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第九章:英雄たち
第百十八話:あの呪いは、
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次の日、二人の客室に朝一で女王がやってくる。
仕事は宰相が殆どこなしてしまうから、自分は午前中は基本的に休みなのだ。9歳だし。そんなことを言いながら。
そのまま2時間程、3人で昨日の様に遊ぶ。
サニィは昨日の礼があるので全力で、レインはもちろん全力で、エリーゼは、何かを気にしつつ。
エリーゼは強かった。マナを感じるサニィに隙を見るレイン、通常であれば彼ら二人はどんな勝負であっても勝てるだけの力がある。しかし、王女の力は正しき方向を示す、だ。どれだけ隙を見せようが、どれだけ動揺しようが、運が絡む戦いをする以上その能力に死角はなかった。
ババ抜きをすれば、女王に回るのは揃う札のみ。そもそもジョーカーが回ることすらない。
神経衰弱をすれば、女王に回ったら終わりだ。一度で全ての札を揃える。
ポーカーならば、いや、最早言うべくもない。
「わーい、また妾の勝ちー!」
「クソッ! もう一回だ! 俺が負けるなど許されん! 勝つまでやるぞ!」
「ちょっ、レインさん、相手は9歳なんですから。少しは大人になってくださいよもう」
「妾は女王だ。手加減など無用! やーい、雑魚英雄ー! 次は大富豪だ。妾は大富豪を超える女王になる!」
二人はひたすらつぎつぎと急かす女王に付き合った。
一名本気で女王を倒そうと青筋を浮かべている者がいるが、それはともかく、女王には何かしら目的がある。
それが、二人には分かっていた。
正しき方向を示す能力。それは、必ずしも全ての者にとって正しいとは言えない。
少なくとも、人生経験の少ない子どもにとっては特に。
正義の反対は悪ではなくもう一つの正義。変えられない絶望があるのならば、その結末をどうするのが最も正しいのか、そんなことはもしかしたら、誰にも分からないのかもしれない。
三人は揃って昼食を取ると、宰相を伴って再びレインとサニィの客室へと向かう。
途中で宰相が女王にこそこそと何かを伝えて、女王も渋い顔で頷いているが、二人は気づかないふりをした。
そして、何度か4人でトランプをした後、レインが遂に切り出した。
「さて、エリーゼ27世。サニィには聞きにくいだろうから俺が聞こう。仕事は殆ど宰相が、と言ったが、先代はどうした? 母親だろう?」
「え、あの、妾が継いだから、今は、や、休み。そう、休みだ。先代女王は今、長い休みをとっておる」
「そうか。俺達を王城に呼んだ理由は、ただ竜殺しに会いたかったからなのか?」
「も、もちろんだ。あの2頭のドラゴンには我が国もほとほと困っておった。ここは初代エリーゼが選んだ土地だからな。竜の魔王を倒した英雄が建てた都市を竜に追われるなんて、笑い話にもならんだろう?」
「それは納得の理由だ。じゃ、なんで俺達を留める? もちろん、サニィを治してくれた礼が寂しい女王様の遊び相手になることで良いのなら、1ヶ月程度なら付き合えるが」
女王にとって、言いたくない理由は簡単だった。
だから彼女は、宰相にすがりつく。9歳の彼女にとって、それは決して認めたくはない。分かっていても、言いたくない。母親がもう少しで死んでしまうなどと。
だから彼女は、宰相にすがりついた。
「女王様……、それでは私が代わりに。レイン様サニィ様、彼女の母上、先代エリーゼ様は魔王の呪いに罹っています。残りの時間は1ヶ月。そこから救う為の正しき道が、あなた方二人に頼む、ということだった様なのです」
それは、予測できたことだった。
残念ながら、今のサニィにはそれを解呪する方法がないことを除けば、確かに最善の方法だろう。
世界中で呪いを解く可能性があるとすれば、サニィ一人のみ。
それならば確かに、正しき道がそれと出てもおかしくはない。
女王は、瞳の端に涙を貯め、上目遣いで二人を見つめる。
治して欲しい。女王としてではなく、9歳の子どもとして、母親を救って欲しい。素直にそう思っている。
それが、痛いほどに伝わってくる。
「分かりました。あと1ヶ月のうちに、解呪する方法を探してみます。お任せ下さい。レインさん、私、早速行ってきますね」
「ああ、俺は少ししたら行く。準備もあるしな」
死ぬ恐怖をこの中で最も知っているのはサニィだ。
一体幾度死んだのだろうか。それを数えられはしなかった。しかし、そのどれもが、ただ、絶望に塗れていた。
そんな頼みをされて、断れるわけなど、無かった。
「宰相、少し話がある」
サニィに付き、女王も共に出ていく。彼女は女王にとって希望の象徴。晴れ切った顔で部屋を出ていく。
それに対して、レインの表情は振るわなかった。
宰相を呼びつけ、言わなければならないことを伝える。
「サニィの解呪は難しい。あの呪いは、魔王よりも強くなければ解けない。今のサニィでは、どれだけ努力したところでその域には届かない」
「期待するな、と、そういうことですか」
「ああ。道を示す、というものが、サニィを指定したのか俺を指定したのかで変わってくるがな」
「えーと、女王様が言うにはお二人、ということでしたが……」
二人……か。
と言うことは、もしかしたらそもそも。
「その道が見えたのはいつだと言っていた? 内容も詳しく頼む」
「2年ほど前の、7月28日に。鬼神と呼ばれる男と聖女と呼ばれる女性が2年後、この国を訪れ、は……」
そこで、宰相は気づく。
レインの言おうとしてしていた意図を。
