成り上がれ、最強の魔剣士〜失墜した冒険者は騎士としてリスタートします〜

銀雪

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第三章 訓練と初めての依頼

『第三十二話 第三騎士団の訓練~中編~』

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 ダイマスが敗北を喫してから三分後、休憩していたべネック団長が立ち上がった。
 次の相手は……アリアか。

「二番目の相手はアリアだ。精霊使いだから魔法を主体として戦うのだろうな」
「ええ。もちろん近接戦闘の必要があれば剣も使えますよ?」

 イリナとともに剣の名家の娘として育ったアリアは、姉ほどではないが剣を扱えるらしい。
 近距離も遠距離もそこそこ出来るオールマイティー型だ。

「今回の試合も審判は俺がやります。両者構えて――始め!」
「氷の精霊よ、私の求めに応じて凍てつくほどの風を放て。【ブリザード】!」
「能力発動、【防御】!」

 俺が合図を出すと、アリアが氷の精霊を出して詠唱を開始した。
 べネック団長は先ほどの試合とは違って、防御の能力を掛けてから間合いを詰める。
 しかし、それをアリアが見逃すはずもなかった。

「今です。吹かせなさい!」

 アリアの凛とした声とともに、べネック団長を雪が混ざった風が邪魔する。
 べネック団長も剣の風圧で対応しようとするが、冷風の威力が強く埒が明かない。

「こうなったら……闇の精霊よ、私の求めに応じて……」
「させません! 精霊を捕縛っ!」

 氷の風を維持しつつ、べネック団長の命令を遂行しようとした精霊を捕縛した。
 まさに精霊使いという能力の真骨頂だな。

「相変わらず厄介だな……。だったらこれでどうだ?」
「――っ!?」

 自身に掛けている防御の能力をワンランク上げたのか、風の影響を受けなくなっている。
 アリアは顔を歪めて剣を構えた。

「近づかせたら負けですね。グリード式剣術の参、【八方斬・改】!」
「火焔式剣術の壱、【煉獄円斬】」

 八つの方向に無数の斬撃を放つ弾幕式剣術を放ったアリアに対し、べネック団長は炎を使って全ての斬撃を燃やしてしまった。

「そんな……参の技が壱の技に打ち消されるなんて……そんなのあり!?」
「剣についてはやはり甘いな。斬撃を燃やされるなんて普通ではあり得ないことだぞ」

 剣術は数字が大きい方が基本的に強い傾向にある。
 つまり、アリアは自分が放ったレベルより二つも下の技に打ち消されたということになる。
 アリアも驚きからか、口調が乱れていた。

「ですよねっ!」
「そこはこれからの訓練で直していけばいいところだ。成長に期待しているぞ!」

 喋っている間にも剣術の攻防は続いている。
 べネック団長がフェイントを織り交ぜながら剣を振るい、アリアが防御に徹していた。
 このままだとアリアが先に力尽きるだろうな。

「これでどうですかっ!」

 アリアが放った苦し紛れの突きを、べネック団長は余裕のバックステップで避けた。
 すぐに闇の精霊を出しながら剣を足元に振るう。

「精霊を捕縛――っ!?」
「貰った!」

 突如として現れた精霊に気を取られていたアリアは、足を剣で打たれて態勢を崩した。
 俺は勝負がついたと判断し、ストップをかける。

「そこまで! 審判であるティッセの名のもとに宣言する。勝者はべネック団長!」
「二重攻撃ですか……。すっかり油断しちゃいました」

 アリアは肩で息をしながら呟いた。
 同時に彼女の上にいた闇の精霊が解放されていく。
 息を整え終わったべネック団長が立ち上がり、アリアにタオルを渡して木を指さした。

「アリアはしばらく休んでいろ。次はイリナだ」
「分かりました。お互いが近接型なので勝負はすぐにつきそうですね」

 木剣を構えたイリナがべネック団長と対峙する位置に立ち、試合の準備は整った。
 お互いに剣呑な雰囲気を纏っているから怖いんだけど。

「両者構えて――始め!」
「グリード式剣術の参、【水流斬・真】」
「闇影式剣術の弐、【紫煙】」

 べネック団長は防御の能力を使っている暇はないと判断し、剣術を発動させる。
 ちなみに剣術は纏わせることが出来る魔力の数だけ存在するので、非常にややこしい。
 俺ですら全ては覚えていないのだから。
 古代に失われた技もあり、有効な技を復活させられないかと各国が研究しているそうだ。

 さて……話を模擬戦に戻そう。
 真っすぐ相手に突っ込んでいくイリナに対し、べネック団長は防御の態勢に入った。
 両者がぶつかった瞬間、イリナが目を見開いて距離を取る。
 なんと、イリナが持っている木剣が腐っていっているのだ。

「なっ!?」
「【紫煙】の効果だ。闇の魔力に触れたものを腐らせてしまう効果がある」
「だから剣が腐っているのですか」

 光属性ではなく水属性の技を選んでしまったため【紫煙】を相殺できず、剣が腐っていく。
 剣士であるイリナは剣を失ってしまえばただの一般人に等しい。
 勝利を確信したべネック団長だったが、彼女が持つ剣もまた腐り始めている。

「水も木を腐らせます。もともと【紫煙】が剣を犠牲にする技ですから……相殺すればいい」
「なるほど、転んでもただでは起きないというわけか」

 感心したような口調で呟いたべネック団長が無詠唱で闇の矢を作り上げる。
 同じく無詠唱で風魔法を発動させたイリナが闇の矢を散らした。

 攻撃自体は失敗したものの、イリナの意識は無防備にも空中に集中してしまっている。
 べネック団長はこのチャンスを逃すまいと一気に距離を詰めていった。

 不意打ちの攻撃に気づいて呆然とする彼女の喉元に、手刀が寸止めで突き立てられた。思わず舌を巻くほど鮮やかな体術。
 リーデン帝国第三騎士団長の肩書きは伊達ではない。

「そこまで。審判であるティッセの名において宣言する。勝者はべネック団長!」

 はあ……べネック団長があっさりと勝っちゃったよ。
 わずかな時間で敗北を喫したイリナは、なおも呆然としながらその場に立ち竦んでいた。
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