雨の世界の終わりまで

七つ目の子

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第十三章:帰還した世界で

第百七十四話:生徒達の近況と

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 サニィは、マナスル魔法研究所にて所長その他研究員、及び学生達と、訓練に来ていたグレーズ魔法兵を集めて新しい研究結果について説明していた。

 まず、一つは以前、エイミーが恐ろしくて伝えるのを忘れていた触媒を利用した魔法技術。拡散系の魔法。
 主な役割は爆発でダメージを与えることだが、応用すれば広範囲に少ないマナで一時的な身体異常や興奮作用を引き起こすことが出来る。
 通常の魔法で広範囲を指定する場合はそれだけでマナを消費してしまうが、これならばマナは発動時の分だけで済む。
 触媒は基本的に、それ自体が力を持つものに限定される。例えば宝石など。
 小石を爆弾に変えたサニィは、まぁ、サニィだからと言うことで、実は爆発直前にそれを別の物質に変換して触媒としていた、というのが真相。
 サニィのマナに語りかけるその力は、本人も無意識のうちに都合の良い改ざんまでをも行ってしまう。最初の頃にレインに付いて歩き続けられた異常なスタミナも、それが主な理由。
 もちろん、魔法で小石を予め宝石に変換しておけるのならば、それでも問題は無い。


 二つ目は呪文だ。
 言葉を使った詠唱によって詳細にその魔法の情景をインプットすることによって、単純なイメージよりも強い現象を引き起こす技術。
 どうしても言葉を口して、それを道具代わりに扱うという関係上、魔法の発現までにかなりの時間がかかってしまう。
 その為、その使用者は基本的に才能がない程にメリットが高い。
 才有るものは、今までのサニィ理論を応用しての戦闘の方が効率的だ。
 それに比べて殆ど戦えなかった弱小魔法使いは、大砲と同等の役割を果たすことが出来る様になる。
 もちろん、完全に勇者に前衛中衛を任せられる場合、才能ある者が呪文を駆使した魔法を使えば、その威力は凄まじい。
 問題点としては、サニィがイリスと共に組み上げた呪文は、それなりに参考には出来るものの未完成も甚だしいという点だろう。

 さて、ここまで説明したところで、グレーズ魔法兵の三人が口を開いた。

「姉御、その呪文とやらの文字列研究、俺たちにやらせていただけないでしょうか」
「ああ、言葉選びには自信がありますぜ」
「姉御から教わった基礎を含めて考えれば、自然と最善も導き出されるってもんですよ」

 と、元気よく手を挙げる。

「えーと、姉御?」

 その三人、いや、四人組に、なんとなく見覚えはある気がする。
 しかし、全く思い出せない。

「俺たちっす姉御、ルーカス魔法学校の、優良生4人組っす!」

 と、言われれば思い出すことが一つ。
 ルーカス魔法学校に無断で立ち入った瞬間に、殺しにかかって来た連中だ。
 優良生、確かに能力だけ見ればそうだった。
 名前は確か。

「えーと、ジャム君でしたっけ?」
「そうそう、俺がイチゴジャムで、こいつがリンゴ、そしてこいつがオレンジで、この無口が文字通りクチナシっつってね」
「はい。私はここの魔法研究員ではありませんので、話の折り合いは付けてくださいね。私はどうにもうまく行かないので、期待してますよ」

 確かに一人では考えるのが難しい呪文も、4人以上でやれば少しは捗るだろう。
 彼らの言葉選びが実際にどうなのかはともかくとして、自信があるというのなら任せてみるのも面白いのではと考える。エイミー、研究者達の様に狂った感じではないし、面白い観点から発展させてくれるかもしれない。

「……」
「さて、このじゅも――」
「あの、姉御? いや、師匠せんせい?」
「どうしましたイチゴ・ジャムさん?」
「え? あ、あの」
「どうしました? リンゴ・ジャムさん」
「そして俺がオレンジ・ジャムです……」
「はい」

 ……。
 彼らは泣いた。
 理由は、分かっていた。

「えーと、ジョン、ジョニー、ジョージ、サム。呪文のこと、お願いしますね」

 彼らは泣いた。
 泣きながら、首を大きく振り、力強く頷いた。
 彼らには更に研究員二人が付き、これから日々呪文の研究を行っていく。
 その六人によって、呪文の研究は著しい発展を見せることになる。
 クチナシ・ジャムことサムが一言も発さないのに呪文を利用した魔法が使えることは永遠の謎とされたまま、弱者の魔法は彼らによって大きく発展していく。

 ――。

「先生の生徒が他にもいたんですね」

 集会が終わった後、片付けをしているサニィにルークが寄ってきてそんなことを言う。
 そしてそのまま片付けを手伝い始める。

「ありがと、生徒といっても一日教えただけだけどね」
「でも、あいつら結構やりますよ。姉御姉御言ってただけだったから誰のことかは分からなかったけど、それなら納得です」

 四人で攻められると意外と苦戦する。妙なコンビネーションでリズムを乱される。
 ただ、自分はやりにくいけどエレナ相手だと一瞬で負けてるのがふざけてる様でムカつく。
 そんなことを言う。

「まあ、ふざけてる様に見えるのは私も納得だけど……。なんだかんで真面目に修行はしてるでしょ?」
「はい。それがまたムカつくんですけど」
「あはは。ま、エレナちゃんは特殊な魔法使いだから、対人戦闘でエレナちゃんに勝てる人なんて殆ど居ないでしょ」
「う……、確かに僕も五分五分ですけど……」

 エレナの見せる幻覚は、日々精度を増していると言う。
 近くの都市まで二人で出かけた際、サキュバスが襲ってきてルークに迫ったが、逆にそのサキュバスを幻惑、徹底的に昇天させて消滅させたらしい。
 12歳でそれはどうなんだと思わなくもないが、エレナの見せる幻覚はサキュバスをも超えていることが実証されている。ということは、男で、いや女だろうがエレナに勝てる人物自体が希少だ。

「で、仲良くやってるの?」
「せ、先生には関係が――」
「あると思うけどなぁ」
 にやりと笑う。
「う……、じ、実はですね……」

 そうして、ルークはもじもじとしながら最近のエレナについての悩みを打ち明け始めた。
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