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満月
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俺は窓の近くにある自分の席に座っていた。
「森山君。」
呼ばれて振り返ると彼女は笑顔で隣の席に座った。
「今日は部活ないの?」
「俺の部活は今の時期は月曜日と木曜日は休みだから。」
「そうなんだ」
「あのさ…俺ら友達なんだよな?」
「そうだよ」
「じゃあなんで、お互い苗字にくんとかさんつけてるんだ」
「あー、たしかに」
「そうだね。森山」
「夏石。まだちょっと違和感あるな」
「だね。」
そういえば、なんで夏石は俺に友達になろうなんて言ったんだろう。
彼女が席を立ち上がり窓の近くに来た。俺も立ち上がり彼女の横から月を見た。
「今日の月、綺麗だね。満月だ。」
「…告白?」
「どういうこと?」
「『月が綺麗ですね』って夏目漱石の言葉知らない?」
「授業で聞いたことある気がする」
「ロマンチックだよね」
「でも、なんて返事するか困らない?」
「うーんと、定番だったら『私死んでもいいわ』とかずっと好きだった人に対しては『前から月は綺麗です』とか言うはず」
「断るときは?」
「『青くはないですね』だったかな?」
「詳しいね。」
「興味あって、前に調べたから。他にも人によって色々な返し方があるんだよ」
「そうなんだ。夏石はどう返す?」
「え?」
「俺が夏石に『月が綺麗ですね』って言ったら」
「それは…今は言わないでおく」
「…わかった。そういえば、なんで俺に友達になろうって言ったの?話しかけたのが俺だったから?」
「違うよ。森山はクラスのみんなから好かれてて、優しいイメージだったから、私なんなとも仲良くしてくれるかなって思って」
「よかった。誰でもよかったのかと思ってた。」
「誰にでもそんなこと言わないよ。」
彼女は微笑んだ。誰でもよかったわけじゃなくてよかった。俺の中のモヤモヤしたものが無くなったようだった。
テスト一週間前になり、放課後一緒に勉強するようになった。
「夏石は大学とか決めたの?」
「うーん、全然考えてない」
「なのに勉強してるの?」
「とりあえず。テストあるからね。森山は?」
「俺は地元の大学を卒業して、公務員試験受けるつもり」
「そうなんだ」
「結構普通だろ」
「でもちゃんと考えてるんだね。あ、ここの問題教えて」
「ここはこの式を使って…」
「わかった!これで…合ってる?」
「合ってるよ」
「なるほどね、ありがとう」
「それにしても勉強疲れたな」
「疲れるよね」
「あ、そうだいいこと思いついた。俺と賭けない?合計点が俺の方が高かったら、駅前のクレープ奢って」
「わかった。じゃあ、私の方が高かったら、森山がクレープ奢ってね」
「初めて二人で遊びに行くね。デートみたい」
俺が冗談っぽく言うと、彼女は顔を逸らした。覗き込むと顔が真っ赤になっていた。
「もしかしてデートしたことないの?」
「…うん」
「ていうことは、彼氏いたこととかないの?」
「…そうだよ、この間まで友達もいなかったし」
「じゃあ、俺が初めての友達でデート相手ってこと?」
彼女は黙って頷いた。友達になろうと言われた時はこんな顔を見れると思わなかった。前まではクールなイメージがあったが、今では話している時はずっと笑顔で、たまに照れて顔を赤くして…
「森山?どうしたの?」
「え。何が?」
「ずっと私の顔見てたから。なんかついてる?」
「いや、別に。」
ずっと見てしまっていたらしい。彼女は俺が見てたことをそこまで気にしていないようで、また勉強を始めた。
テストが全て帰ってきた。俺は900点満点中613点と俺にしては上出来だった。
「夏石。何点だった?」
「同時に見せあおう」
「いーよ。せーの」
彼女の点数は605点だった。
「勝った!やった!」
「絶対勝ったと思ったんだけどな」
「結構いい勝負だったね」
「勝負は勝負だから、奢る!行こう!」
俺たちは駅前に向かった。クレープ屋には多くの女子高生が並んでいて、居づらかった。側から見たら、デートなのに女の子に奢らせてるみたいで嫌だったから、俺が払った。夏石は最後の最後まで抵抗したが、俺に華を持たせてと言ったら大人しくなった。
「私が負けたのにごめんね」
「最初っから俺が払うつもりだったから気にすんなよ。ごめんよりありがとうって言ってよ」
「本当にありがとう」
「じゃあ食おう」
「いただきます。美味しい!」
「そんなに美味しいの?」
「うん!食べてみ…やっぱなんでもない」
「…一口ちょうだい」
夏石の手を掴んで、一口もらった。彼女は驚いた顔をしていたが、気にしてないふりをした。
「めっちゃ甘い。でも美味しい」
「…だよね」
「夏石ってすぐ照れるね」
「別に照れてないよ。全然」
「顔赤いのは気のせい?」
