転生王子の奮闘記

銀雪

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第3章  銀髪の兄弟と国を揺るがす大戦

『92、各国対策会議・下』

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「とぼける気ですか?我が国の商人たちが僕に泣きついて来ましたよ?王子である僕に」
「だから知らないと言っているでしょう。どうしてわざわざ締め出さなきゃいけないんですか」

非公認の商売だったのだから王族は知らないという体で乗り切ろう。
断罪の旅の代償として販路が断たれたんだし。
それと、イワレス王国の裏取引はこの王子が主犯だったのかよ。

「我が国の商人どもも取引が断たれたと言っていたな。どうなのだグラッザド?」
「だから知りませんって。どうしてそうなるんですか・・・」
「ん?そもそもウダハル王国とは正式な取引は無かったはずだが?」

父上の絶妙なフォローに、ロビウムは言葉を失った。
次にエルハス国王のナウムが立ち上がったかと思うと、ズボンから紙を出してくる。

「これは我が国の商人から受け取った証文です。これは確たる証拠!」
「そんな紙は知りませんよ?確かに不正を行っていた愚か者どもは処罰しましたが」

見せて来たのはデナム郡のリアムからの書状だ。
『断罪会により処罰されてしまったので販売路は隠してください』などと書かれている。
ナウムさんだったっけ?その書状に不正な取引である証拠があるのだが。

「あれ?“販売路を隠してください”とは?公認の取引ならば隠す必要は無いはずでは?」
「そうだな。エルハスはグラッザドの者と密売をしていた証拠じゃないか!」

保身のためか、ヘウムがこれ見よがしに断罪してみせる。
お前も不正取引をしていた側じゃないか。全く・・・都合のいい王子だこと。

「グッ・・・それならウダハルはどうなのですか?あなたの国の奴隷が蔓延しているが」
「それこそ知らぬわ。大方、愚民どもが勝手に国境を越えているのではないか?」
「随分と弱い警備なのですね。ウダハルは人口不足になりそうだ」

皮肉の応酬をし合うナウムとロビウムを睨みながらマリウムが父上に噛みつく。
彼の目はなぜか血走っていた。

「あなたの国に販売路を止められたせいで我が国は財政難だ!どう責任を取るんだ!?」
「知りませんよ。我が国は適正な販売路は1つたりとも止めていません」

さり気なく裏の販売路は止めたぞと言っている。

「何を言っているのだ。販売路が止められたのは事実だろ?責任は取ってもらおう」
「資料を見せてあげましょうか?我が国は無実です」

不正断罪の際に自然に消滅したので、確かに国が主導して止めたという事実はない。
本当のことしか言っていないのだから驚かされる。
相手側も、下手に追及すると国が矢面に立たされるとあって迂闊に責められないのだ。

「そちらこそ言いがかりを付けてくるなど愚の骨頂!」
「何だと?私はただ国内の商人から販売路が絶たれたと聞いたから追及しただけだ!」
「化けの皮が厚い商人に騙されるのが愚かだと言っている」

父上が容赦なくマリウムを追い込んでいく。
ヘウムも隙あらば口を出そうと伺っているのだが、なかなか付け入る隙は現れなかった。

「おっと・・・貴殿は自国の商人を信用していないと申すか?」
「そもそも正式な販売路以外で商売していた商人を罰するところ。肩入れなどあり得ない」
「確かにな・・・。そう言われると返す言葉も無いわい」

何とか横やりを入れることに成功したロビウムも父上の攻撃にあえなく撃沈。
もはや父上を出し抜ける者は現れないかと思われた。
しかし、とある人物が放った1言が、場の空気を一気にひっくり返すことになる。

「我が国の貿易量が減っている気がするのだが。いかがかな?」
「エルハス王国相手に?それは・・・本当ですか?」

今までスラスラと反論の言葉を口にしていた父上が、ナウムの言葉に一瞬たじろいだ。
この隙を各国の王が逃すはずも無い。

「どういうことだ?まさかエルハス王国相手には策を講じていたのか?」
「何と・・・1国だけこっそりと規模縮小とは」
「王の風上にも置けない人物ですね。こちらとしても呆れざるをえません」

