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第六章 羽ばたきの数
「僕たち、 負けませんよ」
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一回戦が全て終わったのは午後二時。二回戦の中盤に差し掛かった今は、もう十五時過ぎである。このペースだと三回戦は明日に持ち越されそうだ。ホールに出た途端、キリと竹谷が今にも転げそうになりながら、ものすごく嬉しそうに全速力で駆け寄ってきた。
「まとさん、うさちゃん! 大ニュースですから、号外ですからーっ!」
パッツン前髪の身長高めが、ぶつかってくる勢いで身を乗り出す。
「なんだどうした」
続けて七三分けのチビが目を輝かせる。
「あのですね、あのですね、僕たち一回戦を突破したんですよ!」
なんだ。二回戦を突破できたのかと思った。
「もうアナウンスでとっくに知ってるよ。やったな」
坊っちゃん頭に手を乗せる。もう数時間も前のことなのに、こいつらはまだ勝利の喜びに浸っているらしい。歌仙はまだ二回戦を終えていない。俺たちは序盤の序盤に呼ばれたので、一回戦に引き続き、すでに二回戦も突破した後である。内田と一緒に休憩がてら、遅い昼飯を買いにアリーナから出てきたところだ。サラサラショートの後輩は、自分と大差なくドチビな二人を交互に見て、あざとい笑顔で首をかしげた。
「桐島、竹谷、すごいねっ! 一回戦突破くらいでそんなに大喜びできるなんて、弱小部は幸せだねっ。僕たちなんて、三回戦の出場が決定したところだよ。そろそろ強豪と当たるかな、勝つけど」
「う、うあ、調子に乗ってすみません」
キリは恐れ戦いて一歩下がった。竹谷が内田を睨みつけ、
「うさちゃん、どうしていじわるばっかり言うの。僕たちだって二回戦に勝ってみせるから。あっという間に追いつくからね!」
まくし立て、でしょっ、とキリに振り向いた。ホビット二人は笑顔で頷きあう。内田は面白くなさそうに頬をふくらませて目を逸らした。ふいにキリが俺を見上げ、真顔で告げる。
「あ、まとさん。僕たち次は、聖コトバってところと当たるんですよ」
「なんだと」
つい畏怖して聞き返した。やつは真面目に言い直す。
「あのですね、僕たちの二回戦の相手校、聖コトバ学院らしいんですよ」
「まだアナウンスは流れてないだろ?」
「あっ、はい。そうなんですけど、偶然。さっき協会の人たちが、もうすぐ歌仙と聖コトバを呼びだすって話しあっているのが聞こえちゃったんですよ。放送席の前を通るんじゃありませんでしたよ。ネタバレですよ」
キリは少し口を尖らせた。脳裏に、白鳩の大群がたった六匹のひよこを取り囲む恐怖映像が劇画調で浮かびあがった。すぐに放送が会場全体に鳴り響く。実に事務的だった。
「歌仙高等学校と聖コトバ学院高等学校は、五分後に第一アリーナへ集合してください。二回戦を行います。繰り返します──」
「まとさん、見に来てくださいよ」
キリはグレーの瞳を爛と輝かせて、小さな逆三角の口をきゅっと結んだ。
「僕たち、負けませんよ」
その目は決意に燃えている。内田がいきなり、あっ、そうだ、と手を打って顔をほころばせた。満面の笑みで小さなガッツポーズを作り、弾んだ声で語りだす。
「あのね桐島、僕がアドバイスしてあげる。聖コトバならね、下ネタを投下したら簡単に勝てちゃうんだよ。国語便覧からだと、好色一代男がオススメかなっ」
ゲスい! 歌仙の二人は、きょとんとする。不意にキリが歩み出て、数センチ上のどんぐり眼をまっすぐに見つめ静かに述べた。
「うさちゃん、よく聞いてよ」
その言葉に内田は、あ、と口を開けた。二度目の試合をした秋の入りに、やつがキリにした説教を思い出す。小さな坊ちゃんは真剣に続ける。
「僕、相手の弱みにつけこむ戦い方だけは、したくないんだよ。だって大会は、潰し合いじゃなくて伸ばし合いだよ。弱点を狙うんじゃなくて、自分を信じて得意分野でぶつかるべきなんだよ。そうしないと、勝っても負けても後味が悪いよ。アドバイスは、ありがとう。でもごめんよ。参考にはしない」
アリーナへと小さい背中が二つ走り去った。かっけえ、とつい呟く。まるで美々実さんの言葉を聞いたような気分になった。
「桐島のくせに生意気だ」
内田は悔しそうに小さくぼやいた。
やつはヤクルトとクリームパンを、俺はスポーツドリンクと鮭おにぎりを買って先輩方が席を取っている位置へ向かう。他の部員たちも集っていた。
「おう、キャプテンとアトムちゃんもやっぱり来たんだぜ」
速見が、家から持参したというカツ丼弁当を食べながらサムアップをする。客席は飲食禁止ではない。ソウルが巨大な黒糖パンを幸せそうに頬張りながら、こちらへと微笑んだ。
「あ、小野。今から歌仙と聖コトバの試合が始まるらしいよ」
「知ってる。お前いつも何か食ってるよな」
「そうかな」
美々実さんはコート内のキリへと大きく手を振っている。
「ちょいとマトペさん、こっから見下ろしたらすげえ面白い光景ですぜ」
ジョージが下を指差して笑った。そこには、さっき脳裏に描いた映像とまるで同じ印象の図があった。真っ白い体操服の長身ハーフが三十人、そして黄色と黄緑の体操服を着たチビが六人集まっている。審判として古井先生が立ち会っていた。歌仙のホビットたちは眉をつり上げ、震えながら敵を上目遣いで睨んだ。聖コトバが一斉にフフッと笑う。白く輝く教徒たちは、六人だけがコートに入り、残る部員はその外にずらりと並んでいる。
「まるで白鳩の群れに囲まれたひよこだな」
我らのヒーローが、意外にも比喩表現で呟いた。口を開くだけで珍しいのに!
「ヒイロもそう思うのかッ」
まさかこいつと考えが一致するとは思っていなかったので喜んでしまった。
「小野もか」
無表情のまま目だけが丸くなる。ソウルが噴き出して、
「どっちも鳥だな、あははは、はは、ひ、おなかいたいあははは」
お前は昔っからツボがおかしい。
速見がカツ丼を席に置いて立ち上がり、巨体を乗り出して見下ろす。
「すごいんだぜ。言われてみればそう見えてきたんだぜ」
でかい口を真四角にして感動した。欅平さんが眼光を光らせ、呟く。
「小野ちゃん。さてはおめえ、鳥の飛ぶと文バレの跳ぶを掛けたのかい」
おお本当だ、掛かっている!
