。
他の子達は夕飯の匂いがする家に帰って、家族と共にご飯を食べる。
でも夕生はただ一人夜を過ごすだけで、夜ご飯にあたたかな匂いなんてなかった。だから夕刻が嫌いで、怖かった。
一人になる時間が始まる時刻。ただ寂しいだけの時間が始まる合図。
それを知らせるのが燃え上がるような夕焼けだった。
……けれど。
「……そうだね」
今ではどうだろう。
心から安心して、あの燃え盛る太陽を見つめていられる。
「綺麗な夕焼け」
夕生は丈の肩に寄りかかって呟いた。丈も迷わず夕生の肩を抱きしめてくれる。すごく暖かくて心が溶けていく。もう。
夕刻はもう、一人になる時間ではない。
今日を見つめ直して明日に向かうための時間だ。
……丈の隣で。
「夕生の時間だな」
「うん」
丈の言葉を素直に受け止めて、未来へ向かって歩いていく。
(完結)
「ん、は、ああ……じょ、丈」
「大丈夫、怖くないよ」
丈は片手で夕生の手を軽く握って、頬にキスを落とす。耳元で囁いた。
「気持ちよくなれるとこだから」
「そ、そうなんだ」
「うん」
しこりをトントンと甘く叩かれて、声があふれる。
「あっ、は……ああ、声、出る」
「出して」
丈が囁く。夕生はこく、と頷く。
これまで、丈に触れられる日を期待して自分でもアナルを解していた。
早く丈が入れるように。丈を迎えられるように。丈が気持ちよくなれるように。
不思議なこの体はローションがなくても愛液が溢れてくる。今まではそうして一人で指を濡らしていた。
でもこんな風に気持ちよくなったことはない。
丈に触られるだけでこうも違うんだ。
「ああっ、……っ、う、んっ」
中を満遍なくかき混ぜられて、内壁を優しく擦ってくる。ローションと蜜液がグチュグチュと音を立てた。ますます溢れていってる。
じゅんと、中が疼き始めて腰がびくびく揺れる。丈が全部見守ってくれるから夕生は素直に反応した。
「うっ、はっ……はっ、ああ!」
またしこりを撫でられる。指で挟んだり、押し込められたり、優しく愛でられる度、声が大きくなる。
「あ、ううっ……っ! あっ、あ」
「夕生」
「じょ、丈……、そこ、あっ、んんぅ」
「気持ちいい?」
「うん、きもちぃ、はあ……あ、う、ぅ」
中が熟れて熱くなっていく。どうしよう。もうこんなに気持ちがいいなんて。
丈はしきりに頬や目元、そして唇までにキスしてくる。夕生を安心させるためもあるかもしれないが丈がしたくてしているみたいだった。
秘部を撫で回されて、唇が緩んでしまう。丈の舌が入り込んできて、くちゅと口内を荒らし始めた。
「ふっ、んんぅ、ん……っ」
「夕生、」
「あっ、うあっ、あっあっ」
「好き」
口も下も丈にいじられている。頭の中に入り込む声までも夕生を刺激した。
全部が丈で一杯で気持ちいい。
……でもこれからもっといっぱいになる。
それを想像するとナカが勝手に丈の指を締め付けた。
「うぅ~~っ、あ……っ」
「すげぇうねってる」
丈の低い声でより腹が疼く。気持ちいいが急激に高まって視界が潤む。
夕生は開いた唇から声を漏らした。
「あ、もう、イッちゃうかも……」
「夕生」
「んぁ、……え?」
突然、指が抜けていくので夕生は目を見開いた。
丈は目元に唇を押し付けてから、鼻先の触れる距離で囁く。
「挿れていい?」
掠れた声に胸がきゅうっと苦しくなる。
夕生は首を上下に振って、縋り付くように丈の首に腕を回した。
「入って、丈」
「……あー、もう、夕生……」
丈は「大好き」と言って余裕ない笑みを溢した。
少し顔が離れて、太ももを抱えられる。
とろとろに解れたアナルに丈の太いかたまりがゴム越しに当たる。ずっと下の方で揺れていた丈のペニスは硬く勃起していて、夕生は目にするたび、ドキドキしてたまらなかった。
丈が腰を支えてくる。
「挿れるよ」
「うん」