口元に笑みを浮かべたロビウム、マリウム、ヘウムが一斉攻撃を仕掛けたのである。
父上は悔しそうに顔を歪めた。
どうにかして反論しようと思っても事実だから答えられないのだろう。
これは父上の失策か。

「私は知りませんな。取引局が勝手に行ったことじゃないのですか?」
「責任を部下に押し付ける気ですか。全く・・・どこまで誤魔化すつもりですかな?」
「私へ言いがかりをつけ、商人のせいにした人物の言葉とは思えませんね」

ヘウムの言葉に父上は皮肉で返すも、劣勢であることは誰の目から見ても明らかだ。
各国の王もそれを理解しているため、追及が緩むことは無い。

「それなら資料を持ってきてはいかがです?先ほど資料を持ってくるかと尋ねていたはず」
「グッ・・・おい、資料を持ってきてくれ。4番と5番だ」

父上が苦虫を噛み潰したような顔で外に控えていた使用人に命じる。
しかしロビウムが口角を吊り上げて制止させた。

「しばし待て。わざわざ番号で指定したのは違和感を感じる。全て持ってこい」
「分かりました。戦争になるくらいならば・・・」

使用人はブツブツと呟きながら廊下の奥に消えようとしている。
これはマズいのではないか?企みが全て見通されているような不気味さを感じるな。
事実が明らかになるのも考えものだし、とりあえず助け船を出すか。

「使用人さん、待って。ここはグラッザド王国の領土。他国の王ではなく自国の王に従おう」
「えっ、でも戦争になったら困ります!」
「いやいや・・・あなたが資料を全て持ってくる方が戦争になる確率が高いから」

俺の言葉を信じてくれたのか、使用人は釈然としない顔ながらも頷いて走っていった。
これで他国の王に再び止められることもないだろう。
会議室を見ると父上の目には光が戻っており、他国の王は悔しそうに唇を噛んでいる。
助け船は成功らしい。後は父上の会話術に期待しよう。

「リレン王子、3国に喧嘩を売っているのか?さすがに先ほどの会話は許容できないが」
「何を言っているのです?僕は当たり前のことしか言ってませんが」

ロビウムに向かって首を傾げる。
ここはグラッザド王国なのだからグラッザド国王の指示に従うのは道理じゃないのか?
特別な法律でもあったのだとしたら謝るしかないが。

「あなたが紙を持って来た方が戦争になるっていう1文ですよ。それが当たり前だと?」
「えっ?それは・・・機密資料ですから。遺恨を残すのは良くないかと」
「戦争時に言いがかりを付けられるという事態を避けようということですか?なるほど」

奇妙な笑みを見せるヘウムに薄気味の悪さを覚える。
何だ?こいつは何を考えているのだ?

「それなら全員が開示しあいませんか?我が国は用意がありますよ」
「異論はない。まさか貿易の資料なぞが本当に役に立つとは」
「我が国は大賛成です!グラッザドが貿易量を少なくしているという事実を確認しましょう」

なっ・・・まさかコイツら、今回の会議を見越していたのか?
つまりアラッサムが音楽魔法で強硬手段に出て来ることを知っていたと?

「我が国は全力で拒否します。もはや話にならない!」

父上も我慢の限界だったのだろう。肩を怒らせて立ち上がり、ドアに向かう。
そこに各国の王の冷たい言葉が突き刺さる。

「ふざけたことをしておいて逃げるか・・・よし、我が国はグラッザドに宣戦布告する」
「左に同じ!腐った王国、グラッザドに宣戦布告をしようではないか!」
「我が国も流れに乗るとしよう。我が国に害を与えたグラッザドに宣戦布告する」

マリウム、ロビウム、ナウムが順番に宣戦布告を宣言したのだ。
父上は一瞬足を止めたものの、結局は「好きにしろ」と言い残して会議室を出て行く。
俺は父上の後を追うしか出来なかった。

会議室の外で見た父上の背中は、ピンチだからなのかとても頼もしく思えた。
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