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第十五章:帰還、そして最後の一年
第二百十六話:師を目指す者達と弟子を案ずる者
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「エリーさん! それじゃ、まだまだですわ!」
「くぅっ、はぁ、はぁ、絶対、いつか勝つんだから」
ブロンセンの東に到着すると、二人の弟子が勝負を終わらせたところだった。
レインとサニィは姿を隠したまま、その様子を見守る。
エリーに気取られないよう、感情すら押し殺して。
どうやら、これまでの模擬戦とは比べ物にならない気迫を感じた為だ。
真剣勝負。そう呼ぶに相応しい戦いだったのではないかと、エリーの擦り傷や服の汚れ具合を見る限りでは見て取れる。一方、オリヴィアは綺麗なままだ。
「それではまだまだ月光をお渡しするわけには行きません。これは最強の弟子が継ぐべきものです」
「くっ、でも、でも毎月だからね! 毎月戦うんだからね!」
「良いでしょう。わたくしはずっと負けませんわ」
ぴくっとエリーが反応する。
オリヴィアの言葉の裏に、何か気になる点があったらしい。
心を読んだエリーは体全体で反応するのが特徴だ。
「もし勝ったら、全てを話す?」
「あら、読まれちゃいましたのね。ええ、レイン様の弟子には使命があります。わたくしに勝てば教えて差し上げます」
「だからこそ、それを伝えるわけにはいかないからこそ、まだまだ負けられない」
オリヴィアの言葉の裏を、エリーが口に出して反芻する。
最強であれ。その言葉は、しっかりとオリヴィアに意図した通り伝わっているらしい。
心を読まれてしまうのならば、読まれて良い部分をあらかじめ作っておく。
素直なオリヴィアが隠しきるのはそれをただ隠しきるのは辛いと考えたのだろう。
だからこそ、負けられない理由をあらかじめエリーにはそれとなく伝えておく。
「そういうことですわ。わたくしは最強にならねばなりません。それがレイン様の弟子としての使命」
「……それなら、わたしだって一緒だもん。私が一番弟子だもん! お母さんを守るもん。アリエルちゃんを守るもん。まだ、一人でドラゴンからは守れないって分かったから、強くならないといけないもん」
「それなら、わたくしを超えることですわね」
「うん。来月は、勝つ」
なんだかんだで、やはり二人は良い関係だ。
互いに高め合うということを分かっている。オリヴィアも、必死でなければすぐにエリーには追いつかれてしまうということを分かっている。
それだけを確認して、二人はこの地を後にした。
「あはは、二人ともちゃんと、弟子、してますね。エリーちゃんは大切なものを守る為に、オリヴィアは師の様になる為に、でしょうか」
「二人とも将来ある女の子なんだから、戦わないで済むのならそれが一番なんだがな……」
あまりにやる気の二人に、微笑ましさを覚えるサニィと、対照的に申し訳なさそうなレイン。
「魔王の脅威がある以上は誰かがやらないといけません。彼女達が何も出来ずに殺されてしまうよりは、と考えれば」
「そうなんだが、複雑なものは変わらんな。オリヴィアは国を守る立場でなければならんが、エリーはな……」
「まあ、私も同じです。あの二人も、マナスルの二人も、アリエルちゃんも、イリスちゃんも、みんな大切な私の妹達ですから」
しかし、任せる他ない。
彼女達よりも更に、レインの方が大切になってしまったのだから。
そんなことは流石に言えなかったが、サニィも少しだけ申し訳なさそうな顔をした後、言う。
「でも、あの子達なら大丈夫です。だって、私達の見込んだ子達ですもん」
「まあ、そうだな」
「私には分かりますよ。例え次の魔王をレインさんが倒すって言っても、あの子達は絶対に付いて来ます。どれだけレインさんが強くても、その負担をレインさんだけにかけたくないって、絶対そう思いますもん」
そんな風に微笑みながら言われてしまえば、流石のレインも返す言葉が見つからない。
「それに結局、レインさんは私が戦うことも許してくれましたから。だから付いてくるって子達を置いてくることも出来ません」
「出来るつもりだがなぁ」
「出来ません。私が保証します」
そんな保証をされても困ると思いながら、結局の所言い負かされてしまう。
いつから自分はこんなに甘くなったのだろうと思いながら、レインは仕方ない、と歩みを進める。
「絶対に勝って欲しいですね」
「ああ」
結局のところ、二人の結論はそこに行き着くしかないのだった。
――。
砂漠にたどり着くと、サニィは早速とばかりにデスワームを絶滅させる。
今のサニィならば探知して砂に圧力をかけるだけで簡単にそれを始末出来る。
彼女の最も苦手な魔物であるデスワームは、こうしてあっさりと、一先ずはこの砂漠から姿を消した。
再び生まれることはあるだろう。しかし、強大な魔物は基本的にはすぐには生まれない。
上位の魔物である彼らが再びここで目撃されるのは、しばらく先のことになるだろう。
「これで砂漠が平和になりましたね」
そんなことを言うサニィが砂漠そのものの過酷さを思い出すことは、最早なかった。
今の彼女の魔法にとっては60度を超える灼熱だろうが、マイナス60度を下回る極寒だろうが、どこも等しく快適な土地。ただ、隣にレインがいるというだけで。