夕生が答えると同時、ずぷっと体内に熱い猛りが侵入した。
「あっ、あ~~~~……っ!」
「……くっ」
指とは全く違う重たい塊がゆっくりと中に押し分けて入ってくる。その圧倒的な質量に息が止まった。
「~~~~~っ、ぅ、あっ」
「夕生、」
丈も堪えるような苦しげな顔をしている。それでも夕生を気遣ってくれるので、それもまた胸をきつく締め付ける。
硬いペニスが、狭くぬかるんだナカを押し広げながら奥まで到達する。熱くて、大きい。夕生はその圧迫感の凄まじさに歯を噛み締めた。
「ふ、ぅ……ぐ、……ッ」
「夕生、息して」
すると丈が頬を撫でてくる。
その暖かさに夕生は強く結んだ唇を解いた。
丈も安心したようにふっと微笑む。その笑みは胸に熱をもたらし、忽ちブワッと広がっていく。
「痛くない?」
「いたく、ない」
本当は苦しいけれど夕生は自然とそう呟いていた。
苦しさよりも喜びの方が強かったからだ。
「丈がいる。嬉しい、うれしい」
「……あーあー」
丈は俯いて噛み堪えるように唸る。
それから腰を抱え直すと、光の宿ったような鋭い目つきで夕生を見つめてきた。
「動いていい?」
腹のナカは丈でいっぱいだった。沢山解されて愛でられて愛液でぬめる内壁が、丈の膨らみを丸々飲み込んでいる。
丈が必死で動かずに、ペニスをナカに馴染ませてくれているのがわかる。
でも夕生は、丈のその強い眼差しの先が見たかった。
「うん……動いて」
丈の真剣で切迫した目つきはまるで獲物に目をつけたようだった。
夕生は今まで長い間丈と共にいた。夕生にとって丈は優しい幼馴染で、好きな人。
丈はよく『かっこいいアルファ』と言われるけど、今まで夕生は丈の第二性を特に意識したことはない。
けれど今初めて、
(——アルファだ)
と思った。
グレーの瞳に鈍い光が混じっている。
今からアルファに喰われるんだ……。
口内に唾液が滲んだ。硬い性器の埋まるナカがさらに熱くなる。
それが嬉しくてたまらないのは、アルファはアルファでも相手が丈だからだ。
「んあっ、は……あっ、ッ~~~!」
「う、」
ゆっくりとペニスが動き出す。すっかり火照った内壁をずるっと擦り上げながら、引いては押してとストロークが始まる。
奥まで埋め込まれるたびに声が溢れ出た。
「んぁ、あっうっ、は、んん~~……っ」
丈の性器は硬く大きくて、夕生の狭い内壁は限界まで広がっている。
だらだらと愛液が溢れ出てローションと絡み泡を立てる。淫らな水音もより強くなっていった。
「あっ、は、は、んんっ」
「夕生、」
「丈、じょ、丈……っ」
律動が激しくなっていく。前後に動くペニスが夕生の体を揺らす。
内壁全体が丈の硬いペニスで愛撫されて熱く蕩けていた。最初は凄まじかった圧迫感もその熱に溶かされていく。
夕生は丈の首にしがみついた。丈が心配そうに問いかけてくる。
「夕生、苦しくない?」
「……気持ちいい……」
丈の動きが数秒止まる。
夕生は、涙の滲んだ瞳で丈を見上げた。
「どうしよう、初めてなのに気持ちいい……」
気持ちよくて気をやりそうだ。夕生のペニスも勃ち上がって、腹の上で揺れている。
丈は唇を引き結んでから、溢れるような笑みを漏らした。小さく「よかった」と付け足し、上半身を倒してくる。
夕生の背中に丈の腕が回る。
抱きしめられると同時、また律動が再開した。
「あっ、あっあっ、んん~~ッ!」
浅いところの敏感なしこりを擦り上げるように突き上げてくる。夕生の頭の中に快感の火花が散った。
ギリギリまで引き抜かれては、奥まで押し込まれる。体が揺れるほどに激しく突き上げられるけど、丈に抱きしめられているから逃げることはできない。
「あっ、は、んんぅ、うっぐ、~~~……ッ」
「は、夕生、」
丈の求めるような声が愛しくて堪らなかった。
