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第十一章:南の大陸へ
第百四十二話:ひとまずの解決
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「ところで、お前がカタコトだった理由はなんだ?」
村へ案内される途中、レインはそんな質問をする。
集中しているとはいえ、サニィが魔法を行使していてもカタコトになるということは珍しい。
単純に、気になった。
だから青年は背後に槍を突きつけられたまま、今にも刺すぞと言わんばかりの怒気の中、そう質問した。
「ドウデモイイコト、イッテルト、ササレマスヨ」
「んん?」
「コレ、コトバ、イシニカエテ、ツタエテルノデ、チョウブン、ダメ」
「……了解した」
部族民達は何か言いたそうにしていたが、サニィのそれでレインが何を聞いたのかも分かったのだろう。
ムスッとした顔をしたままではあるが、突き刺すぞという構えは解く。
もちろん、警戒はしたままだったが。
集落に着くと、多くの者が床に臥せっている。発熱に吐き気、咳、頭痛。かなり酷い症状の者が7人。
そうでなくても危険度の高い者、熱が出始めたばかりというものまで含めると、村の7割、40名程が同様の症状を訴えていた。
「ちょうど、解剖学書とか医学書をオリヴィアの所に行った時に随分と読ませて貰いましたんで、なんとかなるとは思います。分解と復元を使って無理やり治療も出来ますが、それじゃ根本的な解決にもなりませんし、うーん、原因は……」
診察を始めると、サニィはいつもの通り言葉を通して集中を開始する。
流石にそれを魔法で部族民に伝えることは出来ないんだろう。レインの方を睨みつけるので、レインは黙って頷く。サニィは病人に手をかざし、その体を詳細に分析する。
「ウイルス性の症状ですね。感染源は……、ん? 他の人も……」
部族民はレインを睨み、レインは黙って頷く。
「何かに噛まれた跡があります。蚊、ではなさそうですね。噛み口が二箇所……。近くのこのサイズのこんな噛み口を持った生き物、は……」
サニィは病人を置いたまま、周囲をキョロキョロと見回す。
部族民はレインを睨み、レインは黙って頷く。
「あ、あなた!」
急に目を見開くと、レインを睨んでいた部族の青年を捕まえ、その脚を取る。そのふくらはぎの付近に、それは居た。
「これです。こいつが犯人」
それは、2mm程の虫、ダニだった。
早速サニィはそれを見ると、それが持つウイルスを分析する。
とは言え、サニィはワクチンを作れる様な知識は持ち合わせていない。
魔法で、その根本的な解決を図ることにする。
「まずはウイルスを全部消しちゃって、後はダニが近づかない様にしましょう。ダニくらいなら近づけない魔法も作るのは難しくないですし。私が出来るのはその位。このサンプルだけ後でどこかの医療機関に持っていきますか」
部族民は困惑の表情でレインを睨み、レインは黙って頷く。
「あ、ナオリマス。ダニ、トカ、カ、ニハ、キヲツケテ」
――。
そのダニは他の大陸にも暖かければ多く生息するものだった。
しかし、他の場所では余りこの様な被害を聞かない。蚊による感染症も、そこまでは多くない。
その理由は熱帯雨林は、マナが乏しいから。陰陽どちらも。
と、言う事は勇者や魔法使いが殆ど生まれないと言うこと。
勇者には、余り虫が寄り付かない。微弱な電流をクラーケンが嫌がるのと同じように、人の体内に満ちた陽のマナを、虫は嫌がる。
だから、基本的に虫による感染症は完全な人だけだった。勇者といえない程度でもマナを含んだ体を持っていれば、殆どそれにかかることはない。よって、虫媒介の感染症への対応は、世界で遅れていた。
「この村は閉じこもってるから余計とですね。他と交流を持ってれば、これほどに広がる前に対処ができたかもしれません」
「しかし、他所と交流を持ったからこそ入ってきた感染症で全滅した村もあるという話も聞く」
