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第十二章:仲間を探して
第百四十九話:英雄の子孫として
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サンダルはヘルメスに倣い短剣を武器としていた。
英雄であったヘルメスは彼自身にとっても英雄で、その身に流れる血は彼の誇り。
似た能力が発現したことで、自分自身も英雄になれるかもしれないと夢を見た幼少期を過ごしてきた。
ヘルメスの様に美しい肉体を目指したし、女が好きなのは、まあ、血かもしれないが、ともかく誇りある自分になろうと陰ながら努力を重ねていた。
時は経ち、そんな彼は本物の英雄と出会ったことで、少々の変化を見せていった。
「やはり私の能力はヘルメスとは違うな……。ワイバーンでは気づかなかったが、遥か格上と闘って初めて分かった。私と短剣は相性最悪だ」
「そうだな。加速しきるまでは防御が出来る武器が良いだろう」
サンダルは、真面目だった。
普段はチャラチャラしていて、美女と見ればすぐに興奮する、どうしようもない男の様に思える。
尤も、過酷な訓練の後でも美女を見かければすぐに元気になる辺りはレインも呆れを通り越して尊敬してもいいのではと呟いていたが……、それはともかく、剣に関してはだけは真面目だった。
だから彼は、何度も何度も痛めつけられた結果、自分のアイデンティティであったヘルメスを、捨てることを決意した。
「いいや、私はむしろ逆を取る。英雄ヘルメスはかつて魔王戦で、自分一人だけが生き延びた。それがどれほど無念であったのか、考えなかった日はない」
「……そうか」
ヘルメスの真実を、レインは知らない。
サンダルも、文章から推測したことでしかない。
「だから、私は短剣で彼以上の功績を上げたいと、そう考えていた。それこそが先祖に対する尊敬の意を表す手段だと」
だから、向いてもいない短剣を使い続けた。別にこれはヘルメスの宝剣ではないし、ただの業物。
「……」
「私は死ぬつもりはない。けれど、英雄になれるチャンスを得て、君にボロ負けして、考えを改める」
「何を言ってるんだ?」
それは死にゆく者が口にするセリフだ。
「私に出来ることは、なんだ?」
そんなことを聞かれては、言えることは一つしかない。
「……お前は弱い」
強い。ワイバーン50匹等、オリヴィアでもまだ多少は苦戦するはずだ。
しかし、「その能力には隙がありすぎる。変な気を起こすなよ」
「……起こすさ。起こさせてくれ。私に出来ることは、きっと決まってる。私の役割は、最強の一撃だ」
「お前がどれだけ努力したところで、俺の一撃には届かない」
だから、加速が完了するまでは防御主体で戦え。言外に、そう伝える。
それでも、サンダルの決意は硬かった。
十分な能力発動までに時間がかかる以上、防御はむしろ捨てる。どんな武器を持った所で加速中に攻められたら死ぬことは、何一つ変わらない。例え大盾を装備したところで、レインを相手に生き残る術等ありはしない。防御に気を取られて十分な加速ができなければ本末転倒だ。
「だから私は、仲間を信じることにする」
「は?」
何を言っているのか、今一分からない。
「君の弟子に、私より強い女性がいるのだろう?」
「ああ、……まさか」
「そう、その人に、……少しだけ守ってもらう」
そう言うと同時、涙を流し始める。
「……」
それに、最も驚いたのは外ならぬレインだった。
女性を守りたい。この男の本質は、それなのではないかと思っていた。
自分より強いとは言え、女を盾に力を溜めるなど許されない。それをするくらいなら死んだほうがマシだとでも言うかと思ったから、防御しろと言ったのだ。
いいや、涙を流す程ということは、本質なのだろう。そしてそれ以上に、この男は英雄の子孫だっただけ。仲間を守るために仲間を信じるという行為も、青年にとっては英雄的であったというだけ。
「最強の君がそんな顔をするとはね。傑作だ」
「いや、お前……」
「ははは、私は英雄の子孫だ。功を急ぐより人を救う。その為の最善を、考えない訳にはいかないじゃないか」
涙を流しながら、笑いながら、そんなことを言う。
「器用なんだか不器用なんだか、気持ち悪い」
レインも笑う。出来れば一人の犠牲も出て欲しくないのは同じ。
青年がこのような決断をした所で、オリヴィアの危険が増えるわけではない。
きっとこの男は実際にそんな場面になった時、血の涙を浮かべながら全力を出すのだろう。
オリヴィアは見た目の美しさだけで言えば傾国レベルだ。そんな美女を盾に自分の力を溜める青年を思うと、むしろ面白い気すらしてくる。
「良いだろう、好きな武器を言え。宝剣クラスを用意してやる」
街の外、多くの取り巻きが黄色い声援、半分位嬌声だが……それを上げる中、サンダルの決意を聞いて、レインが言えたことはそれだけだった。
――。
「こういう武器を作って欲しい。素材はこれだ」
「うわっ、なんだこれ……」
「以前アルカナウィンドで灰色のドラゴンを倒してな。そいつの骨と牙だ」
「でけえ……一体誰に持たせるんだこんなもん」
「馬鹿だ」
「馬鹿か……」
狛の村、一人の青年と鍛冶師がそんな会話をしている。
相変わらずの青年の無茶な注文に引いているが、その腕は確かだ。
世界で最も厳しい環境と言われるだけあって、その村の鍛冶師は魔物の素材を利用した武器を作ることにかけては一流。特に今代の鍛冶師はレインがひたすらに武器を壊し、ひたすらに魔物を狩ってくるお陰で、歴代でも一二位を争う腕前。