でも夕生もまた丈を求めている。どれだけ激しく突かれても、決して丈の体を抱きしめて離さない。
「ああ……はっ、ああーっ、うう……っ」
声は甘い嬌声となって際限なく溢れ出て。
心も体も繋がった場所も、どろどろに蕩けていくみたい。
もう限界が近かった。それを丈に伝えたくて潤んだ瞳でじっと彼を見つめる。
すると、喘ぎ声が漏れるだけで何も言ってないのに、丈が何か気付いて、
「夕生?」
と声を落とす。
夕生はもう丈が好きすぎて泣きたかった。
涙を堪えて、「じょう」と拙く呟く。
「も、イきそう」
「うん、イッていいよ。俺ももう出そう」
「丈もきて」
「……あー好きだ、」
「んんっ、あ、うぁ~~……!」
丈は吐息をこぼすと、グッと腰を押し付けてくる。
奥に先端がコツンと当たる。そのままぐりっと押し付けられるともうダメだった。
夕生はぎゅっと丈を強く抱きしめる。丈がもう一度腰を引いて、またグッと奥まで差し込んでくる。
電流が走ったみたいだった。快感の波が頭まで上ってくる。
「あ、ああぁ、っ、……~~~~っ!」
「夕生……」
体に力が入ってより強く抱きしめる。丈もまた、同じだけの力強さで夕生を抱きしめ返してくれた。
びくびくっと太ももが痙攣する。達したナカが射精する丈のペニスを締め付ける。
二人して絶頂を迎えて荒い呼吸を吐いた。
丈が隣に倒れ込んで、横から夕生に口付けてくる。
長い間キスをしていた。角度を変えて何度でも。深い口付けになるとまた二人の間に欲情が孕んだ。
今日はもう何も気にせず抱き合っていられる日だから、二人は思うままに肌を重ねる。丈と夕生は同じ肌の熱さを、いつまでも確かめた。
昼前に集まったのに、気が付くともう夕暮れが迫っていた。
寝室のベッドで夕生と丈は裸のまま寝転がっていた。もう三回もしたから二人とも疲れていて、ただ話をしたりキスをしたりして過ごした。
今日は丈の家に泊まると家族には伝えている。だから夕飯は何にしようと丈と話していて、もうどこか出掛けるのも面倒だから、何か出前にしようと話し出した。
「夕生食べたいものある?」
「思い浮かばないかも」
「じゃあピザとかは?」
「いいね」
「何頼もう。サイト見る」
「うん」
丈が裸のまま立ち上げる。テーブルに置いた携帯の元へ歩き出したかと思えば途中で止まり、夕生にブランケットを被せてくる。
「寒くない?」
「そうでもないよ」
「ならいいけど」
と言いながらも体全体をブランケットで包んでくる。夕生はぼうっとされるがまま、丈を眺めていた。
携帯を手にした丈がベッドに腰掛ける。丈は夕生の髪を撫でながら携帯を操作した。
夕生はのろのろと上半身を起こして丈の隣に座る。丈の肩に寄りかかって目を閉じると、丈が弾んだ声で「ほら」と言うので瞼を開いた。
「見て夕生、ハチミツとチーズのピザあるよ」
「美味しそう……」
「頼もう」
「うん」
「あ、見て、夕生」
「うん?」
次は何のピザだろうと丈を見つめるが、彼が見ていたのは携帯ではなかった。
丈が腰を上げて、窓へ近づく。レースカーテンを開けば外の景色が見える。
そこは夕暮れの街だった。
「綺麗な夕焼け」
丈は言って、夕生の元へ笑いかける。
丈は隣に腰掛けると「空がピンクで、雲は黄金に燃えてるね」と言った。
夕生はその光景を眺めながら呟く。
「うん……」
「なんか今日の夕焼け、特に綺麗かも」
「そうだね」
こんなに美しい夕刻の空を見ていると思い出すものがある。
子供の頃に帰り道で見た景色が脳裏に蘇るのだ。夕生は思わず微笑んで、吐息をつく。
すると丈がいきなり、
「夕生さ、子供の頃、班行動で帰ったこと覚えてる?」
と切り出した。
夕生は目を丸くして丈を見つめた。薄く開いた唇から、「うん」とこぼす。
「忘れるはずないよ。丈と出会ったきっかけだから」
びっくりした。