「うーん、正解は彼らが決めるしかないですね……。ワクチンだけは作ってもらって持ってくることにしましょう。子どもが生まれたらどちらにせよ、必要ですし」
サニィが行った処置は、ウイルスを消滅させ、分解の魔法を応用して彼らの皮膚に少量のマナを練りこんだだけ。少しばかりの痛みを伴う処置ではあったが、それだけでも格段に虫は寄り付かなくなるはずだ。
虫さえ寄らなければ、今回の件は一先ずの解決を見せるはず。
新たに子どもが生まれる前までは。
このマナに乏しい地では、きっとマナを体内に持った子どもは殆ど生まれないだろう。
だから、今生きている人間にとっては半永続的な対処になるものの、そうでない者にとっては違う。
それが、医者ではないサニィの限界だった。
医学が発達する以前は、なんでもかんでもが魔法使いが生命を活性化させて処置終了と言う時代もあったらしい。
それに比べれば随分とマシな処置だし、個人相手には根本の解決とはなるものの。
「根本的な解決ってのは難しいものですね。癌とかならその細胞を一つ残らずパパッと消滅させちゃって復元して終わりなのに……」
「医学ではそっちの方が難しいはずだがな……。お前は医者じゃない」
この世界で医学が発展した最初の理由は癌だった。生命を活性化させると悪化する病がある。それはなんなのか。そう、疑問に思った者がそれを始めたと言われている。
その結果、現在では医者と医療魔法使いとが手を組んでやっているが、どちらか片方では根本的な解決が出来ないと言うパターンが殆どだ。
医療魔法使いは医療用の魔法を覚えるのに非常に時間がかかるので、医学そのものを修めるのは難しい。
医学自体も同じくだ。ならば、分かれてやったほうが早い。
「とは言え、村人も喜んでるし、一先ずは、解決だ」
「そうですね。私が何でもかんでも出来ちゃうと変な欲も出てきちゃいますし」
病が治り様子を見て数日後、二人をもてなす為に盛大な祭りが催される中、サニィはそれとはまた少しだけ、違ったことを思っていた。
子どもが生まれれば、その子らにとっては白紙の解決方法、か。
子ども、欲しかったな……。
村へ案内される途中、レインはそんな質問をする。
集中しているとはいえ、サニィが魔法を行使していてもカタコトになるということは珍しい。
単純に、気になった。
だから青年は背後に槍を突きつけられたまま、今にも刺すぞと言わんばかりの怒気の中、そう質問した。
「ドウデモイイコト、イッテルト、ササレマスヨ」
「んん?」
「コレ、コトバ、イシニカエテ、ツタエテルノデ、チョウブン、ダメ」
「……了解した」
部族民達は何か言いたそうにしていたが、サニィのそれでレインが何を聞いたのかも分かったのだろう。
ムスッとした顔をしたままではあるが、突き刺すぞという構えは解く。
もちろん、警戒はしたままだったが。
集落に着くと、多くの者が床に臥せっている。発熱に吐き気、咳、頭痛。かなり酷い症状の者が7人。
そうでなくても危険度の高い者、熱が出始めたばかりというものまで含めると、村の7割、40名程が同様の症状を訴えていた。
「ちょうど、解剖学書とか医学書をオリヴィアの所に行った時に随分と読ませて貰いましたんで、なんとかなるとは思います。分解と復元を使って無理やり治療も出来ますが、それじゃ根本的な解決にもなりませんし、うーん、原因は……」
診察を始めると、サニィはいつもの通り言葉を通して集中を開始する。
流石にそれを魔法で部族民に伝えることは出来ないんだろう。レインの方を睨みつけるので、レインは黙って頷く。サニィは病人に手をかざし、その体を詳細に分析する。
「ウイルス性の症状ですね。感染源は……、ん? 他の人も……」
部族民はレインを睨み、レインは黙って頷く。
「何かに噛まれた跡があります。蚊、ではなさそうですね。噛み口が二箇所……。近くのこのサイズのこんな噛み口を持った生き物、は……」
サニィは病人を置いたまま、周囲をキョロキョロと見回す。
部族民はレインを睨み、レインは黙って頷く。