「いや、俺は無意識でした」
そう返すと、先輩は胸を反らせて笑った。
「はっはは、そうかい。池はどうだ」
聞かれたヒイロは意味を吟味するように深くうつむいた後、目を輝かせ、はっ、とぶ、と零して勢いよく顔を上げた。
「俺も無意識でした。むしろ今、理解しました」
「だろうな。おめえには言葉遊びなんかできねえよな」
対してヒイロは真顔で頷く。いや、素直に認めちゃうなよ。
「宣戦布告を、させていただきますから!」
突然。下のコートから、竹谷の声が朗々と響いた。あの怖いもの知らずは、長身揃いの宗教団体相手に何を言い出すつもりなんだ。ざわつく客席にも、見下ろしてくる縦長の白鳩どもにもひるまず、やつは叫んだ。
「言わせてもらいますけど、神さまに勝利を祈ったところで無駄ですから。そんな偶像崇拝は僕たちの絆には、敵いませんから」
バカだ竹谷。敵の本気スイッチを進んで入れやがった。肩までの黒いトレッドパーマを持つラテン顔のヨシュアが、黒目がちな瞳を怒りに染めて声を荒げた。
「冒涜だあーっ! 我々が神へ向ける信仰は海よりも深いというのに、たかが友情と天秤にかけるとは。お前は絆のために死ねるというのか!」
お互いのキャプテンが長いため息をついた。
「ヨシュア、およしなさい。挑発に乗るなど、お見苦しいではありませんか」
ミカエルが相変わらずのエコーがかった声で微笑んだ。
「ユグちゃん、なんか絆のジャンルが違うよ。ケンカ売る相手間違えたよ」
キリも困り顔になるが、どちらの副キャプテンも聞く耳を持たない。
「僕たちの絆は、どのチームよりも強いですから」
「言うだけなら簡単だ。その思いを神に誓えるか」
静止するように、甲高く尺八が鳴る。
「後にしたまえ」
古井先生がぴしゃりとケンカをとめた。ヨシュアと竹谷は睨み合い、
「この試合の後、ホールまで来い」
「受けて立ちますから」
言い合ってすぐ、眉をつり上げたまま互いに視線を外した。全く、ひどいライバル同士が誕生してしまったものだ。その直後に命懸けの儀式があり、
「う、うああー! 先攻じゃないと勝てないよおおお」
大きな涙声が聞こえた。キリのやつ、負けたようだ。俺とそう大差ない身長の竹谷が、首を痛めそうなくらいに敵陣を見上げて荒れている。
「どうしてパーなんか出したんですか。さてはミカエルさん、キリちゃんがいつも初めにグーを出してしまうクセを知ってたんですね。この鬼畜!」
「おやおや。君は全く、先程から失礼な物言いしかなさいませんね」
見た目だけは天使な美少年が呆れ顔になって、艶やかな金のポニーテールを優雅に揺らした。対して「ぎーっ」と歯をむくチビ。ミカエル、竹谷のセリフはもう全て無視していい。
開始の尺八が鳴り、耳に馴染みが深い古井先生の声が響いた。
「歌仙高等学校 対 聖コトバ学院高等学校 全国大会二回戦 開始」
聖コトバの得意分野は古典と海外文学。方や歌仙は近代小説に強く、古典はどちらかというと苦手である。先攻を取られた後輩たちよ、どうか持ちこたえてくれ。
「古事記」
白鳩のバックレフトが古典代表のような文献を選んでサーブを打った。
そのワードで、歌仙と十回もした練習試合の中の一戦をつい思い出してしまう。俺が言った古事記に対してキリが、乞食じゃありませーん! と素で打ち返してきた、初冬に行った試合。やつのあまりのバカさにその時、ついに古井先生の堪忍袋の緒が切れた。
「君は文学をバカにしているのかね?」
先生は静かに怒り、審判をボイコットしたのである。未だかつてない出来事だった。その後の凄まじい光景と言ったら、思い出すだけで身が震える。歌仙の全員が泣きながら謝罪し、つられて内田も泣き出す始末。ジョージまでもが言葉を失い、あのソウルさえ愛想を尽かして無視を貫く。ヒイロも我関せずといった顔で隅に逃げ、速見は困り顔で右往左往を繰り返し、俺もただ謝罪に加わるしかなす術がなかった。最終的には全員が三角座りで、じっと先生の機嫌が直るのを待つという、あの日は実に、記憶に残るほろ苦い練習となったのである。
いけるよな、とソウルが小声で祈った。一度失敗しているのだからまさか二度目はないだろう。しかし俺たち新古今の六人は息を殺して、天高い球が歌仙に届くのを待っていた。もしお前らが今、またあのバカ丸出しの返しを始めたら、姉妹校的存在として本当に恥ずかしいぞ!
「太安万侶」
フロントセンターからキリが打ち返した。変哲のない返しだが、やけにほっとした。古事記の編者とされている人物だ。聖コトバの連中は揃って微笑する。そして。
「太朝臣安萬侶」
バックセンターが高く舞い、スパイクを打った。え、スパイクを?
「聖コトバが、スパイクを……」
驚きの声が会場全体に広がる。発した言葉の難解さはさながら、やつらが防御ではなく攻撃をしたことに驚愕している。聖コトバと言えば、豊富な知識で制限時間ギリギリまで敵を追い詰め、反則やミスで点を落としていく相手を見て微かに笑うような、まさに真綿で首を絞めるような戦い方をする高校だ。速い球を打つ印象は、これまでの試合を見てきた限りまるでなかった。球が到着するまでの長い間に返しを考えればいいと、歌仙高校も悠長な構えで挑んでいたに違いない。思考回路に停止がかかったように、ホビットたちは固まった。
球はさっそく、コート内を叩いた。
「零対一」
尺八がアリーナ中に情緒を運ぶ。
「フフッ、この攻撃は想定していなかったようですね。フフッ」
ミカエルが楽しげに笑い出す。内田が客席で頬を膨らませた。
「いきなり戦法を変えるなんて、卑怯ですよねっ」
「努力と成長を卑怯とは呼ばない」
かぶせぎみに返してやった。自分たちの戦い方を省みて、より強く改革していくのは当たり前だ。コートをじっと見て、内田が小さく、努力と成長、と繰り返した。
ちなみに太朝臣安萬侶は太安万侶の別表記である。この天使の顔をした悪魔どもは、イエスをインマヌエルと言い換えたり、実は同じというオチで敵を混乱させることが大好きである。本名とペンネーム、旧姓と現姓、初版と第二版でタイトルが違う文献など、手の内は様々だ。歌仙のホビットたちの表情を伺った。はてなは浮かんでいない。大丈夫そうだ。
「太朝臣安萬侶」
ミカエルの流麗な声で試合が再開する。
「日本書紀」
フロントライトから竹谷が返した。太安万侶は日本書紀の編集にも関わったと言われている。聖コトバは天高くボールを上げ、仲間内で文章のラリーを始めた。
「五月蝿有り集まりてこりかさなること十丈、」
「大空を飛んで信濃坂を越え、」