夕生も子供の頃を思い浮かべていたが、丈もまたそうだったのか。
けれど丈が思い出していたのはより具体的な記憶のようだった。
彼は「昔、」と続ける。
「名前の由来を聞かれた時があっただろ」
「え……」
「覚えてない?」
丈は優しく目を細めた。
「俺は答えたけど、夕生は聞かれたくないみたいに俯いててさ」
夕生は唾を飲み込んでから、ゆっくり頷く。
それは特に夕生の記憶に刻まれる夕暮れの時間だ。あんなに昔のことなのにまさか丈も覚えているなんて考えなかった。
頷いてから「覚えてる」と答える。丈は少し真面目な顔をした。
「あれって、どうしてって聞いていい?」
夕生は唇を閉ざして、数秒考え込んだ。
あの時の緊張感を思い起こす。誰にも聞かれないように、夕生が問われる番が来ないようにじっと俯いていた。
でも今なら穏やかな気持ちで答えられる。
「……俺には意味がなかったから」
ここにいるのが丈だから。
夕生は裸のまま、裸の心で告げた。
「夕生は、夕方に生まれたからって、それだけだったんだ」
「そっか」
丈は頷く。丈が夕生の肩を抱いて、二人は密着する。
しばらく今ここに在る夕暮れを眺めていた。不意に、丈が言った。
「夕生は俯いてたから聞こえてなかったんだね」
「え?」
驚いて丈を見上げる。
丈は横顔で微笑んだ。
「上の学年で一番うるさい男子も同じだったよ」
「……」
夕生は啞然と黙り込んだ。一度唾を飲んでから、問いかける。
「同じ?」
「そう。覚えてない? うんこだか何だか叫んでたやつ」
「あ……いたかも」
「春生って名前だったんだよ、その子。親に『春に生まれから』って言われたんだってさ」
夕生はひゅっと息を呑んだ。
同じだ。
それはまさしく夕生と同じ由縁だった。
丈が目を細める。
「みんな良い名前だねって言ってたよ」
夕生は唇を噛み締める。
……知らなかった。あの時は息を潜めるのに精一杯だったし、他の子の名前に意味があると知らしめられるのが怖くて俯いていたのだ。
でも同じ子がいた。そしてその子は。
「春は俺の季節だって笑ってた。確かにそうだよな」
そう語る丈の目は、
(夕方は夕生の時間だ)
というようだった。
「……」
夕生はどこか脱力した気分を味わう。思わず自分の手の甲を見下ろす。
すると丈が手を握ってくれる。
だから夕生はまた顔を上げて、丈を見つめた。
「……丈」
「うん?」
どうしよう。
とても心が軽くて、何もかもが明るく見える。
眩しすぎる夕暮れのせいなのか、ここに自分を愛してくれる人がいるからなのか。
驚くほど楽観的な気分になって、夕生は言った。
「俺の名前もいい名前かも」
「かもじゃなくてそうなんだよ」
丈は即答した。
間を置かず強く断言する。
「夕生のものなんだから」
「……」
——子供の頃、夕生は夕暮れ時が嫌いだった。
他の子達は夕飯の匂いがする家に帰って、家族と共にご飯を食べる。
でも夕生はただ一人夜を過ごすだけで、夜ご飯にあたたかな匂いなんてなかった。だから夕刻が嫌いで、怖かった。
一人になる時間が始まる時刻。ただ寂しいだけの時間が始まる合図。
それを知らせるのが燃え上がるような夕焼けだった。
……けれど。
「……そうだね」
今ではどうだろう。
心から安心して、あの燃え盛る太陽を見つめていられる。
「綺麗な夕焼け」
夕生は丈の肩に寄りかかって呟いた。丈も迷わず夕生の肩を抱きしめてくれる。すごく暖かくて心が溶けていく。もう。
夕刻はもう、一人になる時間ではない。
今日を見つめ直して明日に向かうための時間だ。
……丈の隣で。
「夕生の時間だな」
「うん」
丈の言葉を素直に受け止めて、未来へ向かって歩いていく。
(完結)
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