「あ、あなた!」
急に目を見開くと、レインを睨んでいた部族の青年を捕まえ、その脚を取る。そのふくらはぎの付近に、それは居た。
「これです。こいつが犯人」
それは、2mm程の虫、ダニだった。
早速サニィはそれを見ると、それが持つウイルスを分析する。
とは言え、サニィはワクチンを作れる様な知識は持ち合わせていない。
魔法で、その根本的な解決を図ることにする。
「まずはウイルスを全部消しちゃって、後はダニが近づかない様にしましょう。ダニくらいなら近づけない魔法も作るのは難しくないですし。私が出来るのはその位。このサンプルだけ後でどこかの医療機関に持っていきますか」
部族民は困惑の表情でレインを睨み、レインは黙って頷く。
「あ、ナオリマス。ダニ、トカ、カ、ニハ、キヲツケテ」
――。
そのダニは他の大陸にも暖かければ多く生息するものだった。
しかし、他の場所では余りこの様な被害を聞かない。蚊による感染症も、そこまでは多くない。
その理由は熱帯雨林は、マナが乏しいから。陰陽どちらも。
と、言う事は勇者や魔法使いが殆ど生まれないと言うこと。
勇者には、余り虫が寄り付かない。微弱な電流をクラーケンが嫌がるのと同じように、人の体内に満ちた陽のマナを、虫は嫌がる。
だから、基本的に虫による感染症は完全な人だけだった。勇者といえない程度でもマナを含んだ体を持っていれば、殆どそれにかかることはない。よって、虫媒介の感染症への対応は、世界で遅れていた。
「この村は閉じこもってるから余計とですね。他と交流を持ってれば、これほどに広がる前に対処ができたかもしれません」
「しかし、他所と交流を持ったからこそ入ってきた感染症で全滅した村もあるという話も聞く」
「うーん、正解は彼らが決めるしかないですね……。ワクチンだけは作ってもらって持ってくることにしましょう。子どもが生まれたらどちらにせよ、必要ですし」
サニィが行った処置は、ウイルスを消滅させ、分解の魔法を応用して彼らの皮膚に少量のマナを練りこんだだけ。少しばかりの痛みを伴う処置ではあったが、それだけでも格段に虫は寄り付かなくなるはずだ。
虫さえ寄らなければ、今回の件は一先ずの解決を見せるはず。
新たに子どもが生まれる前までは。
このマナに乏しい地では、きっとマナを体内に持った子どもは殆ど生まれないだろう。
だから、今生きている人間にとっては半永続的な対処になるものの、そうでない者にとっては違う。
それが、医者ではないサニィの限界だった。
医学が発達する以前は、なんでもかんでもが魔法使いが生命を活性化させて処置終了と言う時代もあったらしい。
それに比べれば随分とマシな処置だし、個人相手には根本の解決とはなるものの。
「根本的な解決ってのは難しいものですね。癌とかならその細胞を一つ残らずパパッと消滅させちゃって復元して終わりなのに……」
「医学ではそっちの方が難しいはずだがな……。お前は医者じゃない」
この世界で医学が発展した最初の理由は癌だった。生命を活性化させると悪化する病がある。それはなんなのか。そう、疑問に思った者がそれを始めたと言われている。
その結果、現在では医者と医療魔法使いとが手を組んでやっているが、どちらか片方では根本的な解決が出来ないと言うパターンが殆どだ。
医療魔法使いは医療用の魔法を覚えるのに非常に時間がかかるので、医学そのものを修めるのは難しい。
医学自体も同じくだ。ならば、分かれてやったほうが早い。
「とは言え、村人も喜んでるし、一先ずは、解決だ」
「そうですね。私が何でもかんでも出来ちゃうと変な欲も出てきちゃいますし」
病が治り様子を見て数日後、二人をもてなす為に盛大な祭りが催される中、サニィはそれとはまた少しだけ、違ったことを思っていた。
子どもが生まれれば、その子らにとっては白紙の解決方法、か。
子ども、欲しかったな……。
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