問題点を見抜く能力によって、その真実へと到達した。
残り[1199日→1198日]
仕事は宰相が殆どこなしてしまうから、自分は午前中は基本的に休みなのだ。9歳だし。そんなことを言いながら。
そのまま2時間程、3人で昨日の様に遊ぶ。
サニィは昨日の礼があるので全力で、レインはもちろん全力で、エリーゼは、何かを気にしつつ。
エリーゼは強かった。マナを感じるサニィに隙を見るレイン、通常であれば彼ら二人はどんな勝負であっても勝てるだけの力がある。しかし、王女の力は正しき方向を示す、だ。どれだけ隙を見せようが、どれだけ動揺しようが、運が絡む戦いをする以上その能力に死角はなかった。
ババ抜きをすれば、女王に回るのは揃う札のみ。そもそもジョーカーが回ることすらない。
神経衰弱をすれば、女王に回ったら終わりだ。一度で全ての札を揃える。
ポーカーならば、いや、最早言うべくもない。
「わーい、また妾の勝ちー!」
「クソッ! もう一回だ! 俺が負けるなど許されん! 勝つまでやるぞ!」
「ちょっ、レインさん、相手は9歳なんですから。少しは大人になってくださいよもう」
「妾は女王だ。手加減など無用! やーい、雑魚英雄ー! 次は大富豪だ。妾は大富豪を超える女王になる!」
二人はひたすらつぎつぎと急かす女王に付き合った。
一名本気で女王を倒そうと青筋を浮かべている者がいるが、それはともかく、女王には何かしら目的がある。
それが、二人には分かっていた。
正しき方向を示す能力。それは、必ずしも全ての者にとって正しいとは言えない。
少なくとも、人生経験の少ない子どもにとっては特に。
正義の反対は悪ではなくもう一つの正義。変えられない絶望があるのならば、その結末をどうするのが最も正しいのか、そんなことはもしかしたら、誰にも分からないのかもしれない。
三人は揃って昼食を取ると、宰相を伴って再びレインとサニィの客室へと向かう。
途中で宰相が女王にこそこそと何かを伝えて、女王も渋い顔で頷いているが、二人は気づかないふりをした。
そして、何度か4人でトランプをした後、レインが遂に切り出した。
「さて、エリーゼ27世。サニィには聞きにくいだろうから俺が聞こう。仕事は殆ど宰相が、と言ったが、先代はどうした? 母親だろう?」
「え、あの、妾が継いだから、今は、や、休み。そう、休みだ。先代女王は今、長い休みをとっておる」
「そうか。俺達を王城に呼んだ理由は、ただ竜殺しに会いたかったからなのか?」
「も、もちろんだ。あの2頭のドラゴンには我が国もほとほと困っておった。ここは初代エリーゼが選んだ土地だからな。竜の魔王を倒した英雄が建てた都市を竜に追われるなんて、笑い話にもならんだろう?」
「それは納得の理由だ。じゃ、なんで俺達を留める? もちろん、サニィを治してくれた礼が寂しい女王様の遊び相手になることで良いのなら、1ヶ月程度なら付き合えるが」
女王にとって、言いたくない理由は簡単だった。
だから彼女は、宰相にすがりつく。9歳の彼女にとって、それは決して認めたくはない。分かっていても、言いたくない。母親がもう少しで死んでしまうなどと。
だから彼女は、宰相にすがりついた。
「女王様……、それでは私が代わりに。レイン様サニィ様、彼女の母上、先代エリーゼ様は魔王の呪いに罹っています。残りの時間は1ヶ月。そこから救う為の正しき道が、あなた方二人に頼む、ということだった様なのです」
それは、予測できたことだった。
残念ながら、今のサニィにはそれを解呪する方法がないことを除けば、確かに最善の方法だろう。
世界中で呪いを解く可能性があるとすれば、サニィ一人のみ。
それならば確かに、正しき道がそれと出てもおかしくはない。
女王は、瞳の端に涙を貯め、上目遣いで二人を見つめる。
治して欲しい。女王としてではなく、9歳の子どもとして、母親を救って欲しい。素直にそう思っている。
それが、痛いほどに伝わってくる。
「分かりました。あと1ヶ月のうちに、解呪する方法を探してみます。お任せ下さい。レインさん、私、早速行ってきますね」
「ああ、俺は少ししたら行く。準備もあるしな」
死ぬ恐怖をこの中で最も知っているのはサニィだ。
一体幾度死んだのだろうか。それを数えられはしなかった。しかし、そのどれもが、ただ、絶望に塗れていた。
そんな頼みをされて、断れるわけなど、無かった。
「宰相、少し話がある」
サニィに付き、女王も共に出ていく。彼女は女王にとって希望の象徴。晴れ切った顔で部屋を出ていく。
それに対して、レインの表情は振るわなかった。
宰相を呼びつけ、言わなければならないことを伝える。
「サニィの解呪は難しい。あの呪いは、魔王よりも強くなければ解けない。今のサニィでは、どれだけ努力したところでその域には届かない」
「期待するな、と、そういうことですか」
「ああ。道を示す、というものが、サニィを指定したのか俺を指定したのかで変わってくるがな」
「えーと、女王様が言うにはお二人、ということでしたが……」
二人……か。
と言うことは、もしかしたらそもそも。
「その道が見えたのはいつだと言っていた? 内容も詳しく頼む」
「2年ほど前の、7月28日に。鬼神と呼ばれる男と聖女と呼ばれる女性が2年後、この国を訪れ、は……」
そこで、宰相は気づく。
レインの言おうとしてしていた意図を。
問題点を見抜く能力によって、その真実へと到達した。
残り[1199日→1198日]
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