「鳴音雷の如く東上野に至って散る」
日本書紀の中にある一文である。難しい出題だ。ボールはいつも通り大きな弧を描いて飛んだ。この文中の五月蝿とはミツバチのことを指している。これを元にして、うるさいに五月蝿いという当て字を世界で初めて用いた有名な明治文豪がいる。今その名を返せば古典から近代小説へ流れを変えられる。だがこんな専門知識を歌仙は知らないだろう。この文を聞いたことすら初めてかもしれないのに。客席の目線がボールを追って、ひゅうんと上がり落ちていく。
点を、取られる。
「取られない」
美々実さんが、俺の心を読んだかのように呟いた。そう言える根拠を考えてみて、思い当たる節があった。キリがその球を下唇を噛んで迎える。
「夏目漱石」
言った! 赤ん坊に例えても足りないくらいの無垢な笑顔でキリは排球を叩いた。そうだ、そういえばあいつの好きな作家は夏目漱石だった。だよな、好きな作家の背景は調べるよな。キリは審判に向かって、
「うるさいの当て字に五月蝿を初めて用いたのは、夏目漱石。ですよね」
断言してもっと笑った。古井先生はようやく認めたように、朗らかに頷いた。
「フフッ、まさか返すとは」
ミカエルが不敵に微笑んだ。聖コトバは予想外の展開にめっぽう弱い……はずだが、これは全国大会である。返されたときの対策も念密に練っていたらしい。一瞬どよめきは起こったものの、白鳩どもはそれ以上焦ることはなかった。
「正岡子規」
ヨシュアがバリトンに属す声でアンダーを打つ。俳人の正岡子規は、夏目漱石の親友だ。
「柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺」
彼の有名な俳句を早口で暗唱し、ひよこのバックレフトがアタックを打った。
「写生俳句」
白鳩のバックセンターはスパイクで返した。写生俳句とは、正岡子規が唱えた俳句の一類型であり、見たままの景色を句作するという創作姿勢を指している。
歌仙の幸薄そうな少年、たしかカイちゃんと呼ばれていたやつが動いた。
「夕風や 白薔薇の……」
正岡子規が詠んだ、とある俳句の始まりを不安げに口に出してトスを上げる。そして、
「ひゃっ、ど忘れしちゃった。誰か続きを言ってアタックだけお願ぴゃあ!」
自分で真上に向かわせたから当然自分へと一直線に落ちてきたボールを、見事なまでに頭のてっぺんにぶつけた。おい歌仙、努力と成長はどうした。尺八が少し雑に鳴る。
「零対二」
ちなみに正解は、夕風や 白薔薇の花 皆動く。
「ちょっとカイちゃあん! なんで知らない歌を言おうとしちゃったの。しかも全国大会で。そんな運試し、しないでほしいな!」
バックライトの気が強そうな少年(まっちゃん?)がカイちゃんを指差して怒鳴っている。
「ご、ごめんまっちゃん。だって、写生俳句を何か暗唱しなくちゃって、思って」
幸薄そうなチビはおどおど答えた。強気なチビは頬をたんまり膨らませ続ける。
「もういいよ下がって。カイちゃんはいっつもそうだよ。うろ覚えのことばっかり言おうとするでしょ。もっと捻れば、いくらでも違う返しはできるんだってば。考え抜いてから、自信のある返しをしてほしいの。いいか、次は僕が、」
「言っちゃだめだからーっ!」
竹谷が割って入った。
「まっちゃん、本当にだめだから。次は僕がこう言うっての、禁句だから。相手に手の内がバレるから。有言実行じゃなくて不言実行にしてほしいよ、頼むか」
「写生俳句」
「らっ?」
歌仙の言い合いが終わらないうちに、断りもなく聖コトバが試合を再開させた。客席が一斉にどよめく。わああ、とチビたちは慌てふためいて立ち位置に戻り、
「ホトトギスー!」
まっちゃんと呼ばれた強気少年がフォームの乱れたアタックをした。彼がかろうじて拾ったボールは、相手コートへなんとか飛んでいく。
「おやおや、とめましたか。フフッ」
天使もどきは水色の瞳を光らせる。
「うはあ、今の不意打ちはひどいっしょ。ミカちゃんまじ外道っすわー!」
ジョージが客席から身を乗り出し、楽しげに声を張った。内田が、
「ミカちゃん呼びはやめろよ」
と、やつの服の裾を引っ張った。
「なんで? 余計に性別不詳になるから?」
「そこじゃねえよ。先輩にちゃん付けすんなって話だよ」
「あ、そっちね。たはは」
千人近くいると思われる観客は、軌道がよろめく球を息を飲んで見守っている。速見の手はキリシタンらしくアーメンだった。ふいに眉をしかめ、
「おっと、これじゃ聖コトバを応援してるんだぜ」
指をほどいてから、怪訝な顔で合掌をした。いやこれじゃニチセイなんだぜ、とやつが呟いている間に、歌仙が打った球がコートをギリギリで越していく。
ホトトギスとは、病床の正岡子規が、弟子の高浜虚子に編集を頼み作っていた晩年の句誌のタイトルである。句会を開き彼はこの誌で多くの新人を育てた。結核に苦しみながら、寝たきりになりながら、しかし子規は筆を取ることを最期までやめなかったのである。子規庵と呼ばれる彼の家にはいつも多くの俳人が集っていた。彼のペンネームである子規も、その句誌と同名の鳥の名を意味している。するどい鳴き声から、その鳥は古くよりこう謳われた。
「鳴いて血を吐くホトトギス」
正岡子規は結核が発覚した二十二歳のときから、喀血する自らを子規と名乗るようになったのだ。重い言葉を乗せたボールが歌仙側へ飛んでいく。アリーナ中が静かになった。
「病床六尺」
キリが返した。寝たきりになった子規が、病床から見られる範囲の小さな世界をこう呼んだ。それでも子規が創作を続け、俳人として生きぬこうとした姿が、きっと全員の脳裏に浮かんでいるだろう。ヨシュアが深く頷き、
「糸瓜忌」
とその球を大事に上へあげた。子規の命日がこう呼ばれる。三十五歳の短い生涯を終えたその日、子規は三つの句を詠んだ。フロントセンターのミカエルが、ヨシュアの打った球を受け、歌仙へ清らかな声で返す。
「糸瓜咲いて 痰のつまりし 仏かな」
子規が、最期に残した句の一つ目だ。
「痰一斗 糸瓜の水も 間にあはず」
竹谷が返した。そして静けさの中に、神々しくヨシュアの暗唱が響いた。
「をととひの へちまの水も 取らざりき」
それに返そうと歌仙のホビット集団は構える。やつらの脳裏には、返す予定の言葉が渦巻いでいるはずだが、糸瓜忌、正岡子規、ホトトギス、結核、写生俳句。
ひよこたちは絶望的に口を開けて固まった。聖コトバらしい最後の一点だった。先に知識が底につけば、負ける。コートに球が落ちた。
「零対三。勝者、聖コトバ学院高等学校」
尺八が侘しく響いた。正岡子規は死ぬ十時間前にこの三つの句を読み、そのままこれが、絶筆となったという。歌仙高校の全国大会が、終わった。
客席に駆け上がってきて、ホビットたちは泣き喚いた。
「びえーっ、知識の差が、う、うあ、技術の差もすごかったよ、二回戦敗退なんて予定外だよ、まだ僕たち、まとさんのチームと戦ってなかったのにびえーっ」
キリが姉に飛びつく。美々実さんは弟の背を涙目でさすっていた。
「よくがんばった。書籍くんはよくがんばったよ。私が仇を取ってやるからな。あ、私じゃないわ。私、今年はただの客だわ。びえーっ、書籍くんごめんなあああ、姉ちゃん直々に仇取れなくてごめんなああ」
同じ泣き顔が並ぶ。全く、かっわいいな、この姉弟は。
「キリちゃん、ミミさん、オイラたちに任せるんだぜ」
速見が力強く目を見開いて全身からやる気をみなぎらせる。
「う、うあ、はやみん頼んだよ。前キャプテンからの頼みだよ」
「合点承知なんだぜ」
えぐえぐと泣いている歌仙のホビットたちと美々実さんを見回して、ひよこが一匹足りないことに気づいた。ソウルが、カイちゃんと呼ばれていた幸薄少年に聞いた。
「竹谷どこいった?」
「あっはい、あのっ、ユグちゃんなら、ヨシュアさんと決闘しにいきました」
「え、うそ。あれ本気だったんだ」
「そうみたいですけど、うう。そーるさん、ユグちゃんは大丈夫でしょうか」
大丈夫だよ、と今に限ってソウルは言わなかった。大丈夫じゃないからな。
客席に腰掛け、ホビットたちは背筋を伸ばしコートを見下ろした。歌仙と聖コトバの試合が終わった第一アリーナに、放送が流れ出す。
「日本再生大学付属高等学校と、ホトケノザ学園高等学校は、五分後に第一アリーナへ集合してください。二回戦を行います。繰り返します」
あ、忍のとこだ。と思うと同時に「ひゃあー」と女子比率が多い柔らかな断末魔が伸び上がった。斜め後ろの席からだ。見るとパステルカラーの少人数の団体がのんびりと慌てていた。春の七草をあしらった、ほのぼのした体操服。たった今、強豪校と一緒に招集されたホトケノザ学園である。去年は俺たちと同じく三回戦で敗退した、そこそこ強いチームだ。四季の花々だとか着物の重ね色だとか、風流なものを好んで出題する、校風も部員もゆったりした高校だ。
「うわ。二回戦で忍さんとこと当たるって災難っすな」
ジョージが肩をすくめて、脱力して微笑んだ。ホトケノザはニチセイと好きなジャンルが完全にかぶっているため、四字熟語での会話も容易く対応できそうだが。
「な。しかもあいつら、全然スピードタイプじゃねえんだよ」
「まじすか。かっわいそ!」
長身の後輩はへらっと肩をすくめる。俺は心底同情して、パステルカラー達を目で追った。直前まで話し合う姿があったが、あくまで穏やかだった。アナウンスから五分後、ニチセイとホトケノザの戦いは始まったが、それは瞬間豪雨のように過ぎ去った。ホトケノザの、
「それでは先攻なので、こっちが先に投げますよお。せり なづな」
という、ほわほわしたサーブに始まり、
「ごぎやう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ これぞ七草」
を言い切るまでに試合が終わったのでもう詳細は書かない。忍たちが本気を出した結果の、驚異の連続三点だった。ホトケノザの連中は柔和に微笑んだ。
「はあ、さすが、強豪はすごいなあ、いい経験になったなあ」
闘争心というものをあまり感じないチームである。ただ日本語を楽しんでいるような印象を受けた。最後の握手で、忍は人なつこい笑みを浮かべこう述べた。
「なんや君ら、ワイらとホンッマ気が合いそうでんがな。今日の戦いが終わったら、部屋で共に語ろやないか。ホテルでは何号室にいてはりまっか」
友情が生まれ、アリーナ中がほっこりした。こんな試合が、たまにはあってもいいと思う。
その試合が終わったときに、ちょうど竹谷がぼろぼろ涙をこぼしながら客席に帰ってきて、その涙を隠しもせずに真っ直ぐ前を向き、首を振った。
「む、むりですから。あんな、あんな宗教じみた愛には、敵いませんから。本当に怖かったんですから。すごく怖かったんですから」
涙が枯渇しそうな勢いで泣いている。欅平さんが目を細め、達観した社会人のような笑みを浮かべた。そして頬杖をつき、語りだす。
「なんだ少年、失恋かい。涙と一緒に忘れちまいな。愛の形は人それぞれさ。宗教みてえな愛を求める女もいりゃあ、友情みてえな愛を求める女もいる。今回は、おめえに合わねえ相手だったって、だけなんだよ」
またこの方は勘違いをしているようだけれど、いいことを言ってらっしゃる。
「ぐすっ。誰か知らない上に、何か間違ってますけど、その言葉は響きました!」
竹谷は泣き止んで、明るい表情で欅平さんに笑いかける。
「はっはは、そりゃよかったよ。俺さまもおめえが誰か知らねえが、泣いてるやつは、ほっとけねえ質でよ。後輩衆の知り合いとありゃあ尚更さ」
緑メッシュの長身男は大人びた微笑を浮かべて、座席から少年を仰ぎ見た。なんでキザなセリフも動作も、この人には似合ってしまうのだろう。
両方のアリーナで次々と試合は終わっていき、三回戦に出場するチームがどんどん決まっていく。万葉高校は当然のように勝ち進んでいる。それからニチセイ、聖コトバ、俺たち新古今。例の唄唄い高校もだ。さらに昨年の強豪だった詩吟高校、全四季愛護学院など。
そしてついに、二回戦が全チーム終了した。時計は四時半を指していたが、本日この場所を使えるのは五時までだ。一試合の制限時間は一時間であるため、今から三回戦を始めることは不可能である。アナウンスが流れ、部員は全員第一アリーナへ集合。開会の時と同じく高校ごとに整列した。さて、とおじいちゃんの声がマイクを通して響く。
「皆々様のご協力のおかげで、本日の全国大会はスムーズに運営することができました。時間の問題で三回戦以降は、また明日に行いたいのだけれど、反対意見は、おられたら困りますから。おられない、おられない。ことにします。決定事項です。ごめんね。惜しくも敗退してしまったチームも、よくがんばってくれました。どうぞ明日は観客席から、ライバルでもあり友人でもある、文芸バレーボール選手の仲間たちを最後まで応援してあげてください。それでは明日も、精一杯がんばって参りましょう。忘れ物をしないように、ホテルへ戻ってくださいな」
開会の長さを思えば随分と手短にしめ、竹谷史郎会長は軽くお辞儀をする。夕暮れの中、俺たちはアリーナを後にした。日本再生大学のガラス張りの校舎が陽を照り返していて眩しい。
母さんは車でいったん家に戻り、明日また来るらしい。家から日生大までは非常にアクセスが悪いので宿泊を勧めたが「楽を金で買えだァ? 漫画家の万年金欠なめんじゃないわよッ」とキレ気味で言われた。客席に溢れていた第一期生の先輩方は皆どこへ消えてしまったのかと思っていたが、数分後に美々実さんから、こんな電話が来て判明する。
「まとちゃん、ちょっと聞いてくれ。大学横の自然公園にテントが溢れてやがる。文バレ第一期生同窓会状態だ。全員キャンプしてる。もちろん文バレもしてる。揃いも揃って同じこと考えすぎだろ、すっごく楽しいからこれ毎年するといいよ!」
全国大会は、二年目にして伝統が生まれたようだった。
「まとさん、うさちゃん! 大ニュースですから、号外ですからーっ!」
パッツン前髪の身長高めが、ぶつかってくる勢いで身を乗り出す。
「なんだどうした」
続けて七三分けのチビが目を輝かせる。
「あのですね、あのですね、僕たち一回戦を突破したんですよ!」
なんだ。二回戦を突破できたのかと思った。
「もうアナウンスでとっくに知ってるよ。やったな」
坊っちゃん頭に手を乗せる。もう数時間も前のことなのに、こいつらはまだ勝利の喜びに浸っているらしい。歌仙はまだ二回戦を終えていない。俺たちは序盤の序盤に呼ばれたので、一回戦に引き続き、すでに二回戦も突破した後である。内田と一緒に休憩がてら、遅い昼飯を買いにアリーナから出てきたところだ。サラサラショートの後輩は、自分と大差なくドチビな二人を交互に見て、あざとい笑顔で首をかしげた。
「桐島、竹谷、すごいねっ! 一回戦突破くらいでそんなに大喜びできるなんて、弱小部は幸せだねっ。僕たちなんて、三回戦の出場が決定したところだよ。そろそろ強豪と当たるかな、勝つけど」
「う、うあ、調子に乗ってすみません」
キリは恐れ戦いて一歩下がった。竹谷が内田を睨みつけ、
「うさちゃん、どうしていじわるばっかり言うの。僕たちだって二回戦に勝ってみせるから。あっという間に追いつくからね!」
まくし立て、でしょっ、とキリに振り向いた。ホビット二人は笑顔で頷きあう。内田は面白くなさそうに頬をふくらませて目を逸らした。ふいにキリが俺を見上げ、真顔で告げる。
「あ、まとさん。僕たち次は、聖コトバってところと当たるんですよ」
「なんだと」
つい畏怖して聞き返した。やつは真面目に言い直す。
「あのですね、僕たちの二回戦の相手校、聖コトバ学院らしいんですよ」
「まだアナウンスは流れてないだろ?」
「あっ、はい。そうなんですけど、偶然。さっき協会の人たちが、もうすぐ歌仙と聖コトバを呼びだすって話しあっているのが聞こえちゃったんですよ。放送席の前を通るんじゃありませんでしたよ。ネタバレですよ」
キリは少し口を尖らせた。脳裏に、白鳩の大群がたった六匹のひよこを取り囲む恐怖映像が劇画調で浮かびあがった。すぐに放送が会場全体に鳴り響く。実に事務的だった。
「歌仙高等学校と聖コトバ学院高等学校は、五分後に第一アリーナへ集合してください。二回戦を行います。繰り返します──」
「まとさん、見に来てくださいよ」
キリはグレーの瞳を爛と輝かせて、小さな逆三角の口をきゅっと結んだ。
「僕たち、負けませんよ」
その目は決意に燃えている。内田がいきなり、あっ、そうだ、と手を打って顔をほころばせた。満面の笑みで小さなガッツポーズを作り、弾んだ声で語りだす。
「あのね桐島、僕がアドバイスしてあげる。聖コトバならね、下ネタを投下したら簡単に勝てちゃうんだよ。国語便覧からだと、好色一代男がオススメかなっ」
ゲスい! 歌仙の二人は、きょとんとする。不意にキリが歩み出て、数センチ上のどんぐり眼をまっすぐに見つめ静かに述べた。
「うさちゃん、よく聞いてよ」
その言葉に内田は、あ、と口を開けた。二度目の試合をした秋の入りに、やつがキリにした説教を思い出す。小さな坊ちゃんは真剣に続ける。
「僕、相手の弱みにつけこむ戦い方だけは、したくないんだよ。だって大会は、潰し合いじゃなくて伸ばし合いだよ。弱点を狙うんじゃなくて、自分を信じて得意分野でぶつかるべきなんだよ。そうしないと、勝っても負けても後味が悪いよ。アドバイスは、ありがとう。でもごめんよ。参考にはしない」
アリーナへと小さい背中が二つ走り去った。かっけえ、とつい呟く。まるで美々実さんの言葉を聞いたような気分になった。
「桐島のくせに生意気だ」
内田は悔しそうに小さくぼやいた。
やつはヤクルトとクリームパンを、俺はスポーツドリンクと鮭おにぎりを買って先輩方が席を取っている位置へ向かう。他の部員たちも集っていた。
「おう、キャプテンとアトムちゃんもやっぱり来たんだぜ」
速見が、家から持参したというカツ丼弁当を食べながらサムアップをする。客席は飲食禁止ではない。ソウルが巨大な黒糖パンを幸せそうに頬張りながら、こちらへと微笑んだ。
「あ、小野。今から歌仙と聖コトバの試合が始まるらしいよ」
「知ってる。お前いつも何か食ってるよな」
「そうかな」
美々実さんはコート内のキリへと大きく手を振っている。
「ちょいとマトペさん、こっから見下ろしたらすげえ面白い光景ですぜ」
ジョージが下を指差して笑った。そこには、さっき脳裏に描いた映像とまるで同じ印象の図があった。真っ白い体操服の長身ハーフが三十人、そして黄色と黄緑の体操服を着たチビが六人集まっている。審判として古井先生が立ち会っていた。歌仙のホビットたちは眉をつり上げ、震えながら敵を上目遣いで睨んだ。聖コトバが一斉にフフッと笑う。白く輝く教徒たちは、六人だけがコートに入り、残る部員はその外にずらりと並んでいる。
「まるで白鳩の群れに囲まれたひよこだな」
我らのヒーローが、意外にも比喩表現で呟いた。口を開くだけで珍しいのに!
「ヒイロもそう思うのかッ」
まさかこいつと考えが一致するとは思っていなかったので喜んでしまった。
「小野もか」
無表情のまま目だけが丸くなる。ソウルが噴き出して、
「どっちも鳥だな、あははは、はは、ひ、おなかいたいあははは」
お前は昔っからツボがおかしい。
速見がカツ丼を席に置いて立ち上がり、巨体を乗り出して見下ろす。
「すごいんだぜ。言われてみればそう見えてきたんだぜ」
でかい口を真四角にして感動した。欅平さんが眼光を光らせ、呟く。
「小野ちゃん。さてはおめえ、鳥の飛ぶと文バレの跳ぶを掛けたのかい」
おお本当だ、掛かっている!
「いや、俺は無意識でした」
そう返すと、先輩は胸を反らせて笑った。
「はっはは、そうかい。池はどうだ」
聞かれたヒイロは意味を吟味するように深くうつむいた後、目を輝かせ、はっ、とぶ、と零して勢いよく顔を上げた。
「俺も無意識でした。むしろ今、理解しました」
「だろうな。おめえには言葉遊びなんかできねえよな」
対してヒイロは真顔で頷く。いや、素直に認めちゃうなよ。
「宣戦布告を、させていただきますから!」
突然。下のコートから、竹谷の声が朗々と響いた。あの怖いもの知らずは、長身揃いの宗教団体相手に何を言い出すつもりなんだ。ざわつく客席にも、見下ろしてくる縦長の白鳩どもにもひるまず、やつは叫んだ。
「言わせてもらいますけど、神さまに勝利を祈ったところで無駄ですから。そんな偶像崇拝は僕たちの絆には、敵いませんから」
バカだ竹谷。敵の本気スイッチを進んで入れやがった。肩までの黒いトレッドパーマを持つラテン顔のヨシュアが、黒目がちな瞳を怒りに染めて声を荒げた。
「冒涜だあーっ! 我々が神へ向ける信仰は海よりも深いというのに、たかが友情と天秤にかけるとは。お前は絆のために死ねるというのか!」
お互いのキャプテンが長いため息をついた。
「ヨシュア、およしなさい。挑発に乗るなど、お見苦しいではありませんか」
ミカエルが相変わらずのエコーがかった声で微笑んだ。
「ユグちゃん、なんか絆のジャンルが違うよ。ケンカ売る相手間違えたよ」
キリも困り顔になるが、どちらの副キャプテンも聞く耳を持たない。
「僕たちの絆は、どのチームよりも強いですから」
「言うだけなら簡単だ。その思いを神に誓えるか」
静止するように、甲高く尺八が鳴る。
「後にしたまえ」
古井先生がぴしゃりとケンカをとめた。ヨシュアと竹谷は睨み合い、
「この試合の後、ホールまで来い」
「受けて立ちますから」
言い合ってすぐ、眉をつり上げたまま互いに視線を外した。全く、ひどいライバル同士が誕生してしまったものだ。その直後に命懸けの儀式があり、
「う、うああー! 先攻じゃないと勝てないよおおお」
大きな涙声が聞こえた。キリのやつ、負けたようだ。俺とそう大差ない身長の竹谷が、首を痛めそうなくらいに敵陣を見上げて荒れている。
「どうしてパーなんか出したんですか。さてはミカエルさん、キリちゃんがいつも初めにグーを出してしまうクセを知ってたんですね。この鬼畜!」
「おやおや。君は全く、先程から失礼な物言いしかなさいませんね」
見た目だけは天使な美少年が呆れ顔になって、艶やかな金のポニーテールを優雅に揺らした。対して「ぎーっ」と歯をむくチビ。ミカエル、竹谷のセリフはもう全て無視していい。
開始の尺八が鳴り、耳に馴染みが深い古井先生の声が響いた。
「歌仙高等学校 対 聖コトバ学院高等学校 全国大会二回戦 開始」
聖コトバの得意分野は古典と海外文学。方や歌仙は近代小説に強く、古典はどちらかというと苦手である。先攻を取られた後輩たちよ、どうか持ちこたえてくれ。
「古事記」
白鳩のバックレフトが古典代表のような文献を選んでサーブを打った。
そのワードで、歌仙と十回もした練習試合の中の一戦をつい思い出してしまう。俺が言った古事記に対してキリが、乞食じゃありませーん! と素で打ち返してきた、初冬に行った試合。やつのあまりのバカさにその時、ついに古井先生の堪忍袋の緒が切れた。
「君は文学をバカにしているのかね?」
先生は静かに怒り、審判をボイコットしたのである。未だかつてない出来事だった。その後の凄まじい光景と言ったら、思い出すだけで身が震える。歌仙の全員が泣きながら謝罪し、つられて内田も泣き出す始末。ジョージまでもが言葉を失い、あのソウルさえ愛想を尽かして無視を貫く。ヒイロも我関せずといった顔で隅に逃げ、速見は困り顔で右往左往を繰り返し、俺もただ謝罪に加わるしかなす術がなかった。最終的には全員が三角座りで、じっと先生の機嫌が直るのを待つという、あの日は実に、記憶に残るほろ苦い練習となったのである。
いけるよな、とソウルが小声で祈った。一度失敗しているのだからまさか二度目はないだろう。しかし俺たち新古今の六人は息を殺して、天高い球が歌仙に届くのを待っていた。もしお前らが今、またあのバカ丸出しの返しを始めたら、姉妹校的存在として本当に恥ずかしいぞ!
「太安万侶」
フロントセンターからキリが打ち返した。変哲のない返しだが、やけにほっとした。古事記の編者とされている人物だ。聖コトバの連中は揃って微笑する。そして。
「太朝臣安萬侶」
バックセンターが高く舞い、スパイクを打った。え、スパイクを?
「聖コトバが、スパイクを……」
驚きの声が会場全体に広がる。発した言葉の難解さはさながら、やつらが防御ではなく攻撃をしたことに驚愕している。聖コトバと言えば、豊富な知識で制限時間ギリギリまで敵を追い詰め、反則やミスで点を落としていく相手を見て微かに笑うような、まさに真綿で首を絞めるような戦い方をする高校だ。速い球を打つ印象は、これまでの試合を見てきた限りまるでなかった。球が到着するまでの長い間に返しを考えればいいと、歌仙高校も悠長な構えで挑んでいたに違いない。思考回路に停止がかかったように、ホビットたちは固まった。
球はさっそく、コート内を叩いた。
「零対一」
尺八がアリーナ中に情緒を運ぶ。
「フフッ、この攻撃は想定していなかったようですね。フフッ」
ミカエルが楽しげに笑い出す。内田が客席で頬を膨らませた。
「いきなり戦法を変えるなんて、卑怯ですよねっ」
「努力と成長を卑怯とは呼ばない」
かぶせぎみに返してやった。自分たちの戦い方を省みて、より強く改革していくのは当たり前だ。コートをじっと見て、内田が小さく、努力と成長、と繰り返した。
ちなみに太朝臣安萬侶は太安万侶の別表記である。この天使の顔をした悪魔どもは、イエスをインマヌエルと言い換えたり、実は同じというオチで敵を混乱させることが大好きである。本名とペンネーム、旧姓と現姓、初版と第二版でタイトルが違う文献など、手の内は様々だ。歌仙のホビットたちの表情を伺った。はてなは浮かんでいない。大丈夫そうだ。
「太朝臣安萬侶」
ミカエルの流麗な声で試合が再開する。
「日本書紀」
フロントライトから竹谷が返した。太安万侶は日本書紀の編集にも関わったと言われている。聖コトバは天高くボールを上げ、仲間内で文章のラリーを始めた。
「五月蝿有り集まりてこりかさなること十丈、」
「大空を飛んで信濃坂を越え、」
「鳴音雷の如く東上野に至って散る」
日本書紀の中にある一文である。難しい出題だ。ボールはいつも通り大きな弧を描いて飛んだ。この文中の五月蝿とはミツバチのことを指している。これを元にして、うるさいに五月蝿いという当て字を世界で初めて用いた有名な明治文豪がいる。今その名を返せば古典から近代小説へ流れを変えられる。だがこんな専門知識を歌仙は知らないだろう。この文を聞いたことすら初めてかもしれないのに。客席の目線がボールを追って、ひゅうんと上がり落ちていく。
点を、取られる。
「取られない」
美々実さんが、俺の心を読んだかのように呟いた。そう言える根拠を考えてみて、思い当たる節があった。キリがその球を下唇を噛んで迎える。
「夏目漱石」
言った! 赤ん坊に例えても足りないくらいの無垢な笑顔でキリは排球を叩いた。そうだ、そういえばあいつの好きな作家は夏目漱石だった。だよな、好きな作家の背景は調べるよな。キリは審判に向かって、
「うるさいの当て字に五月蝿を初めて用いたのは、夏目漱石。ですよね」
断言してもっと笑った。古井先生はようやく認めたように、朗らかに頷いた。
「フフッ、まさか返すとは」
ミカエルが不敵に微笑んだ。聖コトバは予想外の展開にめっぽう弱い……はずだが、これは全国大会である。返されたときの対策も念密に練っていたらしい。一瞬どよめきは起こったものの、白鳩どもはそれ以上焦ることはなかった。
「正岡子規」
ヨシュアがバリトンに属す声でアンダーを打つ。俳人の正岡子規は、夏目漱石の親友だ。
「柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺」
彼の有名な俳句を早口で暗唱し、ひよこのバックレフトがアタックを打った。
「写生俳句」
白鳩のバックセンターはスパイクで返した。写生俳句とは、正岡子規が唱えた俳句の一類型であり、見たままの景色を句作するという創作姿勢を指している。
歌仙の幸薄そうな少年、たしかカイちゃんと呼ばれていたやつが動いた。
「夕風や 白薔薇の……」
正岡子規が詠んだ、とある俳句の始まりを不安げに口に出してトスを上げる。そして、
「ひゃっ、ど忘れしちゃった。誰か続きを言ってアタックだけお願ぴゃあ!」
自分で真上に向かわせたから当然自分へと一直線に落ちてきたボールを、見事なまでに頭のてっぺんにぶつけた。おい歌仙、努力と成長はどうした。尺八が少し雑に鳴る。
「零対二」
ちなみに正解は、夕風や 白薔薇の花 皆動く。
「ちょっとカイちゃあん! なんで知らない歌を言おうとしちゃったの。しかも全国大会で。そんな運試し、しないでほしいな!」
バックライトの気が強そうな少年(まっちゃん?)がカイちゃんを指差して怒鳴っている。
「ご、ごめんまっちゃん。だって、写生俳句を何か暗唱しなくちゃって、思って」
幸薄そうなチビはおどおど答えた。強気なチビは頬をたんまり膨らませ続ける。
「もういいよ下がって。カイちゃんはいっつもそうだよ。うろ覚えのことばっかり言おうとするでしょ。もっと捻れば、いくらでも違う返しはできるんだってば。考え抜いてから、自信のある返しをしてほしいの。いいか、次は僕が、」
「言っちゃだめだからーっ!」
竹谷が割って入った。
「まっちゃん、本当にだめだから。次は僕がこう言うっての、禁句だから。相手に手の内がバレるから。有言実行じゃなくて不言実行にしてほしいよ、頼むか」
「写生俳句」
「らっ?」
歌仙の言い合いが終わらないうちに、断りもなく聖コトバが試合を再開させた。客席が一斉にどよめく。わああ、とチビたちは慌てふためいて立ち位置に戻り、
「ホトトギスー!」
まっちゃんと呼ばれた強気少年がフォームの乱れたアタックをした。彼がかろうじて拾ったボールは、相手コートへなんとか飛んでいく。
「おやおや、とめましたか。フフッ」
天使もどきは水色の瞳を光らせる。
「うはあ、今の不意打ちはひどいっしょ。ミカちゃんまじ外道っすわー!」
ジョージが客席から身を乗り出し、楽しげに声を張った。内田が、
「ミカちゃん呼びはやめろよ」
と、やつの服の裾を引っ張った。
「なんで? 余計に性別不詳になるから?」
「そこじゃねえよ。先輩にちゃん付けすんなって話だよ」
「あ、そっちね。たはは」
千人近くいると思われる観客は、軌道がよろめく球を息を飲んで見守っている。速見の手はキリシタンらしくアーメンだった。ふいに眉をしかめ、
「おっと、これじゃ聖コトバを応援してるんだぜ」
指をほどいてから、怪訝な顔で合掌をした。いやこれじゃニチセイなんだぜ、とやつが呟いている間に、歌仙が打った球がコートをギリギリで越していく。
ホトトギスとは、病床の正岡子規が、弟子の高浜虚子に編集を頼み作っていた晩年の句誌のタイトルである。句会を開き彼はこの誌で多くの新人を育てた。結核に苦しみながら、寝たきりになりながら、しかし子規は筆を取ることを最期までやめなかったのである。子規庵と呼ばれる彼の家にはいつも多くの俳人が集っていた。彼のペンネームである子規も、その句誌と同名の鳥の名を意味している。するどい鳴き声から、その鳥は古くよりこう謳われた。
「鳴いて血を吐くホトトギス」
正岡子規は結核が発覚した二十二歳のときから、喀血する自らを子規と名乗るようになったのだ。重い言葉を乗せたボールが歌仙側へ飛んでいく。アリーナ中が静かになった。
「病床六尺」
キリが返した。寝たきりになった子規が、病床から見られる範囲の小さな世界をこう呼んだ。それでも子規が創作を続け、俳人として生きぬこうとした姿が、きっと全員の脳裏に浮かんでいるだろう。ヨシュアが深く頷き、
「糸瓜忌」
とその球を大事に上へあげた。子規の命日がこう呼ばれる。三十五歳の短い生涯を終えたその日、子規は三つの句を詠んだ。フロントセンターのミカエルが、ヨシュアの打った球を受け、歌仙へ清らかな声で返す。
「糸瓜咲いて 痰のつまりし 仏かな」
子規が、最期に残した句の一つ目だ。
「痰一斗 糸瓜の水も 間にあはず」
竹谷が返した。そして静けさの中に、神々しくヨシュアの暗唱が響いた。
「をととひの へちまの水も 取らざりき」
それに返そうと歌仙のホビット集団は構える。やつらの脳裏には、返す予定の言葉が渦巻いでいるはずだが、糸瓜忌、正岡子規、ホトトギス、結核、写生俳句。
ひよこたちは絶望的に口を開けて固まった。聖コトバらしい最後の一点だった。先に知識が底につけば、負ける。コートに球が落ちた。
「零対三。勝者、聖コトバ学院高等学校」
尺八が侘しく響いた。正岡子規は死ぬ十時間前にこの三つの句を読み、そのままこれが、絶筆となったという。歌仙高校の全国大会が、終わった。
客席に駆け上がってきて、ホビットたちは泣き喚いた。
「びえーっ、知識の差が、う、うあ、技術の差もすごかったよ、二回戦敗退なんて予定外だよ、まだ僕たち、まとさんのチームと戦ってなかったのにびえーっ」
キリが姉に飛びつく。美々実さんは弟の背を涙目でさすっていた。
「よくがんばった。書籍くんはよくがんばったよ。私が仇を取ってやるからな。あ、私じゃないわ。私、今年はただの客だわ。びえーっ、書籍くんごめんなあああ、姉ちゃん直々に仇取れなくてごめんなああ」
同じ泣き顔が並ぶ。全く、かっわいいな、この姉弟は。
「キリちゃん、ミミさん、オイラたちに任せるんだぜ」
速見が力強く目を見開いて全身からやる気をみなぎらせる。
「う、うあ、はやみん頼んだよ。前キャプテンからの頼みだよ」
「合点承知なんだぜ」
えぐえぐと泣いている歌仙のホビットたちと美々実さんを見回して、ひよこが一匹足りないことに気づいた。ソウルが、カイちゃんと呼ばれていた幸薄少年に聞いた。
「竹谷どこいった?」
「あっはい、あのっ、ユグちゃんなら、ヨシュアさんと決闘しにいきました」
「え、うそ。あれ本気だったんだ」
「そうみたいですけど、うう。そーるさん、ユグちゃんは大丈夫でしょうか」
大丈夫だよ、と今に限ってソウルは言わなかった。大丈夫じゃないからな。
客席に腰掛け、ホビットたちは背筋を伸ばしコートを見下ろした。歌仙と聖コトバの試合が終わった第一アリーナに、放送が流れ出す。
「日本再生大学付属高等学校と、ホトケノザ学園高等学校は、五分後に第一アリーナへ集合してください。二回戦を行います。繰り返します」
あ、忍のとこだ。と思うと同時に「ひゃあー」と女子比率が多い柔らかな断末魔が伸び上がった。斜め後ろの席からだ。見るとパステルカラーの少人数の団体がのんびりと慌てていた。春の七草をあしらった、ほのぼのした体操服。たった今、強豪校と一緒に招集されたホトケノザ学園である。去年は俺たちと同じく三回戦で敗退した、そこそこ強いチームだ。四季の花々だとか着物の重ね色だとか、風流なものを好んで出題する、校風も部員もゆったりした高校だ。
「うわ。二回戦で忍さんとこと当たるって災難っすな」
ジョージが肩をすくめて、脱力して微笑んだ。ホトケノザはニチセイと好きなジャンルが完全にかぶっているため、四字熟語での会話も容易く対応できそうだが。
「な。しかもあいつら、全然スピードタイプじゃねえんだよ」
「まじすか。かっわいそ!」
長身の後輩はへらっと肩をすくめる。俺は心底同情して、パステルカラー達を目で追った。直前まで話し合う姿があったが、あくまで穏やかだった。アナウンスから五分後、ニチセイとホトケノザの戦いは始まったが、それは瞬間豪雨のように過ぎ去った。ホトケノザの、
「それでは先攻なので、こっちが先に投げますよお。せり なづな」
という、ほわほわしたサーブに始まり、
「ごぎやう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ これぞ七草」
を言い切るまでに試合が終わったのでもう詳細は書かない。忍たちが本気を出した結果の、驚異の連続三点だった。ホトケノザの連中は柔和に微笑んだ。
「はあ、さすが、強豪はすごいなあ、いい経験になったなあ」
闘争心というものをあまり感じないチームである。ただ日本語を楽しんでいるような印象を受けた。最後の握手で、忍は人なつこい笑みを浮かべこう述べた。
「なんや君ら、ワイらとホンッマ気が合いそうでんがな。今日の戦いが終わったら、部屋で共に語ろやないか。ホテルでは何号室にいてはりまっか」
友情が生まれ、アリーナ中がほっこりした。こんな試合が、たまにはあってもいいと思う。
その試合が終わったときに、ちょうど竹谷がぼろぼろ涙をこぼしながら客席に帰ってきて、その涙を隠しもせずに真っ直ぐ前を向き、首を振った。
「む、むりですから。あんな、あんな宗教じみた愛には、敵いませんから。本当に怖かったんですから。すごく怖かったんですから」
涙が枯渇しそうな勢いで泣いている。欅平さんが目を細め、達観した社会人のような笑みを浮かべた。そして頬杖をつき、語りだす。
「なんだ少年、失恋かい。涙と一緒に忘れちまいな。愛の形は人それぞれさ。宗教みてえな愛を求める女もいりゃあ、友情みてえな愛を求める女もいる。今回は、おめえに合わねえ相手だったって、だけなんだよ」
またこの方は勘違いをしているようだけれど、いいことを言ってらっしゃる。
「ぐすっ。誰か知らない上に、何か間違ってますけど、その言葉は響きました!」
竹谷は泣き止んで、明るい表情で欅平さんに笑いかける。
「はっはは、そりゃよかったよ。俺さまもおめえが誰か知らねえが、泣いてるやつは、ほっとけねえ質でよ。後輩衆の知り合いとありゃあ尚更さ」
緑メッシュの長身男は大人びた微笑を浮かべて、座席から少年を仰ぎ見た。なんでキザなセリフも動作も、この人には似合ってしまうのだろう。
両方のアリーナで次々と試合は終わっていき、三回戦に出場するチームがどんどん決まっていく。万葉高校は当然のように勝ち進んでいる。それからニチセイ、聖コトバ、俺たち新古今。例の唄唄い高校もだ。さらに昨年の強豪だった詩吟高校、全四季愛護学院など。
そしてついに、二回戦が全チーム終了した。時計は四時半を指していたが、本日この場所を使えるのは五時までだ。一試合の制限時間は一時間であるため、今から三回戦を始めることは不可能である。アナウンスが流れ、部員は全員第一アリーナへ集合。開会の時と同じく高校ごとに整列した。さて、とおじいちゃんの声がマイクを通して響く。
「皆々様のご協力のおかげで、本日の全国大会はスムーズに運営することができました。時間の問題で三回戦以降は、また明日に行いたいのだけれど、反対意見は、おられたら困りますから。おられない、おられない。ことにします。決定事項です。ごめんね。惜しくも敗退してしまったチームも、よくがんばってくれました。どうぞ明日は観客席から、ライバルでもあり友人でもある、文芸バレーボール選手の仲間たちを最後まで応援してあげてください。それでは明日も、精一杯がんばって参りましょう。忘れ物をしないように、ホテルへ戻ってくださいな」
開会の長さを思えば随分と手短にしめ、竹谷史郎会長は軽くお辞儀をする。夕暮れの中、俺たちはアリーナを後にした。日本再生大学のガラス張りの校舎が陽を照り返していて眩しい。
母さんは車でいったん家に戻り、明日また来るらしい。家から日生大までは非常にアクセスが悪いので宿泊を勧めたが「楽を金で買えだァ? 漫画家の万年金欠なめんじゃないわよッ」とキレ気味で言われた。客席に溢れていた第一期生の先輩方は皆どこへ消えてしまったのかと思っていたが、数分後に美々実さんから、こんな電話が来て判明する。
「まとちゃん、ちょっと聞いてくれ。大学横の自然公園にテントが溢れてやがる。文バレ第一期生同窓会状態だ。全員キャンプしてる。もちろん文バレもしてる。揃いも揃って同じこと考えすぎだろ、すっごく楽しいからこれ毎年するといいよ!」
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