様式美とでも言える嫌な顔をレインに残すと、「確かに承ったよ守護神よ」
そう、呟いて作業に取り掛かった。
残り[932日→924日]
英雄であったヘルメスは彼自身にとっても英雄で、その身に流れる血は彼の誇り。
似た能力が発現したことで、自分自身も英雄になれるかもしれないと夢を見た幼少期を過ごしてきた。
ヘルメスの様に美しい肉体を目指したし、女が好きなのは、まあ、血かもしれないが、ともかく誇りある自分になろうと陰ながら努力を重ねていた。
時は経ち、そんな彼は本物の英雄と出会ったことで、少々の変化を見せていった。
「やはり私の能力はヘルメスとは違うな……。ワイバーンでは気づかなかったが、遥か格上と闘って初めて分かった。私と短剣は相性最悪だ」
「そうだな。加速しきるまでは防御が出来る武器が良いだろう」
サンダルは、真面目だった。
普段はチャラチャラしていて、美女と見ればすぐに興奮する、どうしようもない男の様に思える。
尤も、過酷な訓練の後でも美女を見かければすぐに元気になる辺りはレインも呆れを通り越して尊敬してもいいのではと呟いていたが……、それはともかく、剣に関してはだけは真面目だった。
だから彼は、何度も何度も痛めつけられた結果、自分のアイデンティティであったヘルメスを、捨てることを決意した。
「いいや、私はむしろ逆を取る。英雄ヘルメスはかつて魔王戦で、自分一人だけが生き延びた。それがどれほど無念であったのか、考えなかった日はない」
「……そうか」
ヘルメスの真実を、レインは知らない。
サンダルも、文章から推測したことでしかない。
「だから、私は短剣で彼以上の功績を上げたいと、そう考えていた。それこそが先祖に対する尊敬の意を表す手段だと」
だから、向いてもいない短剣を使い続けた。別にこれはヘルメスの宝剣ではないし、ただの業物。
「……」
「私は死ぬつもりはない。けれど、英雄になれるチャンスを得て、君にボロ負けして、考えを改める」
「何を言ってるんだ?」
それは死にゆく者が口にするセリフだ。
「私に出来ることは、なんだ?」
そんなことを聞かれては、言えることは一つしかない。
「……お前は弱い」
強い。ワイバーン50匹等、オリヴィアでもまだ多少は苦戦するはずだ。
しかし、「その能力には隙がありすぎる。変な気を起こすなよ」
「……起こすさ。起こさせてくれ。私に出来ることは、きっと決まってる。私の役割は、最強の一撃だ」
「お前がどれだけ努力したところで、俺の一撃には届かない」
だから、加速が完了するまでは防御主体で戦え。言外に、そう伝える。
それでも、サンダルの決意は硬かった。
十分な能力発動までに時間がかかる以上、防御はむしろ捨てる。どんな武器を持った所で加速中に攻められたら死ぬことは、何一つ変わらない。例え大盾を装備したところで、レインを相手に生き残る術等ありはしない。防御に気を取られて十分な加速ができなければ本末転倒だ。
「だから私は、仲間を信じることにする」
「は?」
何を言っているのか、今一分からない。
「君の弟子に、私より強い女性がいるのだろう?」
「ああ、……まさか」
「そう、その人に、……少しだけ守ってもらう」
そう言うと同時、涙を流し始める。
「……」
それに、最も驚いたのは外ならぬレインだった。
女性を守りたい。この男の本質は、それなのではないかと思っていた。
自分より強いとは言え、女を盾に力を溜めるなど許されない。それをするくらいなら死んだほうがマシだとでも言うかと思ったから、防御しろと言ったのだ。
いいや、涙を流す程ということは、本質なのだろう。そしてそれ以上に、この男は英雄の子孫だっただけ。仲間を守るために仲間を信じるという行為も、青年にとっては英雄的であったというだけ。
「最強の君がそんな顔をするとはね。傑作だ」
「いや、お前……」
「ははは、私は英雄の子孫だ。功を急ぐより人を救う。その為の最善を、考えない訳にはいかないじゃないか」
涙を流しながら、笑いながら、そんなことを言う。
「器用なんだか不器用なんだか、気持ち悪い」
レインも笑う。出来れば一人の犠牲も出て欲しくないのは同じ。
青年がこのような決断をした所で、オリヴィアの危険が増えるわけではない。
きっとこの男は実際にそんな場面になった時、血の涙を浮かべながら全力を出すのだろう。
オリヴィアは見た目の美しさだけで言えば傾国レベルだ。そんな美女を盾に自分の力を溜める青年を思うと、むしろ面白い気すらしてくる。
「良いだろう、好きな武器を言え。宝剣クラスを用意してやる」
街の外、多くの取り巻きが黄色い声援、半分位嬌声だが……それを上げる中、サンダルの決意を聞いて、レインが言えたことはそれだけだった。
――。
「こういう武器を作って欲しい。素材はこれだ」
「うわっ、なんだこれ……」
「以前アルカナウィンドで灰色のドラゴンを倒してな。そいつの骨と牙だ」
「でけえ……一体誰に持たせるんだこんなもん」
「馬鹿だ」
「馬鹿か……」
狛の村、一人の青年と鍛冶師がそんな会話をしている。
相変わらずの青年の無茶な注文に引いているが、その腕は確かだ。
世界で最も厳しい環境と言われるだけあって、その村の鍛冶師は魔物の素材を利用した武器を作ることにかけては一流。特に今代の鍛冶師はレインがひたすらに武器を壊し、ひたすらに魔物を狩ってくるお陰で、歴代でも一二位を争う腕前。
様式美とでも言える嫌な顔をレインに残すと、「確かに承ったよ守護神よ」
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