そうして二人はオレンジと青の補色の砂漠を、それなりに楽しんで縦断、オアシスにたどり着いたのだった。
「くぅっ、はぁ、はぁ、絶対、いつか勝つんだから」
ブロンセンの東に到着すると、二人の弟子が勝負を終わらせたところだった。
レインとサニィは姿を隠したまま、その様子を見守る。
エリーに気取られないよう、感情すら押し殺して。
どうやら、これまでの模擬戦とは比べ物にならない気迫を感じた為だ。
真剣勝負。そう呼ぶに相応しい戦いだったのではないかと、エリーの擦り傷や服の汚れ具合を見る限りでは見て取れる。一方、オリヴィアは綺麗なままだ。
「それではまだまだ月光をお渡しするわけには行きません。これは最強の弟子が継ぐべきものです」
「くっ、でも、でも毎月だからね! 毎月戦うんだからね!」
「良いでしょう。わたくしはずっと負けませんわ」
ぴくっとエリーが反応する。
オリヴィアの言葉の裏に、何か気になる点があったらしい。
心を読んだエリーは体全体で反応するのが特徴だ。
「もし勝ったら、全てを話す?」
「あら、読まれちゃいましたのね。ええ、レイン様の弟子には使命があります。わたくしに勝てば教えて差し上げます」
「だからこそ、それを伝えるわけにはいかないからこそ、まだまだ負けられない」
オリヴィアの言葉の裏を、エリーが口に出して反芻する。
最強であれ。その言葉は、しっかりとオリヴィアに意図した通り伝わっているらしい。
心を読まれてしまうのならば、読まれて良い部分をあらかじめ作っておく。
素直なオリヴィアが隠しきるのはそれをただ隠しきるのは辛いと考えたのだろう。
だからこそ、負けられない理由をあらかじめエリーにはそれとなく伝えておく。
「そういうことですわ。わたくしは最強にならねばなりません。それがレイン様の弟子としての使命」
「……それなら、わたしだって一緒だもん。私が一番弟子だもん! お母さんを守るもん。アリエルちゃんを守るもん。まだ、一人でドラゴンからは守れないって分かったから、強くならないといけないもん」
「それなら、わたくしを超えることですわね」
「うん。来月は、勝つ」
なんだかんだで、やはり二人は良い関係だ。
互いに高め合うということを分かっている。オリヴィアも、必死でなければすぐにエリーには追いつかれてしまうということを分かっている。
それだけを確認して、二人はこの地を後にした。
「あはは、二人ともちゃんと、弟子、してますね。エリーちゃんは大切なものを守る為に、オリヴィアは師の様になる為に、でしょうか」
「二人とも将来ある女の子なんだから、戦わないで済むのならそれが一番なんだがな……」
あまりにやる気の二人に、微笑ましさを覚えるサニィと、対照的に申し訳なさそうなレイン。
「魔王の脅威がある以上は誰かがやらないといけません。彼女達が何も出来ずに殺されてしまうよりは、と考えれば」
「そうなんだが、複雑なものは変わらんな。オリヴィアは国を守る立場でなければならんが、エリーはな……」
「まあ、私も同じです。あの二人も、マナスルの二人も、アリエルちゃんも、イリスちゃんも、みんな大切な私の妹達ですから」
しかし、任せる他ない。
彼女達よりも更に、レインの方が大切になってしまったのだから。
そんなことは流石に言えなかったが、サニィも少しだけ申し訳なさそうな顔をした後、言う。
「でも、あの子達なら大丈夫です。だって、私達の見込んだ子達ですもん」
「まあ、そうだな」
「私には分かりますよ。例え次の魔王をレインさんが倒すって言っても、あの子達は絶対に付いて来ます。どれだけレインさんが強くても、その負担をレインさんだけにかけたくないって、絶対そう思いますもん」
そんな風に微笑みながら言われてしまえば、流石のレインも返す言葉が見つからない。
「それに結局、レインさんは私が戦うことも許してくれましたから。だから付いてくるって子達を置いてくることも出来ません」
「出来るつもりだがなぁ」
「出来ません。私が保証します」
そんな保証をされても困ると思いながら、結局の所言い負かされてしまう。
いつから自分はこんなに甘くなったのだろうと思いながら、レインは仕方ない、と歩みを進める。
「絶対に勝って欲しいですね」
「ああ」
結局のところ、二人の結論はそこに行き着くしかないのだった。
――。
砂漠にたどり着くと、サニィは早速とばかりにデスワームを絶滅させる。
今のサニィならば探知して砂に圧力をかけるだけで簡単にそれを始末出来る。
彼女の最も苦手な魔物であるデスワームは、こうしてあっさりと、一先ずはこの砂漠から姿を消した。
再び生まれることはあるだろう。しかし、強大な魔物は基本的にはすぐには生まれない。
上位の魔物である彼らが再びここで目撃されるのは、しばらく先のことになるだろう。
「これで砂漠が平和になりましたね」
そんなことを言うサニィが砂漠そのものの過酷さを思い出すことは、最早なかった。
今の彼女の魔法にとっては60度を超える灼熱だろうが、マイナス60度を下回る極寒だろうが、どこも等しく快適な土地。ただ、隣にレインがいるというだけで。
そうして二人はオレンジと青の補色の砂漠を、それなりに楽しんで縦断、オアシスにたどり着いたのだった。
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