「気のせいじゃない?」
「ふーん」
そんなこんなで俺たちの初デートは終わった。
「森山君。」
呼ばれて振り返ると彼女は笑顔で隣の席に座った。
「今日は部活ないの?」
「俺の部活は今の時期は月曜日と木曜日は休みだから。」
「そうなんだ」
「あのさ…俺ら友達なんだよな?」
「そうだよ」
「じゃあなんで、お互い苗字にくんとかさんつけてるんだ」
「あー、たしかに」
「そうだね。森山」
「夏石。まだちょっと違和感あるな」
「だね。」
そういえば、なんで夏石は俺に友達になろうなんて言ったんだろう。
彼女が席を立ち上がり窓の近くに来た。俺も立ち上がり彼女の横から月を見た。
「今日の月、綺麗だね。満月だ。」
「…告白?」
「どういうこと?」
「『月が綺麗ですね』って夏目漱石の言葉知らない?」
「授業で聞いたことある気がする」
「ロマンチックだよね」
「でも、なんて返事するか困らない?」
「うーんと、定番だったら『私死んでもいいわ』とかずっと好きだった人に対しては『前から月は綺麗です』とか言うはず」
「断るときは?」
「『青くはないですね』だったかな?」
「詳しいね。」
「興味あって、前に調べたから。他にも人によって色々な返し方があるんだよ」
「そうなんだ。夏石はどう返す?」
「え?」
「俺が夏石に『月が綺麗ですね』って言ったら」
「それは…今は言わないでおく」
「…わかった。そういえば、なんで俺に友達になろうって言ったの?話しかけたのが俺だったから?」
「違うよ。森山はクラスのみんなから好かれてて、優しいイメージだったから、私なんなとも仲良くしてくれるかなって思って」
「よかった。誰でもよかったのかと思ってた。」
「誰にでもそんなこと言わないよ。」
彼女は微笑んだ。誰でもよかったわけじゃなくてよかった。俺の中のモヤモヤしたものが無くなったようだった。
テスト一週間前になり、放課後一緒に勉強するようになった。
「夏石は大学とか決めたの?」
「うーん、全然考えてない」
「なのに勉強してるの?」
「とりあえず。テストあるからね。森山は?」
「俺は地元の大学を卒業して、公務員試験受けるつもり」
「そうなんだ」
「結構普通だろ」
「でもちゃんと考えてるんだね。あ、ここの問題教えて」
「ここはこの式を使って…」
「わかった!これで…合ってる?」
「合ってるよ」
「なるほどね、ありがとう」
「それにしても勉強疲れたな」
「疲れるよね」
「あ、そうだいいこと思いついた。俺と賭けない?合計点が俺の方が高かったら、駅前のクレープ奢って」
「わかった。じゃあ、私の方が高かったら、森山がクレープ奢ってね」
「初めて二人で遊びに行くね。デートみたい」
俺が冗談っぽく言うと、彼女は顔を逸らした。覗き込むと顔が真っ赤になっていた。
「もしかしてデートしたことないの?」
「…うん」
「ていうことは、彼氏いたこととかないの?」
「…そうだよ、この間まで友達もいなかったし」
「じゃあ、俺が初めての友達でデート相手ってこと?」
彼女は黙って頷いた。友達になろうと言われた時はこんな顔を見れると思わなかった。前まではクールなイメージがあったが、今では話している時はずっと笑顔で、たまに照れて顔を赤くして…
「森山?どうしたの?」
「え。何が?」
「ずっと私の顔見てたから。なんかついてる?」
「いや、別に。」
ずっと見てしまっていたらしい。彼女は俺が見てたことをそこまで気にしていないようで、また勉強を始めた。
テストが全て帰ってきた。俺は900点満点中613点と俺にしては上出来だった。
「夏石。何点だった?」
「同時に見せあおう」
「いーよ。せーの」
彼女の点数は605点だった。
「勝った!やった!」
「絶対勝ったと思ったんだけどな」
「結構いい勝負だったね」
「勝負は勝負だから、奢る!行こう!」
俺たちは駅前に向かった。クレープ屋には多くの女子高生が並んでいて、居づらかった。側から見たら、デートなのに女の子に奢らせてるみたいで嫌だったから、俺が払った。夏石は最後の最後まで抵抗したが、俺に華を持たせてと言ったら大人しくなった。
「私が負けたのにごめんね」
「最初っから俺が払うつもりだったから気にすんなよ。ごめんよりありがとうって言ってよ」
「本当にありがとう」
「じゃあ食おう」
「いただきます。美味しい!」
「そんなに美味しいの?」
「うん!食べてみ…やっぱなんでもない」
「…一口ちょうだい」
夏石の手を掴んで、一口もらった。彼女は驚いた顔をしていたが、気にしてないふりをした。
「めっちゃ甘い。でも美味しい」
「…だよね」
「夏石ってすぐ照れるね」
「別に照れてないよ。全然」
「顔赤いのは気のせい?」
「気のせいじゃない?」
「ふーん」
そんなこんなで俺たちの初デートは